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第18話:「私にコーラを!」

 早朝。

 爽やかな風がカンザシ町の農村地帯を吹き抜け、朝日が小麦畑を照らしていた。

 カードは縁側に座り、昨日農家の人々が用意してくれた焼きたてのバンズとジューシーなミートパティで作られたハンバーガーにかぶりついていた。

「ふむ、完璧だ。小麦はサクッと香ばしく、肉はジューシー。野菜もシャキシャキ。まさに理想の一品だ」

 だが――

 彼は一口、二口と食べ進めながら、ふと気づいた。

「……何かが足りないな。そう、あの刺激が――」

 その瞬間、彼の脳裏に浮かんだのは前世の食卓。

 ハンバーガーの横には、いつだって炭酸の王者・コーラがあった。

「ハンバーガーに、コーラがないとは……国家の重大な欠陥に等しい!!」

 と、拳を握りしめるカード。

 すぐに彼は、農家の主人に向かって尋ねた。

「この世界にコーラはあるのか?」

 農家の主人は少し考え、首をかしげながらも答える。

「ああ……そういや“ショージ町”ってところで、似たような甘くて泡の出る飲み物を作ってるって聞いたことがありますよ。若い者が“しゅわしゅわジュース”って呼んでましたな」

「それだ!!」

 目を輝かせたカードは、即座に出発の準備に取りかかる。


 そんなカードに、町の人々が集まり、口々に訴えかけた。

「カード様! 町を救ってくださった英雄様!」 「どうか、この町の町長になってください!」

 その申し出に、カードは静かに首を振った。

「悪いが、私はその程度の器ではない。町長の座に収まるなど、筋肉が許さない」

 人々は涙ながらに彼を見送った。


 ショージ町へ!

 数日後、カードショージ町へ到着した。

 この町はかつて、「創造と技術の町」と呼ばれるほど多くの工場が立ち並んでいた。

 しかし……どの工場も煙突から煙が上がっていない。

 まるで時が止まったかのような静けさだった。

「妙だな。創造の町というわりに、まるで死んだ町だ」

 カードは商店街に入ると、古びた飲食店を見つける。

 カードは店に入るなり、叫んだ。

「コーラを頼む!」

 しかし店主の女性は苦笑しながら答える。

「すいませんねえ……コーラは今、品切れなんですよ。しばらく前から、工場からの出荷が止まっちまって……」

「なに!? それは国家の危機ではないか! どこだ、その工場は!」

 情報を元に、カードは町の東にある大きな工場へ向かう。

 工場の門は半分壊れかけており、入口には雑草が生えていた。

 だが、門を叩くと中から痩せた男――工場の職員が出てきた。

「ああ……あんたら、コーラを求めて来たのか。だけどな……今じゃ水が足りなくて製造できねぇんだよ」

「水だと?」

「そうさ。ここの工場は川の水を使って原液を薄め、炭酸水と混ぜて出荷してる。でも、最近は川の水がほとんど流れてこない。ただのチョロチョロ水よ」

「(川の水……)これは、また“何か”の影があるかもしれない。」

 カードはゆっくりと拳を握り、呟いた。

「つまり、コーラを奪った敵がいるということだな……」

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