05 青年の正体
05 青年の正体 更新しました。
よろしくお願いします。
青年の言う、契約とは文字通りの意味合いで捉えていいのだろうか?
そんなことよりも、もっと重要なことを始めに確認しなければならなかった。
「あなたは、一体どこの誰なんですか? それにさっきの彼女は一体……。それにその衣装も」
「随分と質問が多いですね」
笑っているのか、怒っているのか、それとも何も思っていないのか。
青年が背中を向けたままだから上手く表情が読み取れない。
「そうですね、これだけは初めに言っておきましょう。私とさっきの彼女は《UNKNOWN 》です」
「……なるほど、それが魔装ってことですね」
私は青年の燕尾服を見てそう告げる。
確かに、魔装は一般的な装備とどこか違う雰囲気があった。
人々を引き寄せる魅力と遠ざける霊気的な何かを感じる。
「それで、どうなんです? 私と契約を結んでくれるのですか?」
当然、私の答えは最初から決まっていた。
「ごめんなさい。契約の内容が分からないのも一つの理由ですけど、それ以上に私はあなたを知らなさすぎる。だから契約を結ぶことはできません」
その瞬間、強烈なプレッシャーを感じたがそれは一瞬の出来事に過ぎなかった。
それから青年は一言「残念です」と告げ、スッと私の前から姿を消した。
そして青年がいなくなってから思った。
私、《UNKNOWN 》の提案をよく断れたなと。
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「——————であるからして、男は今回の虚偽報告のみならず、金銭目的のために妻子を《UNKNOWN 》と称し殺害。後に虚偽の報告したという前科がございます。再犯の恐れもあることから被告には極刑が妥当かと思われます」
手元にある資料をもとに、検察官である男は一人の老人に向けてそう告げる。
老人の名はデムナーク。白毛の髭を生やした至極一般的な老人に見えるが、この裁判における最終決定権を国から任命された裁判長である。
デムナークのスキルは『読心術』。文字通り人の心を読む能力だ。
なぜデムナークが裁判長に任命されたかはこれ以上の説明は不要だろう。
さて、今執り行われている裁判は、先ほど城門前で捕えられた男の緊急裁判である。
全ての過程をとばして行われたこの裁判、デムナークからの強い要望があって開廷された強制裁判とも言えよう。
それにしても分からないことだらけだ。なぜデムナークはこの裁判を緊急で開廷したのか。そして何より、なぜ開廷した本人がつまらなさそうに検察官たちを見つめているのか。
この場の裁判に参加している全ての人が統一して感じていることだった。
「——————全ての陳述が揃いました。では、裁判長。最終ジャッジのほどよろしくお願いいたします」
検察官の男は、デムナークにこの裁判の判断を委ねる。
そしてデムナークは、重々しい口調で言葉を放った。
「私は、数多くの人々を殺してきた。そしてそれはこれからもずっとそうだ」
一瞬、デムナークの発言をこの場にいる誰もが理解できなかった。
しかし、意味を汲み取った検察官がすぐさま口を開く。
「何をおっしゃいますか。罪深き大罪人が死を持って捌かれる。それこそが裁判長の役割ではありませんか!」
「……そうだな、それでは罪深き検察官はここで死んでもらおう」
次の瞬間、検察官の頭蓋が跡形もなく吹き飛んだ。いや、内部爆発を起こしたという表現の方が正しいだろうか。
突然すぎる出来事に茫然としている人間たちの前で、デムナークが真の姿を露わにする。
紫電の光彩が不思議な紋様を描き出した燕尾服を着こなす闇色の髪の青年。その姿はまるで——————
「もう、お前たちに用はありません。ここで死になさい」
次の瞬間、この場にいる全ての命は青年の手によって刈り取られた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
週終わりには修正作業と書き溜めをしようと思います。
引き続きよろしくお願いします。