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第12話:ステーキのためならば!カード怒涛の反撃

 黒いオーラに包まれ、額から角を生やしたリックが猛牛のように突進する。

「うおおおおおおおおおッ!!」

 まるで暴走したケンタウロス。いや、これはまさしく――“牛王ギュウオウ”と化したリックだった。

「……その姿、もはや人ではないな。私の好物を汚す者、許すわけにはいかない」

 カードは冷静に構える。足を開いて低い体勢へ。

「来い、リック。牛でも豚でも、私は容赦しない」

 雷鳴のように響くステップで、二人が激突した――!


 部屋の壁が割れ、天井が軋むほどの重い打撃が交差する。

 カードの拳とリックの角が何度も衝突し、火花を散らすような戦いが続いた。

 だが――

「……っ!?」

 組み合ったその瞬間、カードは確信した。

(私の力が100だとすると――)

(こいつの力……1000”以上あるッ!!)

 圧倒的だった。リックの力は、人を遥かに超えていた。まるで神話の巨牛のような怪力。カードの両腕が軋み、骨が悲鳴を上げる。

「どうした、カード!それが元大統領の限界かッ!」

「……いや。限界など、私にはない」

 にやりと笑うカード。筋肉が脈動し始める。

「私には、誰にも真似できない技がある……“大統領流・秘奥義”!」

 カードは両手を合わせ、

「これで2倍!」

 地面を蹴った。

 バッ!!

「跳躍力、通常の2倍ッ!!」

 彼の体が天井近くまで飛翔する。

「回転力、通常の3倍ッ!!」

 全身が回転を始め、人が風圧で吹っ飛ぶほどの風が生まれる!

「これで12倍!私の力は1200だ!」

「くらえ!ギャラクティカ・ダブルチョップ!!」

 両手の刀のようなチョップが、リックの角に一直線――

 バキィィィィッ!!!

「ぐあああああああああッ!!」

 リックの角が折れ、地面に突き刺さった。

 その瞬間、リックの体を覆っていた黒いオーラが音を立てて崩れ、霧のように晴れていく。

「っ……あ……おれは……?」

 リックの目に理性が戻る。身体から黒い筋が抜け、元の人間らしい姿に戻っていた。

 カードは静かに地に降り立ち、立ち尽くすリックの背後へ回る。

「リック……私はかつて、貴様と政敵だった」

「……」

「だが、今は違う。貴様は、私のステーキを危機に陥れた。それだけで、十分だ」

 バキン!!

 カードはリックの腰を抱えると、そのまま持ち上げ――

「セルフファースト・ジャーマンスープレックス・エンド!!」

 ズドオオオォォン!!!

 地響きを立て、リックの体が町長室の床にめり込む。椅子や机は破壊され、窓ガラスも粉々に砕け散った。

 煙が立ち込める中、カードが、リックの倒れた前に立つ。

「――お前はクビだ!」

 その宣言は、町役場に響き渡った。

 町長室に駆けつけていた役人たちは、口を開けて茫然としていたが、すぐにその勇姿に喝采を送った。

「カードさま万歳!」 「ステーキを救った英雄だ!!」 「次の町長は……カードさまだ!!」

 群衆の声に、カードはゆっくりと振り返る。

「私は町長などという器には収まらん。だが、私が守るものは一つだけだ……“私の幸福”――そして、その一部は、ステーキである」

 町役場の外では、陽光が差し込み、牛たちの鳴き声が元気を取り戻していた。


 テギュサス町の危機は去った。

 牛たちは健康を取り戻し、ステーキ供給も安定化。町の人々は、救世主カードに感謝を込めて“牛の守護者”の称号を贈った。

 だがカードは、次の目的地を静かに見据えていた。

「さて……この世界、私の好物は他にどれほどあるのか……調べ尽くすとしよう」


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