#1 夢見のカランコエ
初めての投稿‼️
花園奇病院です。
アタシは鏑木マコト。
街中の高時給アルバイト募集ポスターにつられ、今その集合場所に向かっている所だ。
3年ぶり程のキッチリしたスーツにインナーカラーを思っきしピンクに染めたウルフカットが圧倒的に浮いている気がする。
どんどんと人通りが少なくなっていく。やっと道が開けた時だ。
開放的な(笑)山の坂に道路が見えた。
「うげェ……集合場所ッ、というか道!!ほんとにここであってるゥ…!?」
道路を十分程進んで行くと、
大きな病院が見えた
「小児科 花園病院」
と、看板がある。
森の上にしては、いや、
病院の外見は不自然な程に綺麗で、なんだか色々感極まって
ため息をついてしまった。
病院は中も綺麗で、受付のガラスはシミや汚れの1つなく、ピカピカと光っていた。
アタシが病院の自動ドアの前で突っ立っていると、
受け付けから声をかけられた。
「…あら?貴方がアルバイトの方?」
水色のサラサラなロングヘアが良く似合う、恐怖を感じる程の美貌の持ち主が
受付の後ろ戸を開け、
首を傾げながらアタシに笑いかけた。
「あ、うす…。」
うなずきながら軽く会釈をする。
なんだかもう怖い。
顔が整いすぎている。左右対称、少しの猫目、鼻は高くて、
綺麗な唇、ハンバーガーもくわえれなさそうな小さな口。
大抵の美人は自分の顔を潰すような振る舞い方、美貌を潰すまいと必死な振る舞い方をする。
だが、彼女は違う。
根っから、計算された性格ではない。そのままの美人なのだ。
そんな彼女に見惚れていると、
彼女は首に下げた名刺を
丁寧に手に取り私に見せた。
「…私、医院長の「花園 ユキ」
と言います。 貴方は?」
ズイッと距離を詰められる。
ニコニコと少し幼げに笑みを
浮かべる花園さんに頬を赤らめ
ながらもなるべく好印象で、
と意識しこう言った。
「ア……私は!鏑木マコト…す!
精一杯頑張ろうと、思います!」
出来るだけハキハキとそういうと、彼女は目を見開いて少し驚いたような顔をした後、くすくすと笑った。
「うふふ、そんな緊張しなくていいのよ。貴方にしてもらう仕事は
病院の清掃ですもの。」
「あ、アハ……そうすね!!」
本当に可愛い。無理。死んじゃう。アタシは女だが、花園さんの美貌は性別を超越していて、花園さんのことなら余裕で恋愛対象として見れそうだ。
「……じゃあ、早速だけれど…」
花園さんがゆっくりとアタシの体をつま先からつむじまでじっくりと見回す。
「この病院の中で貴方が迷ってしまいそうだから…病院の中の案内でもしましょうかね?」
少し違和感を覚えた。
「えあ、面接とかはないんスか…?」
後ろを向いた花園さんにそう言おうと口を開いたが、面接なんてない方がアタシには得だ。そう思い、アタシはその言葉を喉に詰めて押し殺した。
「…じゃあ、ついてきてね。」
花園さんはチラッとこちらに振り向いて笑みを浮かべると、
コツコツと足音を鳴らして
アタシに背を向け病院の中を歩いていく、花園さんの足跡をなぞるようにアタシも歩いてった。
「ここが…。……ここが…。」
部屋の扉に指を指しながら進んでく。アタシはその指の先を見て尻ポケットからメモを取った。
「1階はここで終わり。こっちが階段よ。」
…
一通り回り終えると、
「ここから、病棟よ。」
花園さんは渡り廊下のドアを開けてそう言った。
「入院してる子…何人ぐらいいるんスか…?」
「…6人。それも、全員普通の病気じゃないの。」
肘に手を当てて、そちらを見て言う。
「普通の病気じゃないって…?」
「…「奇病」って、聞いたことあるかしら?」
奇病…?
「…」
アタシが考えようと黙っていると花園さんは口を開いた。
「奇妙で、普通じゃ
考えられないような病気のことよ。」
そう言った花園さんの声色はなんだか哀情に満ちているような気がした。
アタシが戸惑っていると、花園さんは苦笑いを浮かべた。
「…ごめんなさい。急にこんな話、信じられないわよね。
さ、行きましょ。貴女の事、
あの子達にも紹介したいし。」
花園さんは苦い表情からパッと明るい表情に変わると、後ろを振り返りコツコツと歩いて行く。
「103号室…ここがあなたの部屋よ。」
ガチャ、扉が開く。
その中にはキレイで真っ白なシーツのベッド。花束と絵が置いてあった。
「えッ!?や、いいんスか…!?」
「……ふふ、いいのよ。あなたとっても優しそうだし。あんな山の中、毎週通うなんて嫌でしょ?」
そう言いながら、花園さんはアタシに優しく微笑みかけた。真面目に、この人はアタシに舞い降りた女神なのかもしれない。
ベッドの、枕元の絵を見ると、
「ようこそ、はなぞのへ」とぐちゃぐちゃな幼稚な字で書かれていて、次に、おそらく花園さんらしき水色髪の人物が描かれていた。
「かわいぃ〜……あの、これって、患者さんの書いたやつスか?」
そう聞くと、花園さんは水色の髪をふわっと揺らして幼げな笑顔をうかべる。
「ふふ、そうね。その子達が書いたものよ。…あの子達も、きっと貴方の反応を見たら大喜びするわ。」
この上ない純粋な笑顔で微笑みながら、ドアノブに手をかけた。
「さあ行きましょう。あの子たちもあなたに会いたがっているわ。」