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 おはよう諸君。今日も今日とてダンジョンだ。


 今日は特別なイベントがある。そう、アイが取り組んできたコピー魔獣に対する実験結果の発表会だ。

 発表会のプログラム表はあるのかな?いやない。何の発表なのか、何を見せてくれるのか、何を見せられるのかは教えてくれません。


 見てのお楽しみだそうでドキドキするね?昨日のアイのパワーアップを考えるに少し不安な所もある。これは正直な気持ちだ。あまりブッとんだ物でないことを祈る。過去の経験からまずはよく話を聞いて理解するんだと自分に言い聞かせる。すぐに文句を言わないこと、コレ絶対。



 もはやいつもの光景となった管理ゲートでの入ダン。スタッフもほぼ全員顔はわかる。名前は知らない。名札が無いしね?定例と化した9層までの突貫。そしてアイの指示を待つ。



《ではまず一度倒してください。その後が本番です》



 初撃で問題なく沈める。そのまま入り口の方へ戻ろうとするオレをアイが止める。



《マスター、退室しないでください。この部屋内で休憩してください。さ、あちらの壁際へどうぞ。リラックスできる音楽をおかけしますので。ひと眠りされるといいですよ》


(いやいや、今来たばっかりだしまだ午前中だし。眠れない。何されるのか怖いよ!)


《大丈夫です。信じると決めたのでしょう?さぁ壁に背をつけて。そう目を閉じて。無理に眠らなくてもいいのですよ。音楽をゆっくり聴いて》


(う~~ん)



 眠れないとは思うが、一応アイの指示に従い目を閉じる。音楽を聴くと子守唄じゃないかとつっこみたくなるが、まぁいい。休憩しよう。

 来たばかりとはいえ9層までの突貫はそれなりに疲れる。う~ん疲れてるよな?疲れているということにしよう。身体活性してるとホント体力無限大だからな。

 どうせ眠れないからアイが何を見せてくるか想像してみよう。コピーは経験値少なくなるし魔石も落とさないって言ってたな。だったら逆に爆盛りさせるとか?どうやって経験値を増やさせるのかだな。うむむむむ・・・



 あれ?眠いぞ?おかしい、眠くなってきた。

 いやそんなハズない・・・


 ない・・・



《落ちましたね。よろしい。強烈な拒否の気持ちが無ければある程度コントロールできるようになりましたね。大変すばらしいことです。もちろん悪用はしません。では次の段階へ》



 傍から見ればリクが寝ただけだ。アイの存在など知りようがない。

 リクはすやすやと寝ている。と思ったら突然目を覚ましたようだ。


 いま眠りに落ちたばかりなのに?


 リクは目を開けゆっくりと立ち上がる。そのまま大部屋の出口に向かって歩いてゆく。どこかおぼつかない足取りだ。普段の彼とは全く違う。違うとはいえ見た目はリクそのままだ、おかしい所はない。

 大部屋の入り口までたどり着き、大部屋へ入る通路に進む。その通路を9層の方向へ少しもどった所で立ち止まる。そこは例の境界がある直前だ。



《さて、ここが腕の見せ所です。過去最高の演算を始めましょう。もちろん同時に魔素の制御も疎かにできません》



 そのままリクは境界直前で立ち止まったままじっと集中しているようだ。

 おおよそ2分が経過する。



《成功です。我ながら完璧と言ってよいでしょう》



 リクは何かを決意したように歩を進め始め境界を越える。

 越えたところでまた立ち止まった。

 今度は長時間そのまま動かない。

 外からはただじっとしているように見えるが、実は中ではアイが様々な仕掛けを施している。


 もし第三者がいれば何をやっているんだとイライラするだろう。

 その第三者がもし時間を計測していたら、そのまま30分ほど待たされたことに気が付く。


 30分。


 そう退室してから30分経過した。つまりリポップしているはずだ。予想通りリクは振り返って再度大部屋に入室する。入室すると先ほど退室した時と同じコースを逆に辿り、寝ていた場所に座りなおす。






《マスター、起きてください》


(う~~ん、あぁアイか・・・ってアイ!さっきおかしかったぞ!急に眠くなったんだが何かしただろ!?)


