第14話:砂と炎の陰謀!水源をめぐる小麦の攻防戦!
カンザシ町。小麦と風と太陽の町――その象徴であるはずの黄金色の麦畑は、今、生命を失いつつあった。農家たちは顔を曇らせ、井戸から汲める水の量も日に日に減少している。
カードは町の広場にある井戸の前に立ち、バケツを降ろしてみた。
「……カラカラだ。底まで降ろしても、まるで水が存在していない」
バケツの音が乾いた音を立てて井戸の底を打った。
「まるで、誰かが水を吸い上げているかのようだな」
水源に対する不自然な干上がり具合に、カードは強い疑念を抱いていた。
町の役所にて
役所へ向かうと、職員たちは慌ただしく動いていた。麦の生産量低下により、町全体の経済が縮小し、物価が急騰しているらしい。
「町長はどこだ?」とカードが問うと、役人が困った顔で答えた。
「い、今はお会いできません……」
「なぜだ?」
「それが……数日前から町長は『気象研究室』にこもりっきりでして」
「……気象研究室?」
怪しい。カードは静かに歩を進め、役所裏の丘にある小さな石造りの建物へ向かった。
気象研究室と謎の魔導装置
扉をノックしても返事はない。構わずドアを開けると、中には大小様々な水晶球や風向計、呪文の刻まれた書物が並んでいた。中央には巨大な装置が鎮座していた。回転する魔法陣、光を放つ水晶、そして――中に浮かぶ一つの黒い球体。
(……これは、風と熱を操る“魔導制御炉”だ)
その黒い球体は、魔力の流れを受けながら熱を増幅し、周囲の空気を乾燥させていた。さらに管が地下に通じているのを見て、カードは確信する。
「……こいつが地下水を吸い上げ、町の気候を狂わせているのか」
そこへ、黒いローブを着た男たちが現れる。
「見たな……よそ者。貴様にはここで消えてもらう」
「その声……」
かつて照牛刺町で牛を狂わせた黒い一団の一人だった。カードの脳裏にあのときの戦いがよぎる。
「なるほど……あの町での失敗を、まだ引きずっているか」
闘い、再び
「ならば、応じよう。私の筋肉が黙っていないのでな!」
カードがシャツを脱ぎ捨てると、鍛え抜かれた肉体が露わになった。
彼は両手を合わせ、空高く跳躍すると、空中で2回転しながら叫んだ。
「セルフ・ダイナミック・クラッシャー!」
直撃を受けた男たちは床に転がる。
「この程度か?まだまだだな。私は元・大統領だ。格が違う」
そう言い放つと、魔導制御炉の水晶を一撃で破壊する。
パリィーンと音を立てて砕けた瞬間、町の空気が変わった。
遠くから――風が吹いた。
そして――雨が降った。
黄金の恵み、再び
数時間後、畑の小麦たちが徐々に青さを取り戻していくのを、農家たちは泣きながら見守った。
「すごい……!麦が、生き返ってる!」
「雨だ……雨が戻ってきた……!」
町の人々は広場に集まり、カードの偉業を讃えた。
「ありがとう、ありがとうカード様!」
「あなたがいてくれて、本当に良かった!」
カードは腕を組みながら、遠くに広がる麦畑を見つめていた。
「ふむ……これで、バンズの供給も確保できたな」
彼の視線は既にその先――
「究極のハンバーガー」の完成へ向けられていた。




