~予定外の邪魂狩り~(その3)
~予定外の邪魂狩り~(その3)
「!?」
「な、何だッ?」
その光の攻撃を見たエレーナ、タミーも僕と同様に何が起こったのかすぐには理解できなかったようで、
「えっ? 何が起こったのッエレーナァ!」
「わ、私にも分かりません、でも・・」
数メートル上空から見ていた二人には僕とアルの姿が確認できたようで。
「ユウトとアルは無事のようです!」
「ホントだッ、良かったわ~」
二人ともほんの一時的にしろホッとしたようだった。
僕たちを救ってくれた光の矢を放った者たちが遥か上空から舞い降りてきた。
「誰?」
陽の光が邪魔で良く見えないけど、エレーナにはそれが自分と同じ巫神達とすぐ判ったようだ。
「カリーナッ!!」
エレーナが舞い降りてくる巫神達に向かってそう言うと、上空から、
「間に合ったようね、良かったわ」
「エレーナ、助けに来たわよ、ウフフ」
数人の巫神が同時にエレーナに話し掛けるものだから、僕には何言ってるのかさっぱりだけど、さすが巫神エレーナ、全部聞き取っていた。
「来てくれたのですね、ありがとうございます! 助かりました」
そして驚くことにその巫神たちはゴブリンまで連れてきていた。
「なんでゴブリンまで来てるのかしら?」
タミーが不思議そうにしてると、
巫神のひとりが、
「あの邪魂は強敵だからゴブリンのような数で勝負の種族が力になると思って連れてきたのよ」
そんな巫神とゴブリンの群れを見た邪魂は体制逆転を悟ったのだろう、さっきまでの勢いが薄れやや引き気味になった。
ゴブリンの首領らしき者が合図をする。
「皆っ、潰してしまえっ!!」
「ウォ~ッ!」
合図と同時に群がるようにゴブリンが邪魂へ向かう。
数百という数のゴブリン達が一気に邪魂に向かうと、その気迫に押されたのか邪魂がまさかの後退、それに加えて巫神達の空雷神術を受けてついに邪魂は空間に裂け目を作り敗走!
結果的に僕たちは負けるという最悪の自体だけは避けられた・・。
「邪魂が逃げた?・・・」
タミーも安堵したようにつぶやく。
「助かったわ・・」
「タミー、ご苦労様」
エレーナがタミーに声を掛けたけど、その声には力がなかった、アルのことがあるからだ、それは僕も同じこと、僕は邪魂が消えてもまったくイイ気持ちにはなれなかった、むしろ僕の腕に抱かれてるアルの身体を見つめることで、悲しみしか湧いてこない・・
「アル・・もう一度君の声を聞かせよ・・・」
僕は溢れる涙を拭うことも忘れてアルのほほを自分のほほに重ねていた。
そんな僕をエレーナ、タミーもただただ見つめるしかなかった。
さすがの巫神のエレーナでも命が消えていくことを防ぐことはできない・・と思われた、しかし・・・
「ユウト、そんなにアルを失うことが辛いのですか?」
エレーナが確認するように僕に聞いた。
「あたりまえだろッ! エレーナは悲しくないのッ?!」
「判りました、ユウトがそこまでアルを想っているなら、巫神の奥義を使いましょう、幸い巫神仲間も来てくれています」
「巫神の奥義?」
「カリーナ、あなた達の力をアルに分けてもらえませんか? お願いします」
