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 強化して走ってきたのであれから2時間ほどでキールに着いた。村を出て初めての街だ、期待していることがある。街に入る門の所で、



「身分証はないのか? では入市税を。それから犯罪歴だけ調べさせてもらうぞ」



 のくだりあるよね? んで鑑定魔道具らしき物に触ると青表示になってセーフ、みたいな。


 ないんだなこれが。


 そもそも城壁も城門もない、当然門番もいない。いたって普通の街並みだ。壁がないってことは近隣にモンスターなんて期待できない。下手したら害獣レベルの物さえいないんじゃ?


 いやそれよりも、街に入ったとたん思った。騙された!と。


 あの村が田舎だってのは聞いてたし認識してたよ? キールはそれより都会だろうけど、しょせんナーロッパ程度だと思うじゃん。ところが中世でも近代寄りじゃないのココ。

 もちろんまだ街の全てをみたわけじゃないし、スラムなんかもあったり古い部分もあるだろう。でも少なくとも目抜き通りに木材のみの建物はなく、ほとんどが石材とレンガで作られた堅牢な建築物ばかりだ。漆喰のような壁もあるな。


 なによりガラス窓!

 やたら厚くて小さいが透明度はそこそこある。同じようなサイズがあちこちの壁に並んでる。これ工業化されてない? どうなってるの。


 あと多分だけど・・・・下水あるぞ?

 道路はある程度整備された固い土で、道に沿って側溝らしき物が続いている。所々に石蓋のような物と空気穴がある。これそうだろ?


 ワンチャン、トイレあるっ!???


 これは期待せずにはいられない。

 え? 村ではどうだったかって? 大自然と語り合ってたよ。言わせんな恥ずかしい。



《マスター、推測の通り下水でほぼ間違いありません。トイレも存在しています。ただし前の世界の物に比べると極めて原始的な構造です。快適とは言えないでしょう》


(そこまで贅沢言わない、トイレあるだけで十分だし。ってかどうやって調べたの)


《薄く魔素を飛ばして反応や反響を読み取っています。現在はまだ精度が低く、生物の存在とおおまかな状態、無機物ならおおよその構造を把握することしかできません。観測は私が最も得意とすることの1つですので今後も改善して行きます》

 

(ちょっ、聞いてないけど? 反響定位かYO)


《魔素反響定位と言うべきものですね。マスター、早く斡旋所へ》







 この国において斡旋所とは、簡単にいうと役所だ。戸籍と土地、税を管理している。


 おそらく農業組合と商業組合も合体してる。海が近くにあれば漁協もかもね?

 他の王国や帝国にくらべて法律はゆるゆるみたいだが、税に関してはウルさいようだ。


 斡旋所の場所は聞かされていたのですぐに辿り着く。さすがに立派で大きい建物だ、見栄えも良い。全体的に灰色の石造りで二階建て、大きな看板、人の行き交いも激しい。街の中心となっているだろう。

 中に入ると少し広めのロビーだ。案内所か、または受付らしきものがある。この辺は前世の経験があるので初めてでも余裕だ。

 

 ざっと辺りを見回すと、目が合った受け付けらしいお姉さんにニコッ。

 目礼して近づく。



「こんにちは。丘の上村から来たリクと申します。斡旋所の受け付けでこれを渡すように言われました。よろしくお願いします」


「はい、こんにちは。丁寧で礼儀正しい子ね。ちょっと待ってね」



 一瞬オレの髪に目を止めたように見えたが気のせいかもしれない。

 すぐに書類と手紙に目を落とし、光の速度で読み始める。

 え?ちゃんと読んでくれた? と感じる暇もなくオレに話しかけてくる。



「初めまして、リクくん。ようこそキールの街へ。いくつか説明するのでよく聞いてくださいね」



 説明し慣れているのか流暢で速い。ざっとまとめるとこうだ。


 成人としてこの街に登録され、身分証が発行された。常に携帯すること。

 残念ながら冒険者登録カードではないし、ランクもない。Fランクから始めたかったよ!


 この斡旋所には様々な組合があって、その人の仕事によって決まるいずれかに所属することになる。

 オレの場合は狩猟組合。仕事は組合に斡旋してもらえるし、獲物は組合が買い取ってくれる。狩猟組合に所属せず個人で狩りをしてもいいが、その場合は商業組合の管轄になるそうだ。個人販売事業ってことなのかな。

 とにかく仕事に関しては組合が大きな影響を持っている印象だ。面倒がないといいんだが。


 人頭税が年に二度、1月と7月に徴収される。

 さっそく払わされた。はっきり言って今のオレには相当な額だ。

 年齢や性別、資産などに関係なく一定の額が徴収される。成人まで税が免除されてるのは、子を生みやすい環境を整えて人口を増やすためだろう。成人すればきっちり絞ってくる。商売を始めたり、土地や農地を所有するとまた別の税があるそうだ。

 オレには関係ないね。


 街から街への移動は斡旋所に報告が必要。移動には税がかかる。移動元、移動先の両方にお金を支払うようだ。


 大事なのはこれくらいで、あとは悪い事するな程度の話だ。



「わかったかしら?

