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《マスター、軍に報告されている最高到達層はこの7層です。

 魔獣の情報はありません。念のため気配隠蔽を。敵に絶対にイニシアチブを取らせたくないので、索敵を強めにします。魔素量にご注意を》



 無言で肯定の意志を送り、気をひきしめる。

 アイからも索敵にいつも以上に集中している気配が流れてくる。ただ不安はないようだ。



《かなり大きい胴体を持つ魔獣の模様。次の分岐右、突き当り左で見えます。コーナーからは遠いようです》



 ダンジョンを始めて最初の頃のように、気配を殺して通路の角から様子を伺う。


 うん。グレートボアだね。


 目新しさの欠片もない。北の森の奥で見るグレートボアだ。



《マスター、重ねて言いますが外界のソレと同じなのは見た目だけです》


(わかってる。最初の方は隠れて遠方から仕留めるよ。慣れてからスピード重視にする)



 とは言ってみてものの、気配隠蔽と慎重さはすぐに捨てられた模様。

 アイも実際の動きを見て安心したようだ。どんどんナビのテンポもよくなる。

 数十匹を倒したと思われる頃。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【名前】リク

【LV】12

【NEXT】424


HP 158/393

MP 0/0


STR 29

VIT 30

DEX 29

AGI 29

INT 19


【付加中】身体強化[2]

【スキル】長弓[5]  速射[2]  光の矢[1]

     身体強化[3]  気配隠蔽[7]

【ユニーク】魔素視  AI解析

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ひゃっほーーーーーーい。

 とても順調だ。



《悪くない経験値効率です。もっと魔素を使用してもコスパは高いままと推定します。魔素を使用した上で休息と回復の時間をじっくり取る方式に変更したいのですがいかがでしょう? 安全地帯があるといいのですが》


(ゲーム基準なら階段か階段付近は安地になってるよ)


《承知しました。グレートボアを倒しながら階段を捜索します》


(あ、外のと区別しないでそう呼ぶんだ・・・・)


《妥当であると考えます。呼称名がないと不便ですので。それにしても単調で安易なダンジョン構成です。もう少し変化があるかと予想していたのですが。この分だと次の層も同様でしょう》


(ああ、そうだな)



 転生者に影響を受けてダンジョンを作った説が正しいなら、もうちょっとうまく作れてもよさそうだ。見よう見真似で作ったと言われれば腑に落ちるかな?


 転生者の協力を得られなかった?

 神様が?

 もっと悪くみれば敵対関係?


 まさかね。


 今はただの想像にしかならない。意味ないね。それより狩ろう、うん。



(考察はもっと後だ。次いこうぜ。8~9層あたりの魔獣によっては、この層に戻って稼ぐことも考えてくれ。まぁ同じとは思うけどね)


《はい。いきます》








《では一旦休息しましょう。魔素が残り少なくなっています。階段はこちらです》



 無事に階段にたどり着き休憩だ。水分補給した後、なんとなく階段に寝っ転がる。

 いいじゃないか、誰もこないんだし。



《マスター、ここをひとまずの安全地帯とし、いまから魔素の全回復法を実行していただきます。その前に新訓練:吸収を試してみましょう。身体強化はそのままでお願いします》


(おーなんかきたね。充電、マラソン、と来て吸収か。前に保留にしたよな? なんで突然・・・・あっそうか)


《はい。このダンジョンという特殊な環境は、その鍛錬にうってつけでしょう。しかも今は疲弊しており、身体が自然と魔素を求めているでしょうから、周囲の魔素が濃い今なら効果を得やすく、コツを掴みやすいのではと思われます》





《まずは吸収について。マスターはどのような物を想像しますか》


(んーー、周りに魔素が満ちてる。ここのソレは外とは雲泥の差だ。ここと比べたら外は魔素が無いに等しい。濃いからそれを取り込んで自分の魔素とする。これが素直に感じたままかな)


《取り込むとはどういう動き、作用でしょう》


(え、取り込むとは取り込む、じゃない?)


《それでは言葉だけです。どの魔素が何によってどう動き、どこに向かうのか。変化、変質はするのか。減るのか増えるのか。はたまた消えるのか生まれるのか》


(・・・・・・・・うぅぅ)


《では『自分の魔素とする』とはどういう意味でしょう。2つにわけましょうか。

 『自分の魔素』とは? 『とする』の具体内容は?》


(・・・・・・・・自分のって、今オレの体の中にある魔素、身体に纏っている魔素だよな。自分の自由になる魔素、自分の意志で動かしたりできる)


《いいですね。『とする』とは?》


(ぇ~・・・・他所から吸収する・・・・)


《ダメです。また言葉だけになってます》






(・・・・・・・休憩終わりにする? てへっ)


《マスター・・・・まだ完全回復法もやってないでしょう? いいから考えてください。自分の内面に問いかけて》



 ごめん。オレは本当にダメだな、こういうのに弱い。


 自分と向き合うとか?

 精神論とか?

 光の矢の時だって、アイに言われなきゃ、ずっと矢を作ろうとしてたよ。


 たぶんね。


 光の矢、あの時はどうだったか。光が生まれたキッカケは?


 矢を射る動作をしたよな? オレは頭より体派ってこと?

 よしひとまず体を動かしてみよう。


 そう思い立つとオレは階段から立ち上がり、手を広げてバンザイをしてみる。


 なんとなくだ。なんとなく周りの魔素に触る? つかむ? ような。



(んーーと、周りに魔素があるな。当然オレに近い所にはオレの魔素がある)


《境目はどうなっていますか?》


(・・・・・オレの魔素と周りのが緩くぶつかりあってる。お互いがお互いの壁になってる)


《その壁は壊せますか?》


(無理だな。言うなれば水と油みたい、かき混ぜてもまた分離する。壁はなくならない)


《本当に?》


(マジだって。見えてるだろ?)


《はい。しかし私はその壁が壊れる瞬間を何度も何度も目撃しています》


(いつ!!?)


《気配隠蔽です》


(はぁ? アレはちげーし。

 周りの魔素と自分の魔素を同じ感じっぽく変えて・・・・・あっ)


《自分が同化するのではなく、相手を同化させれば?

 するとあら不思議。まわりの魔素が

 『自分の自由になる魔素、自分の意志で動かしたりできる魔素」

 に変わりました。

 うまく同化させたら、体に纏っている魔素と融合させ、体内に戻してください》


(や、やってみるっ)







 それからしばらくは、吸収に挑戦し続けた。

 ある程度はできるんだ。ホントだよ?


 でもアカン。

 周りの魔素を同化させるのに、結構な自分の魔素を使ってるっぽい。

 本末転倒だ。



《心配ありません。気配隠蔽も最初の頃は大きく魔素を消費していましたよ。

 訓練すれば必ず良くなります。

 初回としては十分な成果でした。では完全回復法を》



 アイの指示に従って回復に努める。メビウスの輪のイメージだ。

 無防備になるが場所を選んでるし、アイも警戒してくれてる。


 回復に集中しつつもアイに問いかける。



(アイ、最初からわかってたの? 敢えて教えずに自分で考える事が大事だから?)


《自分という要素が大事なのは以前に申し上げた通りです。しかし本当に最初は私もわかってはいませんでしたよ? うっすらと方向が見えたのは、マスターの『自分の魔素とする』のところです》


(なんでそれでわかるんだよ・・・ほぼ最初じゃん)


《その言葉に全てが詰まっています。いまのやり取りで行った全てはその言葉に集約されているではありませんか》

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