第13話 教室で
教室に入ると視線が一気に押し寄せてきた。
記憶を失っていると皆も知っているから当然だろうけど、好奇と奇異の目が入り混じっている。
先に教室についたローシュは周囲の者と話をしていたが、私の方に目もくれず、全く面倒を見る気はなさそうだ。
だが、この辺りも後でまとめて王家に報告させてもらおう。
「エカテリーナ様の席はこちらです」
一番後ろの席へと案内された。
「以前はローシュ様の隣でしたが、今は記憶がない為にまずは学園の雰囲気に慣れるようにとの配慮です。本日は見学となりますのでこちらへどうぞ」
ぽつんと座るが何だか場違い感が否めない。
周囲の声もひそひそと聞こえてくる。
「本当に授業を受けられるのか? 何も覚えていないならば、もっと下のクラスから始めたほうがいいのでは」
「以前のエカテリーナ様とは雰囲気がまるで違う。ローシュ様の事も覚えていなかったし、今後もここに通うのだろうか?」
心配されてるのか貶されているのか。
ローシュが私を見ないし、何も説明しないから、周囲は言いたい放題だ。
本当に私は記憶を失っているわけではないので、この状況は腹立たしい。
ローシュが私をいないものとして扱い間を取り持たないから、周囲は私をどう扱っていいのかわからず、教室内に困惑の空気が流れているのに。
いっそ記憶を取り戻したという事にしようかと思う時もあるが、そうしたらローシュはまた私に全てを任せるようになり、ますます動かない人間になるだろう。婚約だって解消出来ず、ずるずると依存されるのは目に見えている。
(もっと主体性を持って、周囲の空気を察して!)
そう進言出来ないのが悩ましい。
ローシュの新しい側近は明らかに私を嫌ってるようで、近づけそうにない。
忠臣ならば、ローシュに進言の一つや二つをしてちょうだいなと心の中で必死に嘆願するのだが、思いは当然届かない。
そんな感じでヤキモキしていると、リヴィオの方が私の不安を感じてくれたようだ。
「失礼します、エカテリーナ様」
ガタガタと椅子を動かして、リヴィオが私の隣に来てくれる。
「少しでもお力になりたいと思いまして。何かあればいつでも俺に聞いてください」
「ありがとう、リヴィオ」
気遣いがとても嬉しい。
「あなた様はローシュ様の婚約者なのですから当然です」
ローシュに聞かせるように言ったのでしょうけど、とても胸が痛む言葉だ。
(主の婚約者を支えることは、ひいては主を助けることになるけれど)
どことなく胸の奥がざわざわして、不快になってしまう。
義務だけでリヴィオが私を助けてくれてるとは、思いたくない。
(少しは私に好意を持ってくれているのだと願っているわ)
乞うような期待するような視線を送るが、リヴィオは気づいてくれない。




