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 「すいませんでした。改めてリクといいます。本物の鍛冶師に出会えて興奮してしまったようで、おかしなことを言いました」


「お、おう?気にするな。それで?注文はおおよそ聞いたが素材や加工にもこだわりたいんだって?」


「はい。とにかく頑丈さに特化したいんです。乱暴に扱っても壊れないような。必要なら素材の研究や加工の実験などもやりたい。もちろん費用は出します」


「ずいぶん景気のいい話だな?探索者だと聞いてるが鍛冶をなめ過ぎだ。とんでもない金喰い虫なんだよ。実験費用を出しているうちに完成品が買えなくなるぞ」


「例えば一日金貨10枚提供すればどうですか?」


「・・・・・・・・・


 その黒髪・・・ガハハハハハ!!おまえが黒瞬サマってやつか。おいおいおい、噂は聞いてるぜ。噂が本当ならそりゃ金もあるわな!」



 少し思案するような表情を見せて言葉を続ける。



「よしわかったやってやろう。さすがにそこまでの金は不要だがある程度は覚悟しておけよ?少し細かい話をしようか。こだわりたいなら技術的な話も詰めないとな」



 この笑い方、絶対ドワーフじゃん・・・あと酒好きだったりしないの?なんで人間なの?オレの中ではドワーフということにしておこう。うん。

 そしてこの後の展開はそう。知識チート無双の時間だよねフフフ。オレの転生教本が火を噴くぜ!鉄鉱石、コークス、石灰石だったよな。これらで銑鉄を作ったら残った余分な炭素を除去して純粋な鉄の完成だ。

 あとアレだ、焼き入れ焼き戻し。これだよこれ。転生ものを読んでない人でも必ず一度は聞いたことあるよね。あ~刀つくりてぇ~~。



「ハイッ!ハイッッ!!先生!言わせてください。鉄鉱石から精錬する手法としてコークスと石灰石と・・・」


「まてまてまて。精錬は魔道具で行う。必要なのは魔石だ。ところで先生ってなんだよ」


「・・・・・・・はっ?・・・え?」


「なんだあまり鍛冶に詳しくないのか。あそこにある大きな装置が見えるか?あれはでっかい魔道具でな。魔石をエネルギー源として鉄を精錬するんだ。高品質の鉄鉱石とランクの高い魔石ならい~い鉄ができる。質の悪い鉄で良けりゃもっと安い魔石でいいが」


「いや・・ちょ・・まさか焼き入れ焼き戻しは・・・?」


「変な所は詳しいんだな。粘りを出して強靭にしたいんだろ?そうだ、それにも良い魔道具がある。精錬の魔道具は知らないのに焼き入れ焼き戻しは知ってるのか」


「なっ・・もっ・・・うわ~~ん」


「お、おい・・なんで泣くんだ。話を続けるぞ?とにかく金がかかるのは魔石だ。最低D級以上の魔石、探索者ならアンタ取ってこれないか?取り寄せると高くつくんだ」


「・・・・取り寄せでいいです。実験とか研究とかは無しで」


「急に死んだ目になったな。まぁいい。じゃ設計図通りでうちのやり方でいいんだな?心配するな最高のモン作ってやる。1本でいいな?」


「・・・2本。費用は狩猟組合から落とせますか」


「ああ、もちろんだ。一応言っておくがD級取り寄せたら金貨3枚だからな?2本加工で4個必要だぞ。それに加工費用がプラスだ」


「・・・それでいいです」


「本当に稼いでるんだな。ただの鉄の棒にそんな大金。じゃ帰る前に契約書とサイン、身分証頼む。あと武器と見做されるから軍、警邏課、魔石課で許可取って来いよ?探索者ならまずは魔石課だ」







 整備課を出て斡旋所の魔石課を目指すオレは、街の中心通りをうつむいて歩いていた。

 まだ日は高い。整備課での面会に全く時間がかからなかったためだ。1ミリも知識チートを披露できなかった。ドワーフと出会えた時はキタコレと思ったのに。あいかわらずダンジョン外ではテンプレさせてもらえない。いけそうに見えてからのプギャーだ。

 一度ホテルに帰った方がいいのかな。この時間だとまだバススがいないかもしれない。下手したらヴィルさんもだ。あのラグジュアリーな長椅子に身を横たえる想像をして自分を慰める。あの椅子、オレの部屋に買ってもらおうかな?きちんとお金出せばわがまま聞いてくれそうだけど。

