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 寝不足なはずなのに頭が冴えてる。


 当然だ。


 アドレナリン・・・と見せかけて魔素だな。今日のオレの魔素は一味違うぜ? 見ておけよ。

 さてやってきましたよ、管理ゲートだ。


 朝4時だよ。


 ハハッ、待ちきれなかったんだ。

 え? 施設開いてるのって? 開いてます。フルタイムです。入る方はともかく、出る方は時間わからないしね。

 さっそくロビーに突撃だ。女性の受け付けさんだな。身分証でしょ? 言わなくてもわかってるって、もう手に持ってるよ?


 はやくはやく。



「確認できました。身分証をお返しします。今現在、魔石はお持ちでしょうか?」


「いいえ持ってません」


「ではこちらへどうぞ」



 ここからは別の係りの人のようだ。昨日ここに偵察に来た時に見た、あの『空港にある奴』へ誘導される。質問内容から言って、魔石のチェックなんだろう。

 もちろん何も起きないよ。チェックが終わったので入り口方面へ誘導される。気になったことを聞いてみる。



「今日は軍の人がくる予定はありますか?」


「明日以降と伺っております。地下3階までを演習に使用予定だそうです」


「ありがとうございます」


「ここからは全て自己責任になります。気を付けていってらっしゃいませ」



 この先に本当にダンジョンがあるんだよな? 空港じゃないよね? 雰囲気がなさすぎるんだが。いやいい。そんなことはいい。はやくいこう。

 入り口のホールの奥、衝立に隠れてその入り口はある。地面に地下へ降りる階段がある。

 ここはまだ人工の部分なの? もうダンジョンなの?

 なんかモヤモヤしてしまう。


 なぜって?


 最初の一歩ってさ、なんか心に刻みたくない? さぁいくぜ! みたいな。それはどこからやればいいの。階段の前? ここ? もっと先?


 ええいままよ、行くでござる。


 階段を降りてゆく。降り立った先は通路だ。これはまだ人工部分だな。なんだよまだかよ。ドキドキして損した。そのまま通路を進んで行く。




『!!???』




《マスター》


(わかってる)



 おかしな感覚だ。なにか『境界』があった。垂直にそそり立つ水面に歩いて突っ込んだような。しかもぬるま湯だ。一旦そこで立ち止まる。



(異常は?)


《魔素濃度が極めて高いです》


(影響は?)


《どちらかと言うと我々に有利な影響です》


(・・・・進もう。マッピングと索敵頼む。オレは気配を消す)


《初見のマップを楽しまなくてよろしいのですか?》


(オレは1周目から攻略本を見るタイプだ)


《ゲスいですね。視界の左上にマップを表示します。陸がプレイしていたゲーム画面を参考にしていますがいかがですか?》


(透過度をもう少しあげて大きくして)


《承知しました。ステータスは表示しますか?》


(いらないかな? うんいらない)



 ひどいやりとりだが、行動は慎重にやっている。

 気配も完全に殺せているはずだ。身体強化で視力もあげている。壁の向こうでなければ必ずこちらが先に気が付けるように。

 その壁は濃いめのクリーム色で均一だ。傷もない。



(壁が綺麗だな。ダンジョン製の物なんだろうな? そして明るい。光源がないのに)


《完全にゲーム仕様ですね。壁全体が発光しているようです。

 もし壁の発光がなくなるようなトラップがあった場合、慌てず魔素感覚に切り替えてくださいね。

 ちなみにこのダンジョンでトラップが発見されたことはありません。

 幅、高さ共に約10メートルの通路です。戦闘には問題ないでしょう。

 突き当りを右へ》



 オレとアイは油断なく進んで行く。


 しばらく進むとアイが警告してきた。



《発見しました。もうすぐマップに見えてきます。角を右に曲がって30メートほどです。魔獣及び不明な存在は赤点で表示します》



 オレは応えずに弓と矢を準備して、角に走り寄る。もちろん気配は殺したままだ。角に身を寄せた後、一瞬だけ曲がった先に顔を出し確認する。



 いる。四足歩行の灰色の獣だ。狼か?