 リクくんの職業は狩人として登録してあるわ。この後狩猟組合に行ってもらって、そこで仕事と生活の具体的な話を聞いて相談してくださいね」



 案内通りに建物の中を移動し、狩猟組合の窓口に・・・・受け付けがいない。

 仕方なく近くにいた男に声をかける。



「すいません、狩猟組合の方ですか?受け付けでこの書類と手紙を渡すようにと」



 声をかけられた男は振り返りリクを見る。

 いや、弓だな。弓とオレの手をじっと見ているようだ。



「おまえがノムんとこの子か。オレはヴィナトゥール、ここの取りまとめだ。

 しばらくここでやっていくことになるだろう。ええと・・名前は・・・リクか」



 オレから書類を受け取って、見ながら話を続ける。

 弓を見てノム師匠の弟子だってわかるのか?



「まずは生活に慣れろ。

 この建物の隣に新人用の宿舎がある。無料だが大部屋で臭くてメシは無い。今日食う分くらいの金はあるか?」



 オレは黙ってうなずく。



「よし、今日は食ってはやめに寝ろ。道具はここに置いていけ。明日、初歩からこの街のやり方を教えてやる。朝一でここにこい。6時だ、時間はわかるな?」


「いいえ時計を持ってません」


「時計を持ってる奴なんかいるかよ。時計台がある。この街の宝、魔道具だ」


「6時ですね、わかりました、一通りの準備はしておきます。よろしくお願いします」



 男は少し怪訝そうに頭を下げたリクを見る。



「・・・・おまえ、街は初めてなんだよな? ずいぶん落ち着いてるけど」


「生まれた村以外、初めてです」


「・・・・まぁいい。この後、街をうろつくだろうが問題を起こすなよ。犯罪に対してこの街は厳しい。殺すな盗むな犯すな、だ」


「肝に銘じます」


「おまえ・・・・年寄りみたいだな」




 斡旋所の建物を出て、ひとまずその新人用の宿舎を確認する。

 木造でかなり年季が入っているようだ。はっきり言ってボロい。なんだやっぱり木造の建屋もあるんだな。悪い予感しかしないので立ち寄ることを中止し、街の探索に出かける。


 結構な時間をかけてあちこち見て回る。さすがに大きな街だ、全部を確認できたとは言えない。慣れるまでにさらに時間が必要だろう。


 宿屋、食堂、雑貨屋などはあったが、狩人関連の道具を扱っている店は見つけられなかった。そのあたりは明日きっとヴィナトゥールさんが教えてくれるだろう。

 



 助言通り、はやめにゴハンを食べる。

 いわゆる屋台だ。平たいパンらしき物に肉らしきものが挟んである。


 ウマイ!?


 全く期待してなかったのに、意外にウマイぞ?

 少なくとも何かの調味料を使っている。いやソースか?

 驚いたな。


 もっとはやくこの街に来ればよかった。

 金だって稼げただろうし、稼げば施設のみんなに何か買って帰れる。


 ウマイものだって食いたい。

 転生じゃお約束のしょう油でも、マヨでも、カレーでも何でも作っちゃうよ?


 いや無理か?

 そもそも転生パイセンがいるならもう作ってるだろうし?

 うん、食料事情の調査の優先度を高めよう。


 明日の朝用に携帯できるタイプのパンも購入し、屋台を後にする。




 次に時計台を確認する。

 札幌の時計台のような物を想像していたが違った。時計塔だな。レンガでしっかりと作られているが内部構造を持てないぐらいの狭い幅だ。

 高さもせいぜい三階建て程度。背の高い建物はあまりないので遠くからでも見えるが、肝心の時計盤がおもったより小さい。四方に別々の時計盤が設置され、方角的な問題はないようだ。

 今日半日この街で過ごしているが、鐘の音などはなかったので時報はないのだろう。



(アイ、時計機能ってある? 明日5時に起こして)


《承知しました。なお、この街のマッピングも進めています》


(ぐぅ有能!)





 なお、新人用宿舎は本気で臭かった模様。











 翌日、ヴィナトゥールさんの所へ約束の10分前に行く。

 ヴィナトゥールさんは、やってきたオレの顔を見てニヤニヤと笑う。



「ククク・・・・、本当に臭かっただろ?」



 悪い顔だ。

 イラっとするが、臭いのは別にこの人のせいじゃないしな。

 とぼけた顔をして黙っていると、真面目な顔に戻って言う。



「悪かった、おふざけが過ぎたな。

 お前はなかなかすごいぞ。村から出てきた若い奴は、大概時間を守るということができないんだ。やったことないからな。あと買い物もできないし、出来てもボッタくられる。

 そこだけ見ても、おまえはこの街でうまくやりだしたんだと言える」



 言いながらオレの装備をチェックし始める。



「よし、行くぞ。ついて来い。

 矢はそんなにいらない。ここに置いてけ。罠もなしだ、器具も置いていけ。言い忘れてたが、ここなら道具の手入れができる。狩猟組合員なら自由だ」



 なんかノムさんに似てるな?

 狩人ってみんなこうなるのかな。

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