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逆転トリップ!  作者: ちくわ犬
一章
20/26

再会と復讐と

**少し残虐な場面があります。

カオのことを尋ねようとするも、のらりくらりと当主にかわされる。

食事を一緒にと言われ、散々こちらの情報を聞き出そうとするのにカオの情報については全く話すつもりは無いようだった。結局なんの情報も得られないまま、部屋で寝るようにと屋敷の奥へと追いやられた。


「こんなことなら琥珀に探らせていた方がましだったな。」


溜息と同時に言うと琥珀が済まなさそうにわしを見た。


「ま、仕方ないさ。寝静まったら琥珀に働いてもらおうよ。今、山田さんが居なくなったら色々誤魔化せないし。」


「……。」


そうは言っても一刻も早くカオを見つけ出さないといけない。落ち着いたふりをしていても如月だって同じ思いの筈だった。


「もう一度、地下の施設の場所を確認する。地下に居るのなら穴でも空ければよい。」


「……か、簡単に言うよねぇ。」


もう一度琥珀が作った地図と今いる場所を照らし合わせる。廊下の反響からするとこの真下に施設が有ると考えて間違いないだろう。


「外の見張りは……3人……。間違いないか?」


「間違いありません。翡翠様。」


「そ、そんなことも分かるんだ?へぇ~。」


「如月がカオの風呂を覗こうとしたのも知っていたぞ?」


「……。どうりで上手く用事が入ると思った……。」


軽口を叩きながらも如月も緊張しているようだ。無理もない。客室と言われて通されたが間違いなく我々を閉じ込めたに違いない。今のうちに逃げ道の確保を考えておく必要がある。


サトリの話では柴山が必要としているのは「長女」という存在だ。カオの他にも直系の長女が存在するなら柴山の対策にもぶれが生じるに違いない。カオの身を守るためにもカオの「長女」としてここに侵入したのは其の為だ。案の定、接触してきたのを見るとわしの思惑通りだ。カオがすんなりと柴山の言うことを聞くとは思えない。カオがダメなら、とわしを利用しようとするに違いない。しかし……柴山の長女に受け継がれる力がどのように使われるかは謎のままだ。わしがその能力が無いと怪しまれることになる。


「いざという時は琥珀、どうにかここを離れて門を開けよ。」


「承知。」


戦時中に琥珀と良く使った手だ。わしが時間を稼いで琥珀が逃げる。逃げた先に門を出してわしも逃げる。不安があるとすればこちらに来てから試す余裕がなかったことだ。


「取り敢えずは寝たふりをして夜中に様子を伺うか……。」


小さな子供がいつまでも夜更かししないだろう。外の見張りを油断させるためにも三人で眠るふりをした。例え少しの睡眠でも取って次に備えなければ。



******



……群青……


…わたしの………した……人……


……約束は……



水の中のような感覚であった。

白髪の女がわしに話しかける。群青とは父上の事なのだろうか。

女の顔は知っているのに思い出せない。

そのせいなのか顏がぼやけている。


……群青……


……




「翡翠様。」


その瞬間ぱちりと目が覚める。浅く眠っていたらしい。琥珀が心配そうにわしを伺っていた。

鈍った感覚を取り戻す様に呼吸をする。


「囲まれたらしいな。」


「どういうつもりでしょうか。」


「捕まえているとかわらん状況で有るのにな……。」


夜更けに用事があるということなのか?

とにかく寝込みを襲われるつもりもないので如月を揺り起こす。「眠れるわけないでしょ!」と言っていた割には良く寝ているな。多少盛られたか。


「……???なに?」


「如月、囲まれた。どうやら寝込みを襲いに来たらしい。」


「えっ!?」


如月が飛び起きてフラッとすると琥珀がその腕を引いて助けてやっていた。

部屋に何ものかが入ってくる気配がしたので部屋の明かりを灯した。




「おやおや、最近のおちびちゃんはこんな夜中までおきているのかしら。」


当主の女が少し目を細めてわしたちを見て言った。背後には5人ほど人相が悪いのが居る。左右の襖からも4、5人……全部で15人ほどだろうか。3人捕まえるのに大がかりなものだ。


「寝込にご訪問とは。何用だ?」


琥珀がわしの代わりに応対する。女はわしのことをじっとりと眺めている。


「そのの能力を確かめたいだけよ。大人しくついてきたら何も危害は加えないわ。」


何を、と思う。生け捕りとしか思えない状況でそんなことを言う。琥珀がわしを隠す様に立つ。遅れて如月も庇う様にそれに従った。しかし、この場合は囲まれているのでな。そっと二人に背中を向けて臨戦態勢をとる。わしの意図をくみ取った琥珀が三角形を作るように少し体をずらした。この幼児体型で捌き切れるかは多少不安だが、琥珀を剣に戻せば何とかなるかもしれない。そう思って腹に力を込めると一人の男がわしに向かってきた。



「小手返し!!」



その声の主は簡単にわしの体を動かしてしまう。


ドスン!


