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~エレーナの優しさ~

 ~エレーナの優しさ~


「朝まではあまり時間は無いですが、明日もやらなければならないことがありますし、少しでも寝ておいたほうがイイですから、皆さん寝ることにしましょう」

 そう言ってエレーナは灯りを消し窓のカーテンを閉め、自分はソファーに腰かけ仮眠だけにするつもりらしいかった。

「エレーナは寝ないの?」

「えぇ、私は仮眠だけにして不測の事態に備えたいと思います」

 自分も疲れてるはずなのに、タミーとアルを眠らせようとしてる!

「それじゃ僕も仮眠だけにするよ、エレーナだけ仮眠にさせておいて僕が寝る訳にはいかないよ! 男としてそれは断じてできない!」

 僕は妙な男気を炸裂させてエレーナに言った。

 するとエレーナはニコっとして、座ったソファーに僕を誘うようなしぐさをしながら。

「そうですか、やはりユウトは優しいのですね、では一緒にこのソファーで休みましょう」

 それは一人用のソファー、でもエレーナは少し横にずれて僕が座れるスペースを作って、どうぞという感じに自分の脇の空間に僕を招いた。

 僕は誘われるままエレーナの脇の空間に腰を下ろした。

そこはひとり分には少々狭い空間だけど、好き同士の男女ならちょうどイイ具合に密着できる空間になっている。

「ち、ちょっと狭いね・・やっぱり二人はキビシイかな?・・・」

 僕は心臓バクバク、背中に冷や汗をびっしりかきまくりながら、ピッタリ横に密着してるエレーナに言うと、エレーナはそんな僕に対して、

「そうですか、私はユウトの体温を感じられるこの密着感、とてもイイ気持ちですよ」

「そ、そう、それは良かった、ハハハ・・・」

 いやぁ、確かに僕もエレーナの身体のイイ香りをこんなにもダイレクトに感じるなんて、もう夢心地なんだけど、いつまで正気でいらえるか自信がないよぉ・・・。

 それに、こんな状況じゃ心臓バックバクでとても寝れる気がしないよッ。

 と思って朝まで寝れないなと覚悟してたんだけど、いつの間にか意識が朦朧としてきた。

「あれぇ~変だな・・目がショボショボしてきた・・・エレーナのイイ香りが気持ちイイなぁ~・・・」


 エレーナの脇でピッタリくっついて仮眠どころではないハズだったんだけど、気が付くと朝になっていて、カーテンの隙間から朝の陽の光が部屋を照らすなか、僕だけがひとりソファーで眠りこけていた。

「えっ?! あ、朝っ! みんなは??」

 シャワールームのほうからタミーとアルの声が聞こえてきてる。

「うわぁ、僕寝ちゃってたのか、エレーナを守るつもりでいたのに、まったくダメだなぁ・・・」

 僕が自身の不甲斐なさにガッカリし、ソファーで頭を抱えているとエレーナが外から戻ってきた。

「あら、ユウト、起きたのですね、おはようございます」

 エレーナは僕が寝てしまっていたことなど、まったく気にしてない様子、でも、僕のほうはすまない気持ちでいっぱいなんだ。

「あのぅ、エレーナゴメン、僕寝ちゃってた・・」

「夜だったのです、寝るのは当たり前です、別に謝ることではありませんよユウト」

 エレーナは僕が寝てしまったことは当たり前と言ってくれた、しかし・・。

「でも、僕は男だし、女子のエレーナを守りたいんだよッ、それなのに・・ホントにゴメン・・・」

「その気持ちだけで十分です、私は巫神、ユウトは人種、巫神と人種の差は埋められないものなのです。でも、私は確信しています、いつかユウトは私を超える勇者になれるでしょう、私はその日を待っているのですよ」

 そう言ってエレーナは笑う、僕はエレーナの期待通りの勇者になれんだろうか?・・・正直言ってその自信は無い・・でも、エレーナはもちろんタミーやアルのためにもなれるよう努力しようと思う!。

 タミーとアルがシャワールームから戻ってきた。

「あぁ、エレーナ戻ってたんだね、朝食は宿の食堂でいいよね?」

「おはようユウト、ユウトったらエレーナにもたれ掛かって気持ちよさそうに寝てたわよ、もう! そういうのは私がしてあげたいのにッ」

 ふたりはニコニコしていて、眠り込んでいたことでややブルーな気分の僕とは対照的だ。

 そんな僕のことをタミーは鋭く感づいたようで、僕の側へ寄ってきて。

「ユウト、あなたは悪くないわ、これからの若者よ、昨日のことは気にしないでいいのよ」

 そう言いながら、なんと僕の右頬にキスしてきた!。

「えぇッ!?」

 それを見ていたアルが、タミーの大胆行動に目を丸くして。

「「キャ~ッ! なにしてんのよタミーッ!!!」」」

 と言って僕とタミーの間に割って入って、無理やりタミーを僕から引き離し、ものすごい目つきとしっぽの羽毛をパンパンに膨らませてタミーを威嚇しはじめた。

 するとタミーも負けじと、

「あら、アルったらヤキモチかしら? でもねアル、こういったことは先にしちゃったもん勝ちなのよ、覚えておきなさい、フフフ」

 タミーも結構いじわるなことを言うもんだ、女子同士って怖い・・・。

「うゎ~ん、エレーナァ~、タミーがいじめるぅ~」

 タミーにきつめの言葉を言われて、さすがのアルも我慢の限界を超えてしまったようで、泣き始めて助けを求めるようにエレーナに抱きついちゃった。

「あらら、タミーも言い過ぎだよ・・」

 泣いてエレーナに抱きついてるアルを見てタミーもあらあらという感じのゼスチャーをしながら、

「しょうがないわね、ユウトちょっとでいいからアルを抱きしめてあげれば?」

 と、僕へ振ってきた。

「なんでそうなるんだよタミー」

「だってアルはユウトが好きなのよ、こんなとき、好きなユウトに優しくしてもえれば、アルの機嫌は良くなると思うわ、女心なんてそんなものなのよ、ウフ」

「タミーって結構悪女かもね」

「アル、こっちおいで・・」

 僕はタミーに言われたとおり、アルに声を掛けてアルの身体を抱きしめてやった。

 アルは顔がグシャグシャになるほどに泣いていた、でも僕が抱きしめると、すぐに泣くのをやめて涙顔のまま笑って僕の顔を見るなり。

「ユウトのからだ、あったかいネ^^」

 だってさ、僕もアルのからだの温もりを感じて。

「アルだって、あったかい・・ずっと抱いていたいよ」

「えぇ? だったらずっとこうしていてイイヨ」

「ハハハ」


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