金曜の夜に
「おねえちゃん。いっしょにねて?」
ぽてっとベリーショート(刈り上げではないのです)丈の頭を傾げて私を見上げるのは、5つ年の離れた6歳の弟康太君。
「だめー?」
ぐぐーっとただでさえ前のめりに私の顔を見上げているのに、更に下から見上げようとするように身体を前に倒して首をひねっています。
「いいよ。そんなにさっきの映画怖かった?」
「……ぅん」
康太君に、今日やるロードショーの映画は怖い奴だよ、っていったのに。
どうしても見るって聞かなくて、その癖お姉ちゃん傍に居てね?なんて言って私の膝の上を占領して。
怖そうな場面になると手のひらでおめめをぎゅーってして、塞げない耳に映画の悲鳴が入るたびに背中を私の身体に摺り寄せて、声も出せない様子だった康太君。
「寝る前におトイレ行く?」
「ん」
一緒に寝ると決まれば早速寝る準備。
映画を見始める前にいつ寝落ちしてもいいようにパジャマに着替えていたので、後はこわーい夢をみて康太君がおねしょしないようにおトイレにいっておきます。
康太君は大人しくトイレにいってくれるみたいですけど、その手はしっかりと私の手を引いていました。
一緒に来て?と素直にいう事は出来ないのが男の子、ってことなのかな。
そしてトイレの前で、先に入りなさいって促すと離れないでねっていじらしく私にお願いしてきます。
「大丈夫、康くんが終わるまで待ってるから」
「ほんとだよ。ぜったいだよ。やくそくやぶったらおかあさんにおこってもらうから」
「うん。指切りする?」
「……する」
「じゃあ。ゆびきりげんまん嘘ついたらハリセンボンのまーす。指切った」
「きった」
「じゃ、しよっか」
「はあい」
お母さんに誓って指切りすると、やっと勇気が出たのか康太君はトイレの中に入っていきました。
そしてしばらくして水を流す音がして……。
「でた」
「はい。よくできました。じゃあお姉ちゃんもおトイレするね」
「うん」
「待っててね康くん。眠いからって一人でお布団いっちゃいやだよ?」
「うん。まっててあげる」
「はぁい。ありがとうねぇ」
ちょっと強気な風を装ってたけど、康太君は私がトイレに入ってドアを閉めるとき、閉まるドアの隙間から覗いた瞳は、ちょっと不安に揺れていました。
さすがにお姉ちゃんまだ?って呼び掛けられるほどの時間は掛けたつもりはなかったんだけど。
「おねえちゃんちゃんといる?」
ってドアをトントンされてしまいました。
その声にちゃんといるよーって答えてあげると、康太君はドアの外からいるならいいやって。
ふふ、心配性で可愛い。
そうしてトイレを済ませて、二人で私の部屋の布団に入ると仰向けになった私に寄り添って。
「おねえちゃん、あしたのあさおこしてね」
っていう康太君。
なんで?って聞いたら他の人に解らない合図だよ、ですって。
他の人が起こそうとしたらおばけかもしれないから、隣で寝る私に起こしてほしいんですって。
ふふ。
私も多分お母さんに起こされるのに、康太君ったら可愛いんだ。
だから、そういう事なら、って私が先に起きたら起こしてあげる約束をしました。
そうして、明日の朝の約束してからようやく私達は眠りに就いたのです。
可愛い可愛い弟に、真夜中起こされてトイレに行くっていうオチがつくなんて思わずに、ね。
ショタにお前られるお姉ちゃんが書きたかった。
それだけです。