《通称グレイウルフです。地下一階はあの魔獣のみだそうです》


(やるぞ)


《はい。攻撃後、すぐには近づかないでください》



 オレは集中力を高める。初戦だ、絶対に決めてやる。

 矢に魔素が集まってゆく。自分でもノッテるのがわかる。最高のコンディションだ。


 次の瞬間。


 オレは一気に角から躍り出て通路の中央に立つ。その時にはすでに弦は十分に引かれ、すぐにも放てる状態だ。我ながら惚れ惚れするほどの立ち回りだ。いまの動作に刹那ほどの時間もかかっていないだろう。グレイウルフはこちらに気が付いてさえいない。


 射つ。


 一瞬だった。


 放たれた矢は目に見えないほどの速度で狙い違わずウルフに到達し、触れたと思った瞬間、それを爆散させていた。部分ではない、すべてを散らせている。

 矢はそのままの勢いで突き進み、対面の壁にぶつかり派手に跳ね返る。

 そこまでいってやっと爆散音が遅れてやってくる。


 これどこかで見た光景だな、うん。既視感だ。



《マスター、やり過ぎです》



 あ、はい。






 オレは念のため残心しつつ、アイの指示を待つ。



《お待ちください。グレイウルフがいた場所に魔素の滞留が見られます》



 言われてオレも注意して見てみる。うん、たしかに。あれ? なんかこっちに来てない? 大丈夫?



(アイ?)


《わかりません。ひとまず戻りましょう。気配を消してください》


(くっそ、矢を回収したかったのに)



 来た道を少し戻ってみる。ちらっと振り返ると思わぬ速さでその塊は迫ってきていた。これ無理な奴だな? ゲーム的に考えて触った方がいい気がする。思い切ってオレは足を止め、その塊を迎え入れる。



(アイ、しっかり観測を)



 塊がオレに重なり消えてゆく。



《マスター、朗報です。魔素容量が微増しています》


(マジ? きたーー!

 いや、予想はしてたよ? でもうれしーーー!

 レベルは? ねぇレベルは?)


《いいえ、でも順当に考えれば時間の問題です》


(だよねーー! DAYONE! アイ! つぎ! はやく!)



 アイから苦笑の波動が伝わってきた気がした。


 オレは矢を回収するため、今の現場に戻って辺りを検分する。当然矢は発見したが、ウルフの肉片等は一切なかった。血の一滴もだよ?

 倒されたら消えるわけだな。どこまでもゲーム的な造りになっているらしい。


 その後アイの指示に従い探索を続ける。慎重さとか気配隠蔽は全て捨てた。いらねーもんウルフには。ゴリゴリに身体強化して最速で移動してる。

 見つけたら速射。魔素なんて込めない。いやごめんウソ。少しは込めてある。獲物に当たって矢が壊れない程度ね。


 あれ? コレもう矢いらないんじゃね? あとでアイに相談しよう。

 とにかく走る、見つける、射る、塊いただく。この繰り返し。そして何匹か目のことだ。



《マスター、おそらく魔石です》


(うん、見えてる。でも魔素が来ないよ?)


《これは観測からの推測ですが、魔石になるか魔素の塊になるかの二択なのでは》



 うーむ。一理あるな? ひとまず拾っておこう。



(これ何匹目?)


《6匹討伐しました。確率は16.7%です》


(ドロップし過ぎると魔素塊が減るんだから、あまり落ちなくてもいいな。よし次だ)




 次の獲物もすぐに見つける。すぐ見つけてるけど、アイの索敵とオレの極悪スピードがあってこそだ。そのまますぐに倒す。すると




 テテテテーテーテー、テッテレーーー。




 あのファンファーレとともにステータス画面が出てくる。

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