~男子の苦手なもの~
~男子の苦手なもの~
なんとか黒い魔物を撃退して、僕たちは林を抜け、ひらけた草原地帯を進んでいる。
「ここは周りが良く見えるから外敵も早めに見つけらるわ」
タミーが周囲を見渡しながらアルに話しかけてる、まだアルのことが心配な様子、しかし、アルはまだなんとなくいつもと違うテンションだ、そんなアルが僕も心配になったので、声をかけてみた。
「アル、こんなに見晴らしがいいところなら魔物も襲ってこないよ」
「えっ、あぁ、そうだね・・」
「?」
僕に返事はしてくれたアルだけど、顔は真っ赤だし、どうも様子がおかしい。
するとエレーナが僕を呼んだ。
「ユウト、ちょっと」
「なにエレーナ?」
「ちょっとこっちに来てください」
エレーナは僕をアルとタミーから少し離して、
「今のアルはさっきの魔物の襲撃のときにユウトにされたことがショックなんです、だからしばらくアルはそっとしておいてあげて下さい」
「ショックってなんか悪いことしたかな?」
「いえ、悪いことどころか嬉しいことかもしれないですが、今のアルはまだ素直に認められないんです、少し待ってあげて下さい」
「嬉しいことなら喜んでくれていいんだけどなぁ、う~ん分からない!」
「ウフフ、やっぱりユウトは男の子ですね」
「???」
僕はエレーナからアルをそっとしておくよう言われたので、しばらくアルには近づかないように注意しながら進んでいた、そしたら今度はタミーが不思議がって、
「ユウト、なんか変じゃない? なんでそんなに後ろに下がってるのかしら?」
「いっ、いやぁ、これはその・・」
僕がそこまで言ったところでアルが遮ってきた。
「ユウト、さっきはありがとうね、ユウトのお陰で助かったよ・・」
アルの顔がさっきまでとはまるで違う、真っ赤なのは変わらないし、目がこっちを見てなくって下を向いてる、でもなんとなくアルのテンションが戻ってきたようだ。
「ユウト、やっぱり男の子がいると楽しいねっ! ウフッ」
「アル~、やっといつものアルに戻ってくれたんだネ!!」
「はい! ぜ~んぶユウトのせいだからね、責任とってもらうから覚悟してヨ!」
アルはそう言いながら前に向き直しながら責任とか言ってきた。
「えっ! 責任~っ!? 何の??」
「さぁ、何の責任かしらねぇ、フフ」
アルの意味不明の言動に不安を煽りまくられてる僕をエレーナとタミーは薄ら笑いを浮かべながら楽しんでるようだ。
「良かったですねユウト、アルの気分が戻ったようです」
「さぁ、トレンスの町へ急ぎましょう、グズグズしてるとすぐに陽が沈んでしまうわ」
タミーがその場の空気感を変えようと先を急ごうと言ってくれた。
まぁそれ自体は悪くはないことなんだけど、そのタミーが僕のほうを見つめながら怪しい笑みだったのが気になった・・
「ん?・・まぁ気にしすぎかな・・」