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(えぇ~やっぱり武器かえなきゃだめなの~?)



 オレはアイに不平を漏らす。声には出さない。ミューズがいないし、今は人目がある。

 ここはいつものホテルのロビーだ。どうやらここが気に入ってしまったらしい。この世界には珍しいラグジュアリーな長椅子がすばらしい。ソファーの感覚に近い。料金は高いがハーブティーもうまい。冷めるかなくなるかするとさりげなーくおかわりを持ってきてくれる。特に視線は感じないのによく見ているようだ。プロだね。

 それに頼めば軽食だって持ってきてくれる。これもまたいい。前世のサンドイッチに似ている。パンは堅いし謎肉しか挟まれてこないが。この世界の中では抜群にウマイ。



《部屋に帰ったら弓をよく見てください。相当ガタが来ていますよ。昨日のダンジョンで部位強化を応用して保護していたにも関わらずです》


(わかってるさ~。わかってるからこそ保護したわけで・・・何の武器がいいの?)


《自分自身に問いかけてください》


(またそれぇ~?ヤダー・・・あ、ごめんごめん、やる、や~る。だからその怒った顔文字送ってこないで。フォントでかくしすぎ。前が見えないじゃん)



 ったくよ~、どうすんだよ。今さら新しい武器とかさ。

 う~むむむむ。まずは転生教本というオレのなろう知識に頼るか。教本によると槍という選択になるな。初心者でもある程度のレベルまでなら扱いやすいこと。リーチが長いこと。敵からの距離が取りやすい事。などがあるらしい。そのままをアイに伝えてみる。



《とても良い選択ですが何か違和感を感じますね。おそらく自分にあってる感が出てないのでは》


(はいでた~。自分理論ね。ってゆうかさ、使ったことが無い新しい武器なのに自分に合ってるっておかしくない?)


《では聞き方をかえましょう。目を閉じて。いわゆる戦闘シーンを思い描いてください。昔見た戦闘シーンでもいいですし、自分の頭の中で想像した武器を使った勝負などでも構いません》


(・・・・・・・・・・・)


《どうですか?》


(一番初めにパッと浮かんだのは昔再放送で見たド〇ゴ〇〇ール)


《またそのアニメですか。カ〇ハ〇波は武器ではありませんよ》


(うん、そうじゃなくて主人公が子供の頃によく使ってた如意棒と筋斗雲)


《なっ・・・・》


(ん?だめっぽい?あれめっちゃやりたいんよね~。想像するだけでもう楽しい)


《・・・・・・》


(お~い、アイさ~~ん)


《・・・失礼。少し想定外だったので。マスターの答え次第でお勧めしようと思っていた武器があります。ずばり棒です。いわゆる杖術です》


(お、奇遇じゃん。こりゃ決定だね!)



 これはひどい違和感です。光の矢と吸収の時も感じました。あの時はマスターの天才的直観力の賜物だと無理矢理片付けましたが、ここまで続くと無視できませんね。杖術は現況考えられる限り最適最高の選択肢の筈なんです。数ある武器種の中からこんな偶然の一致が起こるのでしょうか。

 何らかの意図が感じられます。私の観測と防壁をすり抜けてマスターにアクセスするなど、よほど高次元からの干渉でもあったのでしょうか。

 いずれにしてもこの事は忘れずにメモしておきましょう。今は目の前のことを解決します。



《利点は多いのです。弓のように繊細な構造は無いので耐久力が極めて高い。ただの鉄の棒なら整備課で気軽に作成してもらえる。初心者向けで扱いがシンプル。身体強化、身体活性と相性がよい。技術力があがれば防御にも使える、などです》


(いや初心者向けって、なに選んでも初心者なんだよ?)


《例えば刃がついた武器を想像してください。相手に攻撃する時、点で当てるのか線なのか、はたまた面なのか。押し切りなのか引き切りなのか叩き切りなのか。相手の攻撃に対し面で受けるのか線で弾くのか。意外と考える事は多い。剣術などに型が多いのはそのためではないでしょうか。

 一方、杖術なら突く叩くの基本二択です。最初は突くを捨てて一択でよいでしょう。受ける時は選択の余地はありませんね。技術を極めた者同士の闘いですと戦術幅が狭いのが欠点となるかもしれませんが、そのような達人の領域までダンジョン戦闘で求められるとは思えません。

 また、杖術にはマスターが先ほど槍の話で挙げたリーチ等の利点もあります。刃部分が無いので攻撃力では劣るでしょう。が、ステータスの暴力で十分補えます。つまり技術が無くとも攻撃力は出せるのです》


(もう何も言い返せません。如意棒はいいとして筋斗雲はできないの?)


