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~再会~

~再会~


 僕の手が「それ」の手に触れた瞬間、僕の頭の中に僕がこの世界に来た直前の景色が拡がった。

 そうだ、僕は薫と一緒にいたとき、事故に合ったんだ、そして僕は重症を負って意識が回復しないままで、こっちに召喚されたんだ。

 そのとき一緒にいた彼女の薫がこのカオルと名乗ってる「それ」だったのだ、カオルの手から僕の手へ走馬灯のようにそのときからその後の景色まで、一気に僕の頭の中へ流れ込んできた。

 薫は僕とふたりでいるところを事故にあい、僕と共に病院へ救急搬送された・・しかし、薫のケガは大きくて、事故の数時間後、救命処置の甲斐もなく、その目を再び開けることはなかった・・・。

 そこまでの景色が僕の頭の中で流れると、その先をカオル本人が話始めた。

「私は裕翔のことが心配でならなかった、でも、私の身体はもう動かない、私の命は肉体を離れなければならなくなった、でも、私は必死にそれに抗った、すると私の命は天界には向かわず、この世界に迷い込んでしまっていた」

「この世界に迷い込んだ? それじゃあ、まさか、君は邪魂に?・・・」

「私はこの世界でずっとあなたを探していた、この世界にいれば必ず裕翔に会えると信じていた・・・」

 そこまで聞いて僕は僕自身の行動が原因で薫が死んで更に邪魂になってしまったのだと知って、今までで最も強く後悔と自責の念に駈られていた。

 そうか、だから今回の異変は邪魂じゃないような感じだったんだ、もし、普通の事件ならもっと悪事をしてるはずだけど、この一件ではまったく被害のような報告はなかった。

 それは、ただ薫が僕を探してるだけだったからだ。

「薫、キミはいま自分がどんな状況か理解しているの?」

「知ってるわ、本来この世界は私のような魂はいてはいけない場所、でも、私はもう一度裕翔に会いたくてここにいたの・・」

「そうだったの・・・ゴメン、僕のせいで薫がこんなつらいことになってしまってたなんて・・・」

 そんな僕と薫の会話を後ろで聞いていたエレーナが僕の横に来て薫に対して言葉を掛けた。

「カオルさん、あなたのユウトに対する気持ちはほんとうに純粋だったのですね、その純粋さがあったから、この世界に来れたのです、ですからあなたは他の邪魂たちとは違うはずです」

 そのエレーナの言葉に薫の目から涙のようなものが落ちたのが見えた。

「えっ、エレーナそれって薫は冥府へ送らなくていいかもしれないってこと?」

「はい、でもその確定は本宮でないとできません、しかし、今すぐに排除しなければいけない存在でもないようですし、しばらく一緒に行動するというのはいかがでしょう?」

 やった! 薫に悪意がないことをエレーナは判ってくれたんだ!

 それなら薫は邪魂として退治されないで、もしかしたら一緒に行動してるうちに僕たちのチームに入ることもできるかも・・・。

 僕はやや自分に都合のいい解釈をしてニヤっとしてしまった。

 でも、その展開に気づき猛然と反論してきたタミーとアルだった。

「えぇ~ッ! 邪魂と一緒に行動するの!? そんなの聞いてないよ~っ!!」

「そんなのいい訳ないわ! エレーナも本気じゃないでしょうね?」

 アルは超絶驚き、タミーに至ってはマジもんで怒ってるようだ。

「いいえ、二人とも不安なのは判ります、しかし、ここにいるカオルと名乗る者はユウトの彼女のようですし、悪人ではないようです、私は同行することは私たちにもメリットがあると思いますよ」

「ちょっ! ちょっと待って! ユウトの彼女って何よっ! 元彼女でしょ! モ~ト!!」

「そうだよっ! 人間界では彼女だったかもだけど、ここでは違うでしょ!! ココ大事だよッ!!」

 エレーナの提案に対し、二人の難色を示してるホントのポイントって彼女って部分なようで、邪魂を連れて歩くって部分じゃないのか・・・女心ってマジ判らん!

「それはユウトとカオルが解決というか、カオルは実体の無い存在ですから、この世界では問題にならないのではないでしょうか?」

 おっ! さすがエレーナ、冷静な論理的思考でふたりを納得させる作戦か、ふたりの様子はどうかな・・・

「確かにそうだけど、でも、メンタルの部分は別だと思うわ、今もそのカオルっていう娘もユウトを想ってるわけだし・・・」

「そうだよ、アルだってユウトを想ってるよ! これは誰にも負けないんだからっ!」

 う~ん、やっぱり簡単にはいかないようだ・・・

「まぁまぁ二人とも、冷静になってよ、薫は僕の友達だった女の子で彼女だった訳じゃないんだよ、そこ誤解してるみたいだよ、へへへ」

 やむを得ず僕は事実をやや曲げて伝えてみた。

「エッ!? そうなの? だったら同行してもいいわよ、許してあげるわ」

 タミーは僕の彼女じゃないという言葉に、態度を一変! タミーは意外と騙しやすい性格だったんだ、良かった^^。

 しかし、アルのほうはその軽いノリとは違って、彼女じゃないという言葉も疑ってるみたいで、

「ほんと~、ユウト、うそじゃないの~?」

「いや、いや、ホントだって、アル~信じてよ、アハハ」

 僕はアルの眼差しに冷や汗ダラダラ。

「まぁ、いいよ、一応ユウトの言葉を信じてあげる、でも、もしイチャイチャしたりしたら、その女、タダじゃ済まないんだからっ!」

「あぁ、分かったよ・・・」

 ひ~怖い怖い、女子ってこういうことはメチャ怖いんだよね。

 でも、まぁこれで薫を一緒に連れて行けることになったし、僕にとってはいい方向に決着したといっていい。

 タミーとアルはややご機嫌ななめなようだけど、エレーナはいつもと変らず淡々としている・・・

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