なるほど、コツさえ掴んでいれば小さな体でも十分に相手の力だけで避けるくらいは出来るものだな。

妙に落ち着いて投げた男を見た。しかしその視線をくれてやるのも今は惜しい。すぐさま一番会いたかった人物を目で捉えて走る。


「カオ!!」


そこは無音の世界で。


その瞬間わしの世界にはカオしか居なかった。


ただ、愛しくてその体を掻き抱くとカオからも強く抱き返された。


「カオは、わしが守る。」


自然と言葉が漏れる。


「では、わたしはヒスイを守ろう。」


帰ってきた言葉はどんな女子おなごからも聞いたこともない言葉。カオらしいと思った。すると、パチパチと手を叩くものがいる。





「親子の感動の再開だなぁ。」




その声にカオがびくりとする。この男は危険だとその愛しい体が全身で訴えていた。


「どうやってあそこから出たってんだ?お仕置きが必要だな?」


男は威嚇するように力任せに襖を叩いた。


バリ


音を立てる襖に穴が開く。カオに手出しをしていたとしたら……わしは確実にこの男の息の根を止める。


「ヒサノ。この二人を捕まえて地下に押し込んどけ!」


今度は女がびくりと体を揺らした。女当主に命令できる立場らしい男が戦火で自分の為に強奪を繰り返す薄汚い輩と重なった。


「高瀬は、柴山の未来など知らないと言った。能力のある私の夫になれればいいのだと。」


「なっ!!」


カオが女を煽るように言う。女の顔は蒼白だ。

しかし、わしのカオの夫とは捨て置けない言葉だ。


「まったく、一筋縄にはいかねぇな!捕まえろ!」


男の声で控えていた男たちがこちらへ向かってくる。上手い具合にカオとわしの周りには空間が出来ていた。わしを庇おうとするカオの袖を引いて告げる。


「カオ、この下に空洞がある。穴をあけるから身を伏せてくれ。」


ドスン


指で「空」と床に描く。うまい具合に溝が出来て行った。


「おい、なんだ?何をした? ヒサノ!なんだ、あの力は!?」


「……。」


男と女当主が驚いた様子でこちらを見ている。カオもさぞかし驚いただろうと横目で伺ったが、意外にも驚くより先に目の前の二人を挑発し始めた。


「璃音は赤井と逃げたぞ。」


女当主が眉間にしわを寄せた。


「その男が自分の娘を犯していたのを知っていたのか?」


止めを刺すのようなカオの声。


「まさか……。」


女当主が不信感を男にぶつける。カオは仲たがいをさせるつもりなのだろう。カオの思惑通りに二人の間に不穏の空気が纏い始める。その時、八つ当たりとしか取れない言葉を男がカオに吐き捨てたがわしは足元からくる異様な感覚に気持ちを取られていた。



******



なにか、


来る。


とんでもない気が足元からあふれ出て来ていた。


これは!


「翡翠さま!」


琥珀の声が聞こえる。


「琥珀!?この、気は……。」


「龍です!龍神が居ます!」


その声がわしの考えを肯定する。神の国の龍が、ここに!?

その渦巻く気は一点に抑えつけられているように渦を巻いていた。竜巻のような中に岩が見える。


「岩を、岩を砕いて!」


カオが隣で叫んでた。


……カオ?


頭が回らないうちに己の指が動く。わしをこんなにも操るのはカオだけだ!

「砕」と描くと岩が砕け散る。その下には光り輝く玉が光っていた。


あれは、龍魂……。


見たことはない、龍の持つ魂の秘宝。そんなものが、なぜ!?


その時大きく世界が揺れた。


地鳴りが響き、地面は隆起し始める。


ふと見ると隣でカオが頭を抱えていた。どうしたのだ?カオ!