カリーナというのは空から舞い降りてきたエレーナの巫神仲間のひとり、今回降りてきて助けてくれた7人のリーダーのようだ。
「エレーナの連れのピンチなんだから、遠慮は要らないわよ、倒れてる娘はキャットピープルのようね、キャットピープルではなにも術もつかえないのでしょ?」
カリーナは僕のほうを見ながら聞いてきたので、僕が答える感じになった。
「はい、アルはいつも自分の身体能力だけを頼りに戦ってくれる強い娘で、僕の大事な仲間です! どうかアルを救ってください! お願いしますッ!!」
「あなたがユウトね、あなたがそこまで言うくらいだから、そのアルという娘はこのチームにとっても、あなたにとっても大事な娘だということがわかるわ」
「はい、僕にもエレーナやタミーにとってもかけがえのない、大事な仲間です!」
「わかったわ、その言葉を待ってたの、エレーナ準備しましょう」
「えぇ」
「うまくいくといいけど・・」
エレーナはカリーナに言われると神術を使って地面に円形の魔法陣のような模様を書き始めた。
その模様の中心にカリーナの仲間の巫神が薄い布を敷き、その上にアルを寝かせ、カリーナ達巫神が円形に等間隔で並ぶ。
その魔法陣のような模様の中心のアルの脇にエレーナが立ち、いつものとは明らかに違う感じの詠唱を始める。
エレーナの詠唱に合わせて、カリーナ達も同じ詠唱を始めた。
>&=?*‘()=&’%’~)&”¥”$*+($}+ (巫神たちの詠唱 文字化不能)
エレーナ達が詠唱を始めて数秒、魔法陣全体が輝き始め、その光は少しづつ空へ昇るように拡がり、魔法陣の外側にも輝きが拡がって僕たちがいる場所を中心にまるで別世界のようになった。
邪魂を追い払ってくれたゴブリン達もその様子を遠巻きに見ているようだ。
光の中で円に並ぶ巫神達から中心のエレーナの身体に向かって光の筋が繋がった、それはまるで巫神達の力をエレーナに集約しているように見える。
エレーナがまたなにか詠唱をし、同時にアルの脇にしゃがみこんでその右手をアルの胸に当てた。
&’%’~)&”¥}”$*&=?*~)&” (エレーナの詠唱 文字化不能)
エレーナの右手が太陽光のような眩さで光ると、アルの身体も光を放ち始める。
シュパァ~~ッ!! (アルの身体が光ると同時に放たれる音)
その瞬間、アルの身体の上の光の中にアルの姿が写ったように見えた。
1秒くらい経っただろうか、エレーナ達の巫神の出す光や魔法陣の光がすべて消えると、地面に横たわるアル、そしてその脇にしゃがむエレーナの姿がはっきり見える元の状況に戻った。
僕はすぐさまエレーナとアルのそばへ駆け寄って。
「エレーナッ、アルは? アルは戻ってきたッ??」
「そう、焦らないでユウト、少し待って下さい、アルは戻ってきます」
僕だけが焦っているようで、少し恥ずかしかったけど、エレーナはアルは戻ってくるとハッキリ言ってくれたのが嬉しかった。
それから数秒、僕はエレーナの横にしゃがんでアルの様子を見つめていた。
この数秒がいままでで一番長い数秒に感じていた。
「ウゥ~・・」
「!」
アルの手が動いた!
