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 斡旋所の中にある狩猟組合は珍しく多くの組合員で混雑していた。


 組合長の周りには数人の組合員が集い何やら話し込んでいる。その他にも狩りの準備に忙しくしている者、受け付けと査定について相談している者など様々だ。

 そんな慌ただしい雰囲気の中へ黒髪の美しい若者が颯爽と入ってくる。一瞬だけ室内の会話が途切れそこに居た多くの者が視線を投げかける。しかし若者はその図るような視線を気にすることもなく組合長のもとへ向かう。



「リク!来たな。おう、おめぇら集まれや」



 人に指示し慣れた者にありがちなよく通る声だ。彼はこの組合の長ヴィナトゥール。精悍な顔立ち、強い意志を秘めた目、への字に結ばれた口元、多くの人間が彼を見た第一印象を頑固と評するだろう。

 ヴィナトゥールは立ち上がると若者を自分の隣に立たせ、居合わせた組合員全員に均等に目を向けながら話し始める。



「聞いてると思うが今日は北の森で大仕事だ。狙いは北の主だ。いままであいつにゃ散々煮え湯を飲まされてきた。オレが耄碌する前に落としてやろうと思ってたんだが、これまでいい機会がこなかった。

 だがここにいるリクが手を挙げやがった。こいつは新人だ。まだその腕を知らない奴が多いだろう。この小僧は並じゃねぇ。森の中でも平気な顔してオレについてきやがる。この『森走り』にだぜ?

 腕の方も折り紙付きだ。何よりリクは組合員になって2日目にグレートボアを獲ってきやがった。みなもまだ覚えてるだろう。

 だが誤解すんな。恐ろしいほど腕は立つがまだまだ経験は浅い。相手はあの主だ、ベテランの俺たちが助けてやる必要がある。本人からも手伝ってほしいとキッチリ頭を下げにきた。


 こいつは実力を見せた上で頭を下げた。筋を通したんだ。

 それを受けて先達のオレらはどうするんだ?

 無理だと笑うか? 面倒だと言って逃げるか?」



 瞬間、場の熱量がグッと上がる。組合長のいつもの挑発だと十分理解していてもそこにいた者達の中のオトコがそれを見逃すことを許さない。



「随分安い挑発じゃねぇか。わかってるだろ、おやっさん。オレ達は誇りある狩人だ。なめんなよ」


「そうだ!若いのに頼られて引くほど恥知らずじゃねぇぞ」


「どこぞの組合の腰抜けとは違うぜ」



 この一言でみながドッとうける。なにやら因縁がありそうな雰囲気だ。



「それに払いもいいって聞いたぞ」



 これを聞いて組合長ヴィナトゥールが大きく笑う。何人かの目がギラッと光ったようだ。



「ワハハハハ!そうだその通りだ。まったくしっかりしてやがるなおめぇらは。それについても含めて説明してやるからよく聞くんだ、いいな?」



 一旦言葉を切りまわりを睨みつける。ここからは真剣だ、と宣言するように。



「まず肝心なことを言う。主はオレとリクだけで落とす。アイツと一番因縁あるのはオレだ。これは譲れねぇんだ、スマン」



 組合長はそう言って頭を軽く下げる。

 周りで聞いていた者はほんの少しの驚きを顔に浮かべ居住まいを正す。



「てめぇらの役割は他のグレートボアの牽制だ。

 知っての通りアイツの縄張りはデカい。それに押されて他のボアはいつも窮屈に感じているだろう。主が騒ぎ出したらこっちにちょっかい掛けてくる奴もいるかもしれねぇ。

 そこを抑えるのが仕事だ。わかるな?落とさなくていい。縄張りから外へうまく誘導してくれ。主とやってる時に乱入されたらさすがに厳しいからな。

 配置は縄張りのすぐ外側をグルッと囲むようにしてくれ。順番はまかせる」



 みな真剣に聞いている。余分なことは言わずに続きをじっと待っている。

 その様子に密かに満足しながらヴィナトゥールは、また口を開く。



「奴を落としたら狼煙を上げる。ナイフは持って行けよ?全員で解体だ。持ち帰った分だけ自分の納入にしていい。意味はわかるか?査定金ももらえるし実績にもなる。グレートボアのだぜ?気合入れろよな。

