第49話 わからない事だらけ
「どうやって? だってあんなに馬車で連れ回されてしかも途中で眠らされて、気づいたらこのようなところに寝転がされていたんだよ? もしかしたら他国に連れて来られたかもしれないじゃないか」
そんな短時間で国外への移動は出来ませんが、対応に差があったようね。やはり女という事で私達は侮られていた。
あの連中にとっての脅威はローシュ様の護衛しかいないという事かしら。眠らされ剣も奪われ一番拘束が酷い。
一方の私達は身体検査もなく、腕を縛られたくらい。つまりそこまで厳重に見張る必要はないという事ね。随分舐められたものだわ。
「そうおっしゃるならば私達で脱出を試みましょう。ローシュ様もぜひお力を貸してくださいね」
「いや、僕にはそんな力は……」
「よろしくお願いします」
にっこりと言ってそれ以上の言葉は遮る。
多少痛い目に合うもかもしれませんが、助けなんて来ないと後ろ向きになるのではなく、もう少し自らで切り開く努力を見せて欲しいわ。
不満そうな表情をしているけれど、わざわざ話しかけてグダグダとした泣き言は聞きたくない。
いざとなれば切り捨てればいいだろうけれど、中途半端に生き残って見殺しにされたと証言をされるのは嫌なので一緒に連れて行ってはあげよう。
まぁどんな危険があるかもしれないから、最後までの保証は出来ないけれど。
そういうわけで改めて戦力の確認をする。
「あなた、どれくらい戦えるの?」
寡黙なローシュの護衛に声を掛けるとようやく少しだけ顔を上げてくれた。
見た事あるような……でも思い出せない。
う~ん、頭を打ってから記憶力が落ちたのかしら。戻ったらもう一度医師に診てもらった方がいいかも。
「……そこそこです。一応王族の護衛なので」
ぼそぼそと話す声は低い上に小さく、また下を向いたため酷く聞き取りづらくなる。
「もっとはきはきと答えては? エカテリーナ様に失礼ですよ」
ポエットの怒声が上がるが、それでも顔は下を向いている。
「俺が従うのは主の言葉だけでして、すみません」
つまり従うのはローシュ様の言葉って事?
主に忠実なのは悪い事ではないけれど、もやっとするわね。
「ポエットは彼の事を知らないの?」
王城にいたポエットならある程度は知っているのではないかしら。
「申し訳ありません。フェイ、という名だけしか聞いておらず。リヴィオが解任された後に来たそうなのですが、経歴や身分など私は何も知らないのです。それまでは城に居たのかも定かではなくて……」
???
それもまた妙な事よ。一体どういう事なのかしら。
身元も何もわからないって何? 例え新人だとしても、身元がしっかりしていないと王城勤めになんてなれないはずよ。
「ローシュ様なら彼の事を詳しくご存じなのでは?」
仕方なしに話しかけるが、彼も肩をすくめるだけだ。
「僕も詳しくは知らないよ。あれから物騒なこともなかったし、腕前を見るような事件も起きなかった。父様がつけてくれたのだけれど、ここまで使えない者とは思わなかったな。次はもっと強い者にしてもらう」
やや怒り気味のローシュ様だが、結局何も知らないという事か。
でも陛下がつけたのならば身元はしっかりしているはずよね? 形だけ、なんてないはず。
(それともローシュ様を切り捨てにかかった為に、わざとこのような者をつけたの?)
わざと弱く切り捨てやすい護衛をつけて、こうして暗殺させやすくしたのかしら。
いやいやまさか。みすみすローシュ様を賊に殺させるなんて、王家の力が弱いと周囲に誇示するだけだ。あり得ない。
(それに私達は再度襲撃が来るかもしれないと、カルロス様から忠告を受けていたもの。それなのにローシュ様の命を奪おうとするような真似をするわけがない)
分からない事だらけだわ。
子爵家の反乱かと思ったら、そこの子息も捕らえられているし、警備が厳重にされているだろうと思ったローシュ様はこうしてあっさりと捕まっている。
そして戦えるかもわからない、敵にあっさりと捕まった護衛。
わざわざこんなところに飛び込んだというのに疑問の方が多くなってしまったわ。
(とりあえず、ここに連れて来られた理由くらいは知って帰りたいわ)
身内? の謎は置いておいて、誘拐の理由は知りたい。
それを知っていそうなのはラウドなのだけれど、彼は口を閉ざしたままだ。
一体彼は何を画策したのだろう。
(早く誰か、話が出来る人が来てくれないかしら)
このままでは何も進展がない。
悶々としているそんな中、ノックの音が部屋に響き、皆に緊張感が走った。
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