36
《いよいよ本日、10層を攻略しようと提案いたします》
きた。きたねアイさん。
アイの指示に従って10層をあきらめたあの日から2週間くらいかな。レベルは十分上がった。技術だってそこそこのハズだ。少なくとも9層までは無双できてる。
このダンジョンはゲーム仕様だ。9層まで無双できてる状態で10層の中ボスに対して苦労するとは思えない。そもそもある程度情報を持ってるアイさんが危険を許すとは思えない。たぶん盤石な状態だと思うよ。
(ではネタばらし・・・いや攻略情報をいただきましょうか、アイくん?当然準備はできておるかね?)
《大丈夫。アイ通の攻略本だよ》
(おぉー、すごい。日本文化に精通してきたな。高得点だよ今のは)
《ありがとうございます。以下ボス仕様を説明しますが、想像以上にゲームであきれますよ》
10層情報:
現在確認できているダンジョンのほぼ全てで10層には同じ魔獣が配置されている。それ以外の雑魚魔獣なし。いわゆる中ボス扱いらしく戦闘を開始したら討伐するまでボス部屋から出られない。
討伐後、奥への通行可。11層か転移装置に進める。転移装置は1層と10層を相互に移動可。10層へ転移した後の逆走(9層戻り)は基本不可。
ボス魔獣はドッペルゲンガー。
要はコピーロボットらしい。
挑戦者の姿と能力をコピーしてくる。
挑戦したメンバー分の個体数がちゃんといる。
ソロの挑戦記録は無いが間違いなく魔獣も1体だろうとのこと。
コピーの能力は正確で1~9層での戦闘データを統合し複製。
最初のこちらの攻撃が届くまではノンアクティブ。
つまり初撃はもらえる。
初撃に関してのみダメージ軽減が大きい。
《各地のダンジョンで討伐されているので攻略法が完全に確立しています。初撃において1~2体に集中して攻撃し数を減らすようです。同じ技量を持った人間同士の闘いなら人数が多い方が勝ちます。私が慎重になった理由はソロ攻略の情報が無かったためです》
(なるほどな~。ガチでゲームだな。つまりゲーム的に考えていけばきちんと攻略できるってことだ。初撃がもらえるなら絶対オレ勝てるじゃん。なんで今まで慎重になってたの)
《先ほど言ったようにソロ記録が無いことと、100%の勝利のため強化[1]を体得するためです》
(え?意味わかんないけど?あっそうだ途中で有耶無耶になってたアレ!強化が活性に変わってるヤツ、どうなってるのアレ)
《強化の訓練を集中的に行い熟練度が上がったことで、どうやら技術の進化が起こったようです。具体的には身体強化のステータス倍率が増加しました。同じ[1]でも強化より活性の方が高いです。非常に高度な強化法であり、現在私には運用できていません。そのためマスター就寝時には強化[1]になっています。活性ではなく》
(ハハハ・・・オレ様サイキョウ。よくわからんが強くなったのね、オーケイ。で、慎重になってた理由は?)
《コピーの能力は1~9層のデータを忠実に再現します。もし1~9層で手を抜けば弱いままで複製され完全勝利につながります》
(うひゃー迂遠だな。そのための強化、いや活性[1]なのか)
《はい。活性[1]と突貫で勝利確定です》
(まさか攻撃もさせないの?鬼かよ、情け容赦ない)
《褒められたと認識します》
ってことでやってきたよ9層。いまは10層への階段前だ。当然ここまで活性[1]で突貫してきた。あ、オレもう前の強化使えないからね。正確に言うと使い分けできん。どっちも同じだ、オレの中ではね。
《想像より順調に突貫できていました。AGIの成長が効いているようです。では参りましょう。くれぐれも活性は[1]のままでお願いします》
(わかってる。アイ、今更だけどアイの能力も複製されてたらどうする?)