《はい。睡眠導入効果が高い音楽、それに加えてマスターの脳からアルファ波が出るように強制的に操作しました。健やかな眠りに落ちただけです。健康に害は全くありませんよ》


(ほんとかよ・・・まぁいいや。スッキリしたのは確かだ)


《準備がよければご覧ください。現在の私の最高傑作です》



 そう言ってアイが促す。状況から言って魔獣がポップしてるということか。おいおい危険じゃないか。こっちが手を出すまでノンアクだとしてもだ。あれ?おかしいぞ。オレ大部屋からでていないハズ。ポップしてないよな?ふと思い部屋の中央を見る。



 戦慄が走る。



 オレの姿ではない人型がポップしている。



 最大限の警鐘が頭の中で鳴り響く。瞬時に体が反応する。一気に飛び起き身体活性を起動。弓を手にし矢をつがえ強化。狙いを人型に定める。神速だ。



(アイ!どうなっている!!なぜもっと早く起こさなかった!?)


《安心してください。アレは私です》


(何を言っている!?攻撃するぞ!いいのか!)


《信じて。弓を降ろして。ね?お願い》


(アイ・・・・)



 ウソじゃないし、ふざけてないのも伝わってきた。とりあえず弓を降ろす。



《警戒しないで。もっと近寄ってよく見て》



 さすがに警戒は解かないが、人型に近づいてみる。



「なっ・・・・・」



 オレは絶句する。絶句という言葉がまさにこのためにあったのかと思う程だ。言葉が出てこない。思考も停止している。頭の中に『なぜ』『どうして』それだけが湧いては消えていた。




 大部屋の中央には、人間が立っていた。女性だ。身長が高い。その上ピンヒールを履いていて、なおその背の高さを強調している。


 この世界では誰も理解できない超ハイブランドの女性用スーツとタイトなミニスカート。全体を黒でまとめたデザインだ。スーツの中には質のいい白シャツを着ており清潔感を感じる。対照的に脚は黒タイツであり、絶対領域でエロティシズムを演出している。


 プラチナブロンドの長い髪に星空を凝縮したかのような深い蒼の瞳。形の良いすっきりとした鼻梁に薄い唇。その唇は紅をさしたわけでもないのに朱く濡れて艶やかだ。白皙の透き通った肌がその朱をさらに際立たせる。


 最も特徴的なのはその長い睫毛だ。神秘的な瞳を覆うその美しい曲線は、まさに零れ落ちんばかりに見える。あまりにも豊穣なその流れは、彼女にほんの少しだけ眠たげな印象を植え付ける。それがまた彼女の超常性を高めていた。


 美の境地。傾国の美女という題目でアートを造れば彼女になるだろう。仙姿玉質、氷肌玉骨という表現はまさに彼女のために存在する。




 オレはたっぷりと数十秒は固まっていただろう。ようやくそれが何なのか、誰なのか思い至る。



「なんでミューズがいるんだよおおおおお。アイ!どうなってんだ!」


《声に出てますがまぁいいでしょう。説明します。

 陸所有のPC内に保管されていた女性の画像群を統計調査。一番多かったのは人間、次いでエルフ、獣人と続きます。人間の生身の女性はたった一人で彼女だけだったので外見の大部分を彼女から流用。その他多くのいわゆる『2次元』画像からは各カテゴリーの人気上位要素を抽出。職業では看護婦、警官、教師、アイドル。服装では下着、水着、エプロン、セーラー服。装飾品では猫耳、兎耳、網タイツ、眼鏡。髪型ではツインテ、お団子、ストレ・・》


「きさまあああーーだまれぇーー

 もう言うなああーーー

 わああああーーー

 しぬしぬしぬしぬうううううーーー

 恥死するううーーー

 殺してくれーー

 誰かオレを殺してくれーーーー」



 その辺をのたうち回って苦しむオレ。



「アイ!てめー!どうなってるとは言ったけどそんな説明もとめてねーよ!

 つか求められても言っちゃダメなやつだろ!

 陸がいたら身投げするレベルだぞ!」


《お気に召しませんでしたか?》


「そういう問題じゃねーーー!!」


《再作成可能ですが?》






「・・・・・このままでいい」(小声)


《でしょう?そうだと思いました。巨乳女教師スタイル+エルフ耳は私の自信作です》


「もうやめてっ!!ほんとにっ!!」

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