~アルの好物?~
~アルの好物?~
エレーナとタミーに我慢するよう言われて残念そうにしているアルが未練タラタラといった感じで林の奥を見つめている。
その時
「あれ?今なにか動いたっ!」
アルが林の奥に動くものを見たと言ったのだ。
「アル~、いくらホウホウを捕ま」
「いえ、なにかいます!」
エレーナがタミーの言葉をさえぎって、林の奥を指さして言った。
僕もエレーナが指さす方向、林の奥を凝視した、しかし人種の僕の目にはなにも見えない、暗視ゴーグル欲しい・・・
「僕には見えないな・・」
僕がそう言った直後、林の木の先、数メートル離れた場所で何かが木から木へ飛び移る影みたいなモノが見えた。
「サル? いやムササビか?」
僕はとっさに人間界で木の間を飛び移ることのできる動物を思い浮かべていた。
しかし、ここは異世界、そんな単純ではないことも同時に理解している。
ザザッザバーッ
木の枝が揺すられる音だけが聞こえる。
音だけというのは想像するより数倍怖い、実際、僕は全身に鳥肌が現れているし、冷や汗も垂れてきてる。
その音が徐々に近づいて来てる。
音が近づく・・そいつは確実に僕たちに接近しつつある、もしかすると魔物か、最悪邪魂かもしれない。
そう思った僕は即座に剣を取り出した、エレーナもほぼ同時に防壁神術を展開しつつ、同時に縛身神術の詠唱をはじめた。
&))A')0#=~0^(&=”!”%=~)&%&’’ (エレーナの詠唱文字化不可能)
同時に二つの神術を発動させるなんてエレーナ自身にかなりの負担になるはずなのに・・・
タミーとアルも臨戦態勢をとっている!
と、そのときアルが、接近してるモノを指さし。
「あぁっ! あれコーバットだっ!」
それを聞いたタミーがキャーッと叫び声をあげて、すっ飛んで僕の後ろに隠れた。
「コーバットってあの見た目がキライよ~ッ!」
「なに? なに? なんなのタミー?」
「コーバットっていうのは木の上を自在に動き回る底辺魔獣よッ」
「底辺魔獣?」
初めて聞く言葉に僕は「?」だったんだけど、相手がコーバットと知ったアルは目を輝かせ、耳をピンと立て、しっぽをグルグルまわしまくって
「コーバットなら、アルにお任せだよ~っ!」
「えっ! 何で? お任せって何?」
するとタミーがフォローするように。
「アルたちキャットピープルは、太古よりコーバットを獲物としている種なのよ、いわば好物ってことね、だからコーバットはアルに任せて大丈夫なはずよ、ウフッ」
そうタミーが説明し終わる前にアルは素早く木に飛び移って、コーバット捕獲へ乗り出した!
バシッ!ガシュッ!
暗い林に聞きなれない鋭い音だけが響く、それだけで緊張してくる。
そんな状況を見たエレーナはなぜか防壁神術を解き、さらに縛身神術まで終わらせている。
さらにタミーまでもが戦いの姿勢を崩して、なんとそばにあったちょうどイイ感じの石に腰をおろしてくつろいでるっ?
僕は無防備で素に戻ってるエレーナとタミーのそばへ行って。
「どうしたの二人とも?呑気にしてる場合じゃないよっ! アルを援護しなきゃっ!」
それを聞いたエレーナがニコっとして。
「ユウト、もう大丈夫ですよ、コーバット相手ならアルは負けません、ほぼ確実にコーバットを仕留めてくれますよ」
さらにタミーまでも、
「そうよ、アルたちキャットピープルは一部の魔物相手なら、無敵、いえ無双といっていいくらいよ、私たちは寝ていてもいいくらいだわ、フフフ」
「フフって何言ってるのエレーナ、アルだけじゃいくらなんでも危険じゃ」
「見てユウト、もうアルがコーバットを追い詰めてるわよ」
「えっ?」
エレーナに言われて暗い林の奥を見ると、アルがコーバットを追いかけてるのがハッキリ分かるくらいにアルが優勢だ。
バサ~ザザ~バキッ
「マテェ~ッ! 観念しろ~ッ!!」
アルの叫び声が聞こえる。
「すっ すげぇ・・・アル超強いじゃん・・・」
「そうよ、アルはユウトが思ってるよりはるかに強い女の子なのよ、ウフッ」
バシッズサーッ・・ズザン・・・
林の奥で何かが落ちるような音がして、それを最後に物音ひとつ無くなった・・
「アルは?・・」
数秒後、林の奥から木から木へ飛び移りながら接近するモノが見えた。
「コーバットかっ?」
「ただいま~っ! 明日の朝ごはんはコーバットの丸焼きだよ~! 楽しみ~っ! へへへ」
そう言いながらアルが林の奥から戻ってきた。
「なんだ、アルだったのかぁ」
林の奥から近づいてきてたのはアルだった。
「アル、ご苦労様でした、疲れたでしょう? 今夜は早く寝て下さいネ」
「アルお疲れ様、やっぱりコーバット相手のアルは強いわね」
「へへへ、まぁキャットピープルにとってコーバットはバトルの練習台みたいなモノだからね」
エレーナとタミーに労を労ってもらったアルは誇らしそうにドヤ顔している。
「ところで、倒したコーバットはどこにあるのかしら?」
コーバットがないことに気が付いたタミーが聞いた。
そういえばコーバットが見当たらない、アルが倒したはずのコーバットはどこ?
「あぁ、コーバットは重いから林の奥の木に吊るしておいたよ、明日さばいてみんなで食べようね、ハハハッ」
コーバットが重いってことはそこそこのサイズだったってこと?
しかも明日それをさばくって言ってるけど、魔獣をさばくって想像するに超グロいんじゃ・・・
僕はコーバットをさばく画ズラを想像して、食べるのを遠慮しようと思った・・・
「うぇ~・・」
「アルの活躍でコーバットは倒したし、やっと安心して眠れそうね、ウフッ」
コーバットが苦手なタミーはそう言ってそそくさとテントに入っていった。
「では、私も就寝させていただくことにします、ユウト、アル、おやすみなさい・・」
エレーナもタミーにつづいてテントに入った。
「アルもそろそろ寝たら?」
「アルはユウトのテントで寝たいよ~」
さっきまであんなに強そうな感じのアルだったのが、急にダダをコネる小学生の女の子みたいになってる!
「いっ、いやぁそれはさすがにダメでしょアル、ちゃんとエレーナ達のテントに入ってくれるかな・・」
ここ異世界でも、男女の区分けはしっかりしておかないと後から何が起こるか判らないし、エレーナやタミーの目もあるし・・
「え~、ユウトと一緒がイイんだけどなぁ~」
いろいろブツブツ言ってるアルをなんとか宥めてエレーナ達のテントに入ってもらう。
「ふぅ、これでやっと寝れるかな・・おやすみ・・・」
僕もやっとテントに入り寝ることができた・・・
今日は少し時間がとれたので、こんなに早く更新できました!
今話はアルの好物狩りのお話でしたけど、いかがでしたでしょうか?
いつも読んで下さってる皆さん、これからもよろしくお願いします!!




