09 契約
09 契約 更新しました。
引き続き、よろしくお願いします。
目が覚めると、そこには彼女と青年の泣き顔があった。
そうだ、私この不毛な戦いを終わらせようと戦場に割り込み——————そして、彼女の攻撃を食らったんだった。
正直、《UNKNOWN》である彼女の魔法弾を食らって生きている自分が不思議で仕方がない。
とりあえず私は、状況を確認するためにゆっくりと上体を起こした。
「どうして、どうして私たちの戦いに飛び込んできたのですか!」
「彼女の言う通りですよ! どうしてこんなことを!」
彼女たちと出会って間もないが、ここまで狼狽している二人を見るのは初めてだ。
二人を落ち着かせるため、私は緊張感のない口調で言葉を綴った。
「まあ、私もこの通り無事ですし、二人も無事なんで結果的に良かったんじゃないですか? 二人が争うことは絶対に間違っていますし、そもそも争う必要もないでしょう?」
「……はい? 何を言っているのですか? さっきまで貴女、ここで死んでいたんですよ?」
「……え?」
怒り混じりで話す彼女の言っている意味が一ミリも理解できなかった。
私が、死んでいた? いやいや、そんなことないでしょ。
身体を確かめるも、目立った外傷はどこにもない。
彼女なりのジョークなのかと一瞬思ったが、真剣な表情を見て思わず固唾を呑む。
「彼女の言う通り、先ほどまで腹部に風穴が開いている状態でした。ですが、白い光に包まれた瞬間、腹部は完全に修復されていました。その直後です、あなた様がお目覚めになられたのは」
つまり、それが私に与えられたスキルなのだろうか?
死に至っても、外傷を修復し蘇生できる、と。
一見便利な力のようで、かなり不便な力である。
使用用途が限られている以上、使い道はあまりなさそうだ。
「自己再生能力があったから良かったものの、このまま命を落としていたらどうしていたんですか!」
「すみません、命を落としたという自覚がなくて……」
「……意識を失っている間、不思議な夢でも見ませんでしたか?」
青年が唐突に妄言を口にする。
「不思議な夢ってどんな夢だよ! 抽象的すぎるわ!」とは思っても口には出さない。
「そうですね、彼女から魔法弾を食らったことを最後に自覚して、気がついたら二人の泣き顔が目の前にあったって感じですかね」
言い終えたと同時に二人から容赦なく頬を引っ張られる。これが地味に痛い。
痛みに耐えかねた私は、彼女たちの手を振り払い言葉を放つ。
「まあさっきも言いましたけど、二人が争うのは違うので、もう争いはやめてください。青年さんの唐突な行動に恐怖を感じて彼女を頼ってしまったのは間違いないですけど、これ以上の犠牲者は出したくないんです」
青年がホロッと涙を流したが、彼が一方的に悪いと思ってるのでスルーして話を続ける。
「私としては、二人とは友として仲良くありたい。そして私に魔法の使い方を教えて欲しい」
スキルが発現したとなれば、魔法も使えるようになりたいと思うのは、超能力を追い続ける者からしたら必然的な流れだ。
あとは、彼女たちの返事次第ではあるが……。
「……互いの利害は一致していると言えますね。いいでしょう。”友達”を以て契約としましょう」
「友達など恐れ多い、私は従者で十分でございます。なんせ本質は執事ですので私にはそちらの方が性に合っています」
手を差し出す彼女と胸に手を当てながら頭を下げる青年。
思っていた方向性とは大分違うが、今更水を差すようなことを言う必要もないだろう。
私は彼女の手を取り、青年には相槌にて了承の儀とした。
「とりあえず、この国にしてしまったことへの罪の償いとして私たちにできることはないでしょうか?」
「あなた様のお手を煩わせることはございません。私一人で——————」
「フフッ。私とあなたの争いを無くした意味がまるでないですね。《UNKNOWN 》が二人。その意味がお分かりでなくて?」
「そうですよ、争うんじゃなくて協力し合う。できることの幅も広がりますから」
すると青年は、ハッと何かに気がついたかのように声を出す。
「三龍神の復活、ですか」
「ええ、被害状況からして国に対しての罪滅ぼしをするのであれば、それぐらいのことはしないといけないでしょうね」
「……ん?」
私を取り残して話がよく分からない方向へと進んでいく。三龍神ってなんぞや。
そして私たちは、三龍神?が祀られているとされる西の祠へと急遽足を向けた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次話からついに異世界っぽいイベントに入ります。
今後ともよろしくお願いします。




