第24話『グランド・ポーカーチャンピオンシップ開幕』
翌朝。
ベガス町の空はいつになく澄み渡り、まるで今日という日を祝福しているかのようだった。
カジノの一角では、今日から三日間に渡って開催される大規模なポーカートーナメント──
『グランド・ポーカーチャンピオンシップ』の会場設営が進められていた。
街中には各地から集まったギャンブラーたちが溢れていた。
一攫千金を夢見る者、名声を求める者、借金を返すために最後の望みをかける者──
様々な思惑を背負ったプレイヤーたちが、今、集結していた。
カードも、スーツに身を包み、会場へと姿を現した。
その佇まいは、誰よりも堂々としており、すでに勝者の風格すら漂わせていた。
しかしカードは分かっていた。
この大会では、スキルに頼りすぎず、自らの知略と勝負勘を試すべきだと。
「ここで勝てば、この世界での地位と財を一気に手にできる……!」
受付でエントリーを済ませ、渡されたナンバープレートを胸に下げる。
エントリー名──『カード』。
トーナメント開始まで、わずか。
大会本部からアナウンスが響き渡る。
「グランド・ポーカーチャンピオンシップ、第一回戦を開始します!」
巨大なホールには、何十ものテーブルが設置され、それぞれにプレイヤーたちが着席していく。
カードも自分の席に着くと、鋭い目つきで周囲を観察した。
──初戦のテーブルには、見るからに強者と分かる者もいれば、緊張で震えている者もいた。
ディーラーがカードをシャッフルし、配り始めた。
カードは慎重に手札を見る。
スペードのキングと、クラブのキング。
いきなり強いハンドだ。
「ふむ……これは、悪くない」
ベットが始まる。
カードは冷静に、しかし大胆にベットしていく。
相手を心理的に揺さぶり、まるで蜘蛛の巣に獲物を誘い込むかのように動いた。
結果──
初戦は圧勝だった。
カードはほとんどのチップを自分のものにし、堂々と一回戦を突破したのである。
数時間後。
休憩時間に入ったカードは、ホテルのラウンジでコーラを飲みながら、次の対戦相手の情報を整理していた。
ベガス町には裏社会と繋がりのあるプレイヤーも多く、勝ち進めば進むほど、単なるギャンブルでは済まされない闘いになる。
──それでも、カードには恐れはなかった。
「勝つために、私は存在している」
静かにコーラを飲み干し、再び会場へ向かう。
午後からは二回戦だ。
二回戦のテーブルに座ると、目の前には一際異彩を放つ男がいた。
鋭い目つきと、手練れの動作。
明らかに素人ではない。
カードは男と視線を交わし、互いに無言の火花を散らす。
そしてゲームが始まった。
ここでもカードはセルフファーストのスキルを最小限に抑え、自らの腕と読みで勝負を挑んだ。
ブラフを見破り、的確にフォールドし、時には一か八かの勝負にも出る。
一進一退の攻防が続いた。
だが、勝った。
終盤、一瞬の隙を突いて、カードは全チップを巻き上げたのである。
男は無言で席を立ち、去って行った。
カードは静かに自分のチップを整理し、次のラウンドに備えた。
──二回戦も、突破。
夕暮れのベガス町。
カジノの灯りがますます眩く輝き出す。
街の雑踏を歩きながら、カードはポケットの中のコインを軽く弾いた。
「この世界で、私は頂点に立つ」
心の中で確信した。
この勝負に、敗北はない。
いや──敗北を許すつもりなど、最初からなかった。
そして、翌日。
グランド・ポーカーチャンピオンシップは準決勝、そして決勝へと進んでいく。
カードの快進撃は、まだ始まったばかりだった──。