《加えて運用に慣れれば弓より経験値効率が高くなると思われます》


(えっ!?そこのとこ詳しく!筋斗雲は流してもろて)


《現在、経験値効率が一番いいのはクリスタルヒュージボアです。この討伐ペースを早めるのがよいでしょう。

 大物なので討伐に時間がかかるのはもちろんですが、魔素の消費が多いので回復時間が意外に効率を下げています。その要因は稀に使う光の矢と常用している内部破壊特化の矢です。

 鉄の棒でしたら変形や欠けを抑える保護のための部位強化だけで問題ないので、消費魔素を抑える事ができます。攻撃力で言えば自重を利用した運動エネルギーだけでとてつもない破壊が産み出せます。

 補足になりますが矢を拾う時間は単純に無くなりますね。以上で単位時間あたりの討伐数はかなり伸びますよ。保障します》



 マスターが少しづつ吸収を体得してきているのでいまの説明は100%の真実ではありません。納得してもらうためにこの際仕方ないでしょう。案の定、効率厨なのですぐ乗ってきます。



(よし、今すぐいこう。整備課へ)


《はい。今日はそのあと組合にも行くべきです。提出すべき書類が溜まっているのと、二回目の納付用の狩りについて相談です》


(あ~もうそんなに経ったか、はやいな。わーった準備する)







 やってきました整備課です。

 随分前のような気がするが、前回の訪問はちょうど2週間前だったようだ。ここは軍関連の組織が斡旋所のように集まって合体しているところで、斡旋所に魔石課や組合があるようにここに目当ての整備課があるんだ。

 受け付けで来意を告げて身分証を呈示し指示を待つ。しばらくすると無事整備課へ案内される。

 待っていた中年の男性が相手をしてくれるようだ。



「どうも狩猟組合のリクといいます。製作の検討と依頼で来ました」


「はいどうも整備課の者だ。小さい日用品なら斡旋所の方が安くつくよ、大丈夫?もし武器だったら軍と警邏と魔石課の許可がいるけど」



 ちゃんとこっちの話を聞いて助言までしてくれてるな。鍛冶組合のあの野郎とは全く違う。高感度アップだ。



「あ、はい。それなりに大きい物で簡単に言うと120センチくらいの鉄の棒です。杖や棒として使います」


「・・・なんだそりゃ・・・?」


「羊皮紙か紙はありませんか?簡単に図面を描きますので」



 すぐ出してくれた羊皮紙にペンでサラサラと欲しい物の絵を描いていく。おっとペンとは言ったが細い棒状にした炭だなこれ。手が真っ黒だ。

 手は汚れたがアイが羊皮紙上に書くべき線をVRで表示してくれているから、なぞるだけの簡単なお仕事だ。最後にサイズや注意点を追加して終わりだ。



「棒の断面は真円じゃなくて多角形にして欲しいです」


「円に加工なんてもともと無理だ。それに多角形だって?あんたも技術者か?変な言葉知ってるな。八角形がせいぜいだ。高くつくがな。あとこれを鉄で作るのか?持てないだろうよ」


「金に糸目はつけません。重さも平気です。あと鉄の強度について加工技術や素材の検討も依頼したいのですが」


「あ、あんた一体・・・もしかして探索者か?」


「あ、はい、そうです」


「そ、そうだったのか。スマン、上の者を呼んでくるよ。待っててくれ、いや違う。

 オイッ!この人を部屋に通してくれ!あと飲み物かなんか」



 態度が急変したな?探索者だから?よくわからん。

 鍛冶の道具や炉が並ぶ作業場の隅を連れられて歩く。しばらく進み何かの部屋に通される。ここに来るまで扉は一度も見かけていない。さすがに火を扱う現場だけあってほぼすべてが石造り、そしてレンガだ。

 幸い椅子だけは木だったのでオレのお尻は救われたようだ。座って飲み物を期待して待っていると飲み物より先に上司らしき人物がやってきた。



「よう、待たせたな!オレはフェラリウス、整備課の取りまとめだ。おかしな注文を持って来たって?」



 デ、デ、デ、デターーーーーーーー!!!

 これ絶対ドワーフでしょ!?この背の低さ。このヒゲ。鍛冶師。

 テンプレきたーーーーーーーーーー!!!



「は、はじめまして!狩猟組合のリクです。ドワーフの方と会うのは初めてです!」


「どわふ?なんじゃそれ。種族か部族名のことか?わしこの国出身で普通の人間だが」


「いやちがうんか~~い」

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