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《いいえマスター、はっきりと否定します。

 これはあくまで積み重ねた大量の観測データ、及びその解析があったればこそです》



 私は何でもできるわけではありません。

 ですが誰もができる事でもありません。

 現時点で持てる全能力を尽くした奥義。AI魔法としてのプライド。


 

《大きなインパクトを与えてしまったのは認めます。私にとっても会心の出来であり、私自身驚いています。ですのでいくつか説明いたします。もともと大きなヒントを頂いていました。マスターに。》


(え、オレ?)


《何度も何度もダンジョンについて仰っていました。ゲーム的だ、と》


(ダンジョンの壁とか階段付近の安地のこととかか)


《他にもたくさんありましたよ。それらの言葉から、このダンジョンはゲームを参考にして作られていると判断するのは当然の論理的帰結です。

 ならば魔石のドロップもゲーム的ドロップ判定があることは自明の理。その確率も極めて精度よく調整されています。そして前世のゲームを参照すればドロップ判定は討伐直後が当たり前》


(うん、納得できるな。ってゆーか言われてみれば、なぜ自分でそこに思い至らなかったのか。あれだけゲームばっかしてたのに)


《必要がなかったからでしょう。マスターはダンジョンを楽しんでいましたよ。そのルールをイジろうとは考えなかった、ということです。それ故に今回の私の発言に引っかかったのでしょう。

 私はAIという根本の性質上万象を分析し構造解析、理解しようと動きます。ゆえにルールを見極めようとして当然なのです》


《ここまでで解析すべきタイミングはわかりました。その一方でどう介入するかも大きな問題です。もともと魔素反響定位の習熟度を高め使い込んでいくにあたってその応用技を常に開発してきました。例を挙げるとジャミングです。

 実はこれもマスターからのヒントがありました。わかりますか?》


(・・・たぶん・・・吸収?)


《ご明察です。他の魔素になんらかの影響を及ぼし変質を促す手法です。これに加えて幸運も重なりました。新しい宿の受け付けです》


(・・・・?)


《あの者は恐れ多くもマスターの、つまり他人の魔素に干渉し一定の方向へ誘導を行っていました》


(え、オレ大丈夫?なんかされたってこと?)


《心配無用です。干渉自体は極めて軽微、しかも悪意ある誘導ではありませんでした。極論すれば『営業トークが上手』『商品を買いたくなる』というのと同じです。マスターもあの者を褒めていましたね?覚えていませんか》


(そりゃ覚えてるよ。あ~あの時アイなんか言ってたな。観察するとかなんとか)


《はい。まとめると反響定位の基礎技術に吸収やジャミングなどの変質させるための応用経験。それにあの受け付けの人間の持つ技術、望む方向への誘導法。これらがうまく融合して今回の結果を産んだのです》


(うーーん、なんかスマン。オレが素直じゃなかったな。随分と迂遠な説明をさせた。さっきコレを聞いた時、全部操れるならいままでの訓練なんだったのって)


《その気持ちは十分理解できます。マスターの琴線に悪い意味で触れる技術であることを事前に考慮すべきでした。マスターが楽しみを邪魔される事、つまり楽しんでいるゲームを無粋な方法でつまらなくされる事を嫌っているのはわかっていたのに。

 真っ白の世界における陸の記憶にこんな言葉がありました。

『あまりにも反則なチートをもらって転生すると、転生した瞬間に勝ち確でゲームクリアだもんな。どこのクソゲーだよって感じ』

 まさにこの言葉が全て代弁してくれています。お怒りも納得です。

 言い訳させてください。この技の有利な所は効果のON/OFFが選べることと、効果の方向も選べることです。

 つまり気になれば使わなければいいし、必要なら『経験値モード』『魔石モード』好きに選べばよいのです》



 え、ええ、えええ、えええええ・・・・・!

 そ、そうか!そう使えばいいのか!

 オレは・・・・オレはそんなことに気が付かないで拗ねてたのか。

 最初の説明からよく理解せず勝手に不機嫌になってただけじゃん・・・


 しかもその効果は抜群、オレ自身求めていたじゃないか。

 魔石ドロップさんに遠慮してもらってもっと経験値を、とかさ。


 その望みを叶えてもらってキレてたの?

 バカなの?死ぬの?

 いやもう逆に切れられてもいいわ。アイさんすまん・・・

 はぁ・・ヘコむわ~。


 もうあれだ、土下座だ、DOーGEーZA!

 オレのサムライスピリッツ、いや土下座魂を見せてやるぅ。



(アイさんすんませんしたーーーー今後はもう少しアイの言うことをちゃんと理解するように努め、すぐ文句を言うのはやめるようにします!)



 と、一気に膝を折り頭を下げ地に額をつける。これで許されなければ更なる奥の手、土下()が控えている。



《マスター、一体誰に土下座しているのでしょう。マスターが土下座をすると同時に私も土下座することになるんですが》


(そ、そっすね・・・では土下座はやめて・・・何か要望があれば無条件で対応させてただきますが)


《言質取りました。高音質で録音もしてあります》


(容赦ねぇ・・・いえ結構です従います)


《冗談ですよ。それと最後にもう一つ》


(はい)


《以前よりの課題であった、

 たくさん稼げてガッポガッポ、しかも合法!?『簡単お金稼ぎ、金貨増殖法』

 を、この『魔石モード』を以って達成としご褒美といたします》






 ロビーで土下座しているところを受け付けのスタッフさんに白い目で見られるのに耐えられず、またこれ以上ここでダラダラするのにも飽きてきた。当初考えていた通り書類を持って組合にお出かけだ。


 ふむ、時間も正午すぎてるし丁度いい。バススもこの時間ならいるだろう。オレはのんびりと斡旋所に向かって歩いていく。

 斡旋所の門のほんの少し手前でアイが言い出した。



《マスター、お待ちください。

 マップを表示するのでご覧ください。狩猟組合の受け付け近辺に注目です。3人ほど組合員ではないと推定される人間がバスス及び組合長と話をしています。

 会話内容を確認。マスターの話題です。良い雰囲気ではありません。察するに『上の方々』でしょう》


(ちっ面倒な。通りの向こう側の物陰にいるから、その3人が組合から消えたら教えてくれ。で、どんな会話だった?)


《要約します。上層部の者の部屋へマスターの呼び出し。これは組合長が断りました。次にマスターとの面会の希望。最後にマスターの管理権限を狩猟組合から上層部へと移譲要望です》


(・・・・ほんっとうにどこの世界にでもいるよな。典型的な悪役ムーブかましてくれんじゃないの。オレの予定を管理するとか言って、魔石の上前をはねるんだろ。ミエミエじゃねーか。1周まわって笑えるわ)


《完全に同意です。滅しますか?》


(ダメだよ。そんな単純な事じゃない)


《夜目の利くマスターが夜間に超遠距離攻撃で一瞬だと思いますが?完全犯罪をお望みならジャミングで心臓麻痺を演出しますが?》


(ちょ、まってね。マジでだめよ?マジのマジね。組合長に一旦話すからね?本当にダメよ?ね?アイちゃん、ね?)


《ふふ。冗談ですよ。私、最近冗談が上手くなってきてると思いませんか?》


(ド下手すぎるわあぁぁーーーこんちくしょうがああああ)

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