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~鍛冶職人ワイチ~

 ~鍛冶職人ワイチ~


 さっそくワイチさんは僕とアルの剣を見て、ほんのちょっと首をかしげて奥の工房へ入っていった。

 リビングと工房は簡単なカーテンのようなもので仕切ってあるだけ、そのカーテンをくくぐるとその先は想像を遥かに超えた景色だった。

 ワイチさんの家の外観は普通の村人が住んでそうな平屋で木とレンガのようなもので出来ていて、中のリビングはフローリングっぽい床に座布団があり、部屋の真ん中にいろりがある、いたって普通の民家だけど、カーテン一枚で仕切ってある工房は100人中100人驚く光景があった。

 そこはまるで占い師の館とでも言うのか、はたまた近未来志向のアーティストが住んでるのかといった風情の部屋だった。

 いろいろな色の間接照明的な灯りが隅々に置いてあったり、なにやらイイ匂いのするお香? も焚かれてるみたいで、ワイチさんの年恰好からはちょっと想像がつかないエキセントリックな空間、そこがワイチさんの工房だった。

「うわぁ~、スゴイ部屋ですね」

 僕は思わず感じたままを口にしてしまった、それはいつものことらしくワイチさんは笑って、

「そうじゃろぅ、今までわしの工房に来てなにも感じないヤツなど一人もおらん、ユウトとやら、喜べ、おまえの感性が一般的でノーマルという証明じゃ」

 そしたらタミーとアルもその光景に驚いて、

「わぁ~、なにこの部屋? アルもこんな部屋欲しいッ!」

「すごいわぁ~、ワイチさんイイセンス持ってますわね、ウフフ」

 女子にはおおむね好感触な工房に、ワイチさんはまんざらでもない様子で、その後終始ニコニコ上機嫌だった・・。

「それじゃ、とっとと始めるか、まずユウトとやらの剣からじゃ」

 そう言うとワイチさんは僕の剣を手に取ると、ちょっと変った柄の手袋で刃の部分を撫で始めた。

 そしてエレーナがするような詠唱をはじめた。

「ワイチさんもエレーナのような術使いなのかな?」

 僕は小声でエレーナに聞いてみた。

「私たちとは違いますが、ワイチさんのような特殊な鍛冶職人はあの詠唱で高次の力を呼び寄せるのです」

「呼び寄せる?」

「はい、でも私たちもそこまでしか知りません、それ以上はだれも知らないのです」

「秘密中の秘密ってことか・・・」

 まぁ僕的にはどんな仕組みでも剣が強くなってくれさえすればそれでいい。

 そのあともワイチさんは手袋で剣の刃を撫で続けていると、徐々に撫でられてる刃から蛍の光のような輝きが放たれ始めるのが見えた。

「光はじめた・・」

 その光はキラキラと輝く透明感のある青い光で、段々と剣全体に光が拡がって、その輝きは目を開けてられないくらいに強くなって数秒輝き続け、そして消えた・・。

「?」

「消えちゃったの?」

 アルもその光景に呆然としている。

「終わったぞ、これでこの剣の持つ力は数倍になってるはず、次の戦いでは今まで以上に活躍してくれるはずじゃ」

「力が数倍?」

「そうじゃ、当然、それを使いこなすにもそれ相応の精神力が必要となる、ユウトとやら、心して使えよ、そしてエレーナを助けてやってくれ」

「はい! ありがとうございます、全力でエレーナをサポートします」

「全力では足りぬっ! それ以上のパワーを示せッ!!」

「は、はい!!」

「ウン、それでよい・・」

 いやぁ、ワイチさんの言葉の圧に負けた感じだったけど、ワイチさんの言うとおり、僕は自分の力以上のことをしないとエレーナは守れない、ワイチさんはその覚悟をさせてくれた、感謝しよう。

「では、次のキャットピープルの剣を」

 アルは自分の剣をワイチさんに渡す、そのときのアルの手はけっこう震えてるのがわかった、アルは僕とワイチさんのやり取りを見て、その威圧感にビビったらしい。

「お、お願いします・・」

 アルが恐々剣を渡すとワイチさんは笑いながら、

「そんなに怖がらなくていい、ワシは怖いジジイではないぞい、ハッハハ」

「ハハハ」

 怖くないと言われてもアルはやっぱりビビりぎみで、一応顔では笑ってみせたけど、その顔はひきつっていて妙な笑い顔だった^^。

「アル、声が震えてるわよ、ウフフ」

 側で見ていたタミーが茶化すように笑って言った。

「タミーとやら、ワシはそのノリ好きじゃ、あとで居酒屋で飲もう!」

「あら、ワイチさんに誘われちゃったわ、エレーナどうしましょう、私ホントにワイチさんとご一緒しちゃうかもよ、ウフッ」

 そんな悪乗り絶好調のタミーに、ワイチさんが上手いこと合わせて更に混沌状態に

・・・

「おうタミー! そんじゃこれ早く終わらせて、町に繰り出すぞい!」

「お仕事のあとは何をしてもけっこうですけど、アルの剣をしっかり鍛えて下さいね」

 横で見ていたエレーナが、やや怖めの顔つきでタミーとワイチさんの悪乗りに釘を刺すようにグサりと一言・・・

 その一言でワイチさんがマジ顔に戻って、

「い、いやぁエレーナ、大丈夫じゃよ、この剣もしっかり強いモノのしてやるぞ」

 その後、ワイチさんが僕の剣にしたことと同じことをアルの剣にも施術して終了、自分の剣がワイチさんの詠唱術で強くなったとアルは飛び跳ねて喜んでいる。

「アルとやらよ、その剣は確実に強くなった、しかしな、その剣はお前さんの気持ち次第で善にも悪にもなる、気持ちを強く持てよ、いいな?」

「あ、はい! アルはいままで以上にしっかり強い女の子になります! へへへ」

「ホントになれるか、心配じゃ・・」

 今のアルの決意表明的な言葉、僕からすると、アルにしてはかなり真剣で頑張ったコメントだと思った、けど・・最後に笑っちゃったのは余計だったよね、まぁそこがアルらしさってことかもネ。

 「ワイチさん、ありがとうございました、ユウトとアルの剣は私たちにより強い力となってくれるでしょう」

「うむ、お前さんたちの前途の無事を祈っておるぞ」

「ところで、タミーを連れて町に繰り出すという件はどうしますか? 私には拒否権はありませんので、お二人で決めて頂いてけっこうですが?」

 いやぁ、そこは触れずにスルーするところじゃないっすかエレーナさん・・

 エレーナって変なところ、真面目というか真っ正直なところがあって、微妙に扱い注意な女子だよね。

「アハハ、あれは冗談じゃよエレーナ、おまえさんは冗談が判るようにならんといかんな、ハハハ」

 そうして、僕たちはワイチさんの工房を後にして、町へ戻った・・・

鍛冶屋のワイチさんですが、この名前、わたしの知り合いの人の

名前なんです、勝手に使っちゃいました、ワイチさん怒ってないかな~・・


皆さま、今話もよろしくお願いします!!


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