 もし黒狼煙の場合は・・・わかってるな? オイ心配すんじゃねぇ、オレが自らいくんだ。おまえらが心配しなきゃなんねぇのはデカすぎて全部持ち帰れるかどうかさ!」



 またもやドッと笑いになる。若干不安を感じている者を笑い飛ばすように。



「あとは細かい話になるが、解体用の特殊大型ナイフとノコ。すまんが数人で担当して現場に頼む。それから罠についてだが・・・・」



 細事を追加説明し終え、ヴィナトゥールは最後にもう一度みなを奮起させるように言う。



「今日が奴の命日だ、しっかり引導を渡してやれ!」




 オオオオオオーーー! 斡旋所を軽く揺らすような太い声が轟く。







《マスター、私はあの者を見くびっていました。マスターの事情をよく理解し、うまく話を繋げていました。自分が頭を下げてまでマスターの力を他に晒さない工夫もありました。また部下をのせてやる気にさせるのも巧みでした。

 唯一の減点ポイントは組合長がマスターに同行することです。ただこれは話の流れとして仕方ない部分があり情状酌量の余地ありです。

 この際、組合長にはマスターの力のほんの一旦を開示してやりましょう。強化は[2]で内部破壊強化の矢を使って速射で。目、目、眉間、耳、耳の全てに命中させてください。

 ダンジョン内に比較して圧倒的に弱く遅いボア。フィールドも広くマスターのスピードが活かせます。直線しか存在しないダンジョンと違い森の中なら隠れる物が多く、気配隠蔽も極めて有効です。この程度のことマスターなら朝飯前です》


(そこまで言うと、か、かえって緊張してきたんだが・・・・)


《構いません。たとえミスがあったとしても、失敗やケガ、敗北などはありえませんので。目撃されるのもせいぜい組合長止まりです。

 マスター、慢心は駄目ですが、自分の力を客観的に把握することは重要です。地上においてあなたを害する事ができる者は現在確認できていません》


(う、うん・・・・・・・え、あなた?)


《組合長が呼んでいます。急ぎましょう》







 うん、スマンかった。正直緊張しまくってたし、なんならビビッてた。

 オレが間違ってた。余裕だった。ちょーーよゆーーだったわ。


 デカかったよ。確かにデカかった。


 でもダンジョングレートボアより小さいじゃん!

 キミ主ちゃうの!?主なんて言われたら構えるじゃん、普通。


 それにさ。なんか因縁がある?みたいな?話あったじゃん。

 一切消化してないよ!回想シーンは?ねぇ回想シーンは!?

 組合長の昔のエピソードどこなのよっ。


 まぁいい、それはいいや。いやよくないけど。

 問題なのは狩り自体だな。一瞬だったよ、一瞬。

 まーじーでー、デージーマー。


 隠蔽して近づく、主から見て右斜め前方から耳、目、眉間。

 速攻移動して左斜め前から目、耳。


 ハイ、オワリ。


 たぶん5秒とかだったと思う。内部破壊をイメージして矢を強化した。速射も随分上手くなったよ?

 あ、もちろん弱めの強化ね?それでも最初の耳への一発だけで終わってたと思う。

 近づいてよくみたら中身が顔中の穴から・・・・(自主規制)

 これを何発も耐えられる生物はたぶんいない。


 組合長はその時距離が離れてて全く何もわからなかったと思う。終わったから近くに呼び寄せたらフリーズしてた。

 因縁を吹き飛ばしちゃってゴメンナサイ。





 帰ったらみんながスゴイ笑顔だった。


 いままで一度も話したことない人からも褒められた。一気に垣根が無くなったね。みんなげんきんなもんだよ。

 でもそれが普通だよね?突然ポッと現れたわかぞーが、活躍して金稼いでる。自分たちの何倍も。そりゃいい気分じゃないよな。オレだったらそう思うもん。自分もおいしい目にあえて初めて受け入れるんだ。


 逆に笑顔じゃないのは2人いた。

 憮然とした組合長と査定と集計に死にそうなバススだ。


 組合長、そりゃ納得いってないだろう。何もわからない内に終わってたんだ。どんな想いがあったかなんて知らないけど突然消えれば困惑しかないよね。


 バススは可哀そうだったので、少しだけ集計を手伝ってあげた。計算得意だしね!

 強化されたオレのINTが火を噴くぜ。うん、計算にはあまり関係ないかも。




 清算関係が終わっても熱は冷めやらず、街の酒場兼食堂にみなで流れ込む。

 当然オレも引っ張られる。


 結局オレもどこか嬉しかったんだろうね?



「今日はオレが全部出します!やっちゃってください!」



 なんてイキってましたとさ。

 むむっ?テンプレ判定ありかな?


 会計の時に手持ちが足らなくて青くなったりもしてた。

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