 いやいやいや、金に任せてなんでもできると思うなよ?ちょっと短絡的になってるぞ。



《マスター、ヘコみすぎです。地上でのアンチなろうの法則は十分学んだ筈です。しっかり覚悟しておいてください。それよりホテルへ行くのは変更で、時間があるなら魔石課へ行くべきです》


(うん・・・ねぇアイツ鍛冶師みたいだけど魔道具があるなら一体なにを以って鍛冶師なの?魔道具のボタンを巧みに押せるとかなの?なんなの)



 あの鍛冶場を丁寧にスキャンして探っておいたので、本当はマスターの問いの答えがおおよそわかっていました。しかし気を逸らすため別の話題に誘導します。



《またもや魔道具の登場ですね。精錬の魔道具に、焼き入れ焼き戻しの魔道具ですか。ご都合主義も甚だしい。そろそろ魔道具調査に本腰を入れないと・・・いえ、いまはミューズ対応が一番でした》


(ミューズどうしてるかなぁ)



 まんまとマスターの気が逸れそうだったので、急ぎ話題を続けます。



《どこにいると思います?・・・村ですよ》


(え!?オレの村ってこと?マジ?)













 その日オレはいつもの仕事を終え、帰宅した後弓と矢の手入れをしていた。狩りの仕事は朝早い事が多い。それには色々理由があるがまぁどうでもいい。午前中に終わったからいまは昼過ぎだ。

 この時間帯は嫌いじゃない。仕事を終えた充実感と心地よい疲労感。午後の柔らかい陽射し。作業部屋の中でお気に入りの椅子に座って弓の手入れ。もう何年も繰り返してきているが飽きないし落ち着く。



「リクはどうしてるか。泣きべそでもかいてんじゃねーのか」



 つい声にだしていっちまう。言いながら微笑んでいる自分に気が付く。けっ気持ちわりぃ、ちょっとおセンチになりすぎたか。頭を振り手入れをしている手元に集中を戻す。

 その時だ。わずかに、ほんのわずかに外の気配が乱れる。野生の獣でも現れたか珍しいな。ん?獣じゃないな。足音がデカすぎる。こりゃ二足歩行で人だな。村の奴らじゃない、踏む力が強すぎる。こりゃちっとマズイのが来たかな。


 オレは慌ててナイフを手に取り腰にさす。弓と矢を持ち外の様子を伺う。残念ながら間違いなくこの家に向かってきているようだ。

 覚悟を決めて家から外に出る。閉めたドアに弓を立てかけ即座に手に取れるようにする。一方矢は右手に持ち背中に回して相手からは見えないようにしておく。

 その状態のまま来訪者をじっと待つ。相手からは一切警戒しているようには見えないハズだ。どんな状況でも慌てたり動揺したりしない技術は身に染み込んでいる。こちとら野生を相手に何十年とやってきてるんだ。嘗めてもらっちゃ困るぜ。


 待つ事暫し。相手がやってきた。堂々としたもんだ、隠れるつもりも何かを隠してるふうでもない。相対してわかった。コイツはやべぇ。纏ってる雰囲気が違う。無理に例えるなら腹を空かせてない灰狼ってとこか。とはいえ敵と決まったわけでもない。殺気も感じない。慎重に様子を見る。


 森からオレの家へ向かってくるソイツは薄汚れたフード付きのコートを着ている。コートに隠れて武器の有無が全く見えない。表情も見えにくい。かなり細身で背が高いことは確かだ。それと大きめの布袋を背負っている。ぱっと見だと旅装と言えなくもない。

 オレの姿を認めると躊躇なくこちらへやってくる。お互いの声が届く程度にまで近づいてこういった。



「そちらはノム師匠でよいか?」



 まさか自分の名が出てくるとは思ってなかった。あっけに取られ一瞬沈黙してしまう。しかもノム()()だと?ここ何年かでオレを師匠と呼ぶのは一人しかいねぇ。どういうことだ。


 こちらの反応が無いのを見て相手も何か考えるようだったが、かぶっていたフードを取って顔を見せる。



「私はこういう者だ。ノム師匠を探している」



 その顔と姿を見てオレは驚愕する。こんな背が高いのに女だった。いやそれどころじゃねぇ。



「森人!しかもワンダラーかっ!!」

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