06 厄災
06 厄災との遭遇 更新しました。
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青年と別れてからどのくらいの時間が経過したか分からないが、私はその後街の中を歩き続けていた。
というのも、いち早くスキルを習得したいのもあり、本を無料で読み漁れる図書館を探していたのだが、それらしい建物がどこにも見当たらない。
もしかして、この世界には無料で本が読めるという概念が存在しないのだろうか?
それは私にとってとても都合が悪い。なぜなら私は、書物から知識を得ることが多いからだ。
それを絶たれたとなるとかなりの痛手だ。しかもお金もないし。
「さて、どうするかなー。そういえば、このままじゃ晩御飯も食べられないじゃん。まあ、何とかなるか」
そんな感じで能天気に過ごしていると、ふと私の前に黒い陰が出現する。嫌な予感しかしない。
「フフッ。本日二度目、さっきぶりですね」
漆黒の和装ドレスに鮮血の羽衣を身に纏った彼女が私の前で舞い降りる。
「私に一体何かようですか? こう見えて私忙しいんですけど」
「フフッ。冗談がお上手ですね。正直に話さないと図書館の場所、教えてあげないですよ?」
「……で、一体私に何のようですか?」
意味もなく、こうして二度も私の前に現れることもないだろう。もし、意味もなく現れているのだとしたらかなりの暇人に違いない。
いや、もしかしたら存外《UNKNOWN 》は暇を持て余しているのかもしれない。
「私が貴女に用があるわけではありません。貴女が私に用があるのですよ?」
「……つまり、図書館の場所を教えてくれるんですか?」
呆れるように彼女は額に手を当てる。別に間違ったことは言ってない気がするけど。
「貴女、グリアス王国を滅ぼした《UNKNOWN》の話をご存知ですか?」
「ああ、青年が言ってた話ですね。どうせやったのあなたですよね?」
「フフッ。やっぱりお見通しでしたか」
「そりゃ、黒髪の《UNKNOWN》って言われたら、あなたがそのまんまじゃないですか」
「それが分かった上で、逃げ出さないのですね」
「まあ、逃げても無駄だって分かっていますからね」
相手は国を一つ滅ぼせるほどの力を有する《UNKNOWN》だ。逃げたところで瞬殺されるのは容易に想像がつく。
だから私は消去法で対話を選択したのである。
「それで、私があなたに用があるのと、あなたが《UNKNOWN 》だと明かした理由に何か関係でもあるんですか?」
「ええ、用はもうすぐでできるかと」
「……はい?」
頭に疑問符を浮かべた私を他所に、彼女は城の方へを目を向けた。そして一言告げる——————
「——————始まりましたね」
その言葉の直後、いつの間にか私たちの目の前に燕尾服を身に纏った青年の姿があった。
それと同時に城の城壁が凄まじい破壊音と共に崩れ落ちていく。それだけじゃない、街の人たちも膝から崩れ落ちていく。
近づいて安否を確認するも——————すでに手遅れだった。
「やはり、やはりあなた様が……あなた様こそが……。尚更あなた様が欲しくなった」
そう言った直後、青年は私の背後に静かに立っていた。早いとかそういう次元の話じゃない。
しかも、全てを知覚できるようになった頃には、青年の手は私の背に触れていた。
「……やはり、あなたを先に始末しないといけないようですね」
「フフッ。そう簡単に獲らせませんよ? まずは私を倒してもらわないと」
よく分からないが、彼女が私を助けてくれたらしい。
青年はスッと私の背後から消え、目で追えた時には彼女と青年の立ち位置は変わっていた。
青年の攻撃を彼女が避けた……のか?
「——————貴女、私と一つ契約を結びませんか? そうすれば、貴女の命は私がいる限り保証しますけれども」
正直、彼女のことも青年と同様に何も知らなかった。
知っているのはグリアス王国を滅ぼしたという事実のみ。信じてもいいのか正直分からない。
けれど、私の心はすでに不安と恐怖で満たされていた。
だからこそ、必然的に彼女の言葉に縋るしかないのだ。
「——————私は、あなたと契約を結びます」
そう宣言した直後、彼女の口角がニイッと上がった気がした。
「ええ、ええ、いいでしょう。私が命尽くして貴女を導いて差し上げましょう」
直後、彼女と青年の交戦が始まった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
明日から修正作業と書き溜め作業に入りますが、
変わりなく更新しますので、また明日からもよろしくお願いします。