第23話「カジノで一攫千金」
ベガス町の朝。
きらびやかな街並みの中、カードは静かにホテルを出ると、カジノの巨大な建物へと向かった。
煌びやかなネオン、耳をつんざくような音楽、目も眩むほどに光り輝くチップの山。
ここはまさしく、欲望と勝負の世界だった。
カジノの中には様々なゲームが並んでいた。
ポーカー、ルーレット、ブラックジャック、そしてスロットマシン。
カードは一つ一つ冷静に眺めながら、まずはスロットマシンに向かうことを決めた。
「まずは肩慣らしだな」
カードはポケットからカジノ用コインを1枚取り出すと、重厚なスロットマシンのコイン投入口に滑り込ませた。
レバーを引くと、カタカタと回転するリール。
次の瞬間──
チーン!と高らかなベルの音と共に、3つの絵柄がピタリと揃った。
「……悪くない」
しかし、ただの運ではない。
カードは「セルフファースト」のスキルを密かに使っていた。
このスキルは、世界を自分にとって都合の良い方向へと自然に歪める力を持つ。
スロットマシンのリールが「当たり」を引く確率を、カードに有利なようにわずかに操作していたのだ。
とはいえ、あからさまな大当たりばかりではカジノ側に怪しまれる。
カードは、時にわざと負けたふりをしながら、勝率を絶妙にコントロールしていった。
一箱分のコインが溜まった頃、カードはカウンターへ行き、冷静に換金した。
得た金でホテルに泊まり、また翌日もスロットで勝つ──
この作業を、数日間繰り返した。
夜、カードはホテルの豪華なスイートルームで、バスローブ姿のままステーキを食べながら考えていた。
「……ふむ。悪くはないが、これだけでは物足りないな」
食後のコーラを飲みながら、次の手を練る。
そして決めた。
「明日からはルーレットだ」
翌日、カードはカジノのルーレットコーナーに現れた。
ルーレットテーブルの前には、色とりどりの客たちが熱気に浮かされていた。
カードは静かに席につき、チップを手に取ると、盤面の「赤」に賭けた。
クルクルと回るルーレット。
球が盤面を跳ねるたび、周囲の客たちが息を呑む。
カードは目を閉じ、セルフファーストのスキルをさりげなく発動。
そして球は、見事に「赤」に吸い寄せられた。
勝った。
また勝った。
さらに勝った。
だが、ここでもカードは油断しない。
何度かは意図的に負けも織り交ぜ、自然な流れを演出していた。
こうして数日間、ルーレットでも着実に勝ち続け、カードの懐はますます膨れていった。
ホテルへ戻ったカードは、またステーキとコーラの晩餐を楽しんでいた。
その顔には、満足と次なる野心が入り混じった笑みが浮かんでいた。
「そろそろだな……」
カードは一人呟く。
ポーカー。
ベガス町で今、最も注目を集めている大型大会──
『グランド・ポーカーチャンピオンシップ』への参加を決意したのである。
「勝つのは私だ。すべてを手に入れる」
夜のベガス町。
金色に輝くカジノタワーを見上げながら、カードは密かに燃える闘志を胸に、明日を待ちわびていた。