「アルッ!? アル! 目を開けてッ!」
僕はアルに大声で目を開けてと叫んでしまった、そしたらアルがパッチリ目を覚まして、
「うるさいなぁ~ユウト、そんなに怒鳴らなくてもアルは起きてるって!」
「あぁ~、アルが、アルが目を覚ましてくれた~ッ!!」
目を覚ましたアルを見た僕は思わず大声で叫びながら、泣いてしまっていた。
アルは泣いてる僕を見て、
「ユウト、なんで泣いてるの? どこかケガとかしてるの?」
僕がどれだけ悲しんだのかまったく知らないアルはなんともお気楽な言葉をはなった。
すると、その一言を耳にしたとき、周りの全員が「えっ?」となり、悲しみから喜びへ変わりつつある場の微妙な空気を一気におどけ気味の空気感に変えてくれた。
「アル、よく戻ってきましたね、おめでとう」
エレーナが復活したアルに祝福の言葉を送った、しかし、自分が死んだということを自覚してないアルは、なんでおめでとうなのかまったく判ってないようだ。
「おめでとう? なんで? なんでエレーナはアルにおめでとうなんて言ってくれるの?」
そう言うアルをエレーナはただ微笑んで見つめるだけだったので、僕は我慢できずことの次第をアルに告げた。
「アルは邪魂の攻撃で一度死んだんだ、いや、死にかけていたんだ、しかし、エレーナ達巫神の力で生き返ることができたんだよ、それをエレーナは祝っておめでとうって言ってくれてるんだよ、ホントに良かった」
「アル、一度死んだの? ウソ~・・・ウソでしょ? ユウトもエレーナもまじめな顔してアルを騙そうとしてるんでょ、まったく困ったなぁ、ハハハ」
その後もエレーナやカリーナがいろいろ説明し、やっとまぁまぁ自分が死んだことを納得したアルだったけど、心底納得してない様子だった。
「まぁイイではないですか、アルもみんなもここにいるのです、その事実だけで十分ですよ」
「そうよね、今ここにみんながいるってことが大切なことよね」
エレーナとカリーナのこの二言でやっと収拾がついたとき、僕は大事なことを思い出した。
「そうだ! キニュアッ! マッカイさん! そしてゴブリンのみんな~っ」
今回、邪魂を追い払ってくれたのは巫神たちとキニュア達ゴブリンのみんなだったんだ。
それを思い出して、僕はゴブリン達のいるところまで走っていった。
「キニュア、助けに来てくれてありがとう、そしてマッカイさん、村の皆さんもみんなのお陰で助かりました、心から感謝します、どうもありがとう!」
「いいや、あんたらにはうちのキニュアを救ってもらってるからな、そのお返しだよ、またわしらの力が必要なときは遠慮なくいつでも言ってくれ」
マッカイさんはそう言うとニコニコして、仲間を連れて自分の村へ帰っていった
そして、カリーナ達も別の現場へ向かうとなったとき、
「そうだわ、アルって娘にプレゼントをあげましょうね」
「エッ! アルに何かくれるの? 何もらえるのかなぁ、ちょっと期待しちゃうよ、へへへ」
さっきまで死んでたアルだけど、もういつものアルに戻ったみたい。
「さっきまで死んでたなんて思えないくらい元気だな」
それにしてもカリーナが言ってるプレゼントってなんだろう?。
そうだ、カリーナは最初にアルがなにも能力が無いことを気にしてたな・・。
「アル、あなたに巫神の使う神術のうち、防御と攻撃をひとつづつ授けます、これからは授かったその神術でエレーナ達を助けて下さいね」
「アルもエレーナみたいになれるってこと?」
カリーナの話が唐突だったようで、アルも少々混乱してる。
「いいえ、私のようにはなりませんけど、私と同じような神術が使えます」
「そっ、そうか! そうだよね、なんかアルちょっとパニくってる、へへへ」
「落ち着いて下さいアル」
エレーナとアルの会話を聞いてると、僕は笑いを止められないようになってしまってつい笑ってしまった。
「ははははッ、アル落ち着いてハハハ」
カリーナ達が神術送授を始めて、数分・・。
「アル、終わったわ、いまのアルには神術というあたらしい力が宿ってるの、まだその実感は無いでしょうけど、しっかり己を律してエレーナ達を支えていってくれることを期待するわ」
カリーナが真顔でアルに言葉を伝えると、さすがのアルも神妙な面持ちで聞いていた。
そして、アルの顔がキリっと引き締まり。
「わかった、アル、みんなの役にたつように頑張るッ!」
とカリーナに言葉を返した、その時のアルの引き締まった顔はいつもお茶らけてニコニコ顔のアルからは想像できない、まるで別人のような初めて見る顔だった・・・
また、中途半端になっちゃいました。
皆さんのように、うまく区切りを作れないです・・・
それでも、読んで頂けてうれしいです、ありがとうございます!!
次話もよろしくお願いします!!!