「大丈夫か!?カオ!?」


「……じょ……う。」


「カオ!?」


カオは真っ青だった。頭を抱えたまま目が虚ろになっている。カオを支えようと手をかけるとカオがゆらりと立ち上がった。じっとカオが見つめる先には琥珀が居た。


「群青……私を助けに来てくれたのね……。」


カオの目から涙がこぼれた。カオの体からはビリビリと龍の波動が感じられる。


驚いていた琥珀はカオに近づく様に溝の向こうに立った。


「もしや、貴方は……黄白華おうはくか様で有らせられる……。」


こくりとカオが頷く。

すると琥珀がオイオイと大声で泣き始めた。いきなりの出来事に周りにいる者たちは呆けた顔をしていた。どうやらカオは黄白華様という龍神に乗り移られているようだ。


「黄白華様!御傍に居るのが翡翠様です!」


その声でカオの体を借りた黄白華様と呼ばれた龍神がわしを見据えた。何とも言えない微笑がわしを包む。


「翡翠……。群青は約束通りにお前を翡翠と名付けてくれたのね。」


「……?」


わしが問うよりも先に包むように抱きしめられる。


「ああ。私の愛し子……翡翠……。群青、ありがとう。約束を守ってくれて。」


「もしや……。」


「翡翠様……黄白華様は翡翠様の実のお母上様です。」


「は……母……?」


「ああ。お前の顔立ちは私の幼いころに似ている。髪の色は群青譲りね。ありがとう……群青。」


わしは龍神に体を乗っ取られたカオに抱きしめられながら大いに混乱していた。この龍神が、私の母だというのだろうか。母の記憶がないわしにそれを確かめることはできない。仮に母だとして人と神が結ばれることが有るのだろうか。



「な、何をゴチャゴチャ言ってやがる!」



その声でわしを抱きしめていた腕が解かれた。


「お前……。」


カオの体から恐ろしいほどの怒気が湧きあがる。


「お前たちがしたこと。後悔するがいい。」


背筋が凍るような声だった。


「な、なんだ?」


「そ、そんな……。」


当主は事態に気づいているらしい。ガタガタと震えながらこちらを見ていた。


「柴山……お前たちに罰を。わたしをここに長き間閉じ込めた呪いを。巫女の力を持つその血に裁きを。」


地を這うような冷たく恐ろしい声で龍神が告げると当主が苦しみ始めた。


「ウギィイイ!!ハ、ハッ……グアァアアッ!」


「ひ、ヒサノ!?」


当主が自分の体を抱えるように蹲った。


「ゆ……ゆるし……て……。」


見る間にしわが刻まれるその顔を龍神が冷めた顔で見た。


「今更請うても遅い。」


「グググッ……!」


ドサリ……


とうとう崩れ落ちた当主の姿は……ミイラの様だった。



パン



パン!


次の瞬間、乾いた音が響いた。その先にはガタガタと震えた男が立っていた。

男は龍神に向けて飛び道具を放ったようだったが、龍神は造作もないことの様にそれを跳ね返していた。


「ば、バケモノ!」


その言葉に龍神はピクリと反応する。


「……バケモノとは……お前たちの方であろう?神であるわたしを閉じ込めて、利用した。……お前も…

…その女と死ぬがいい。」


「ヒィイイ!!」


男は逃げようと部屋の向こうを目指したが途中で当主と同じようにミイラとなってその場に落ちた。

その様子を見ていた他の男たちは皆散り散りになって逃げだした。




「翡翠……。」


収まりがついたと感じたのか龍神が落ち着きを取り戻した声でわしを呼んだ。


「わたしにもっと顔を見せておくれ……かわいそうに右目を失ったのね……。」


「は……母上……なの……か?」


「ああ。」


感嘆の声ともとれる声を発してわしを抱きしめると龍神は琥珀を見た。


「私はもう実体がないのです。……群青……最後に会えてよかった……。貴方を愛したこと……この子を産んだことを後悔してはいません……。」


「黄白華様!群青もあなたを生涯愛し続けます!」


「ああ。うれしい……。翡翠……わたしの翡翠……。でも、もう……」


「は……母上……?」


「お前は幸せに……。」


そう言うと龍神は一瞬カオの体を輝かせてから消えた。ドサリとカオが倒れるのを何とかわしは支える。



どうか……元気で……群青……


ありがとう………


不思議な光がふわふわと舞った。優しく……神々しい光。


声が……声だけが部屋にこだました。


光はやがてカオが倒れているところで一旦止まった。


……柴山の巫女……


……お前にも呪いを……そう……愛するものと結ばれれば相手を死す呪いを……


その声でわしは我に返る。「巫女」とは、カオの事か!?


「待て!」


……さよなら……


……わたしの……愛し子……


わしの制止も聞かずに光は消えていった。

脱力したわしが溝の下に見たものはチカチカと光る龍魂の玉だった……。


「逆転トリップ!」も次回で1章終わりです。

ここまで読んで頂いてありがとうございます!

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