《ユニークはコピーできないと考えます。神の力に依存するからです。そんな力を簡単に複製できるハズがありません。もしコピーされたら私が対処します。自分の弱点はわかっています》
10層への階段を降りる。階段はどこの層間でも同じだ。コピペで使ってるのかな。まぁゲームだし?このダンジョンの造りはもともとシンプルだしね。階段を降りきったら通路だ。だいぶ先に部屋らしき物が見える。慎重に通路を進む。
(・・・!・・・見えない境界があったぞ。1層手前の境界と似てる)
《攻略情報には戦闘開始すると見えない壁ができて脱出できない、との記述があります。おそらくそこがソレなのでしょう》
進む通路の途中で境界があった。念のため境界を出入りしてみるが、今は普通に両方向に通過できるようだ。確認だけしてさらに奥に進んで行く。通路はかなり大きな部屋につながっていた。
(見えたな。あそこに立ってるのがオレか)
部屋の中央やや奥側に黒髪の少年が立っている。弓と矢それに荷物は持ってるな。オレと同じ物だ。うーむオレってあんな感じの外見なのね。この世界には鏡がねーからしっかり見るのは初めてだ。金持ちの家にはあるかもだけど。
《もう少し近づいてください。観測しますので。それと『自分に攻撃する』ことは平気ですか?物語によると主人公にはなにやら葛藤があり、かつ苦戦するらしいのですが》
(わかる。わかるよ!アイくん!
正直迷ってた。その演出をしてテンプレ達成しようかと思ってた。ただこの攻略法があまりにも鬼畜だから、演出してもマッチポンプに過ぎるなぁと思ってね。だって心のなかで葛藤した挙句、一方的に攻撃するんだよ?なにその悪者ムーブ。
本当はコピーと闘うとなったらやりたいことがあったんだ。
魔獣は自分の損傷を気にしないで行動できるから、自分と同じ能力を持った相手なら生身のこっちが不利。苦戦するよね。んで、胸アツ展開。
『オレは常に進化し続ける!さっきまでのオレと一緒だと思うなよ!!』
いけてるでしょ?テンプレだよね?)
《長いです。そういうのはチラ裏に書いておいてください。ステータス表示します》
あ、はい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【名前】ドッペルゲンガー(リク)
【LV】19
HP 1100/1105
MP 0/0
STR 18
VIT 19
DEX 19
AGI 23
INT 16
【付加中】身体活性[1]
【スキル】身体活性[1] 気配隠蔽[7]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(見事にコピーしてるな。これは鑑定じゃないんだよね?うん知ってた。かわいそうなことに弓持ってるのに使い方わからないのね・・・ごめんね)
《10層まで攻撃しないで到達できているマスターが脅威なのです。謝る必要などありません。むしろマスターの姿を模るなど不敬です!》
(う、うん。それより攻略情報ってやつにはこういうの無かったかな?10層まで到達できる複数人を集めて、10層突破させたい人物をここまで何もさせないで輸送する。すると今のオレのコピーより更に何もできないコピーちゃんが出来るような希ガス)
《私たちの手法を突き詰めた物ですね。確かに悪くない手法です。ついでに武器と防具も別の人が運べば完璧ですね。もしかしたら実際実施されているのかもしれないぐらい有用です。口外してないだけで。では限界まで強化を。久しぶりの光の矢です。頭部を狙ってください。私は観測に集中します》
(容赦なさすぎでしょ・・・・)
ふむ。いつまでも遊んでられないしやるか。
身体中の魔素を意識し活性化してゆく。
半身でゆっくりと弓を構え一呼吸。
うん。ここまでの動作も速くなったな。
魔素が全身を恐ろしい勢いで巡る。
コピーの目を見つめ弦に力を込める。
産まれた激しい魔素が握りと弦の間に集中する。
インパクトの瞬間に爆発するイメージ。
弓から放たれた光線が伸びてゆく。無論刹那の間のことだ。極限の速度のためにまるでオレの弓とコピーが光で繋がったように見えた。その瞬間。
「どわっーーーー」
激しい爆風で吹き飛ばされた。
2転3転と後ろに転がってしまう。
慌てて起き上がり様子を伺う。
コピーが立っていた場所には大きな穴が開いていた。




