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~移動途中のたのしみ~

     ~移動途中のたのしみ~


「エレーナ、今向かおうとしてる町ってなんて町?」

 僕は次の町の名前を聞くのを忘れてたので、別に名前なんてどうでもいいんだけど、一応知ってたほうがいいように思えたのでエレーナに聞いてみた

「あぁ、町の名前を伝えてませんでしたね、ごめんなさい。今向かってる町はツーソンという町です、ツーソンまではだいたい一日の距離です、皆さん頑張って下さい」

 エレーナが話し終わるとほぼ同時にアルがめんどくさそうに、

「ねぇエレーナぁ、レンタルサラブーとか借りようよ、歩くの疲れるぅ~」

 まぁ確かに一日歩くのは結構ハードだけど、それも心身の鍛錬というのがエレーナ達巫神の考えなので僕達はそれに従うしかないんだけど、わがままアルはそれも知ってるくせにちょっと文句を言ったりする。

 そんなのはいつものことと僕やタミーは承知してるので、

「アル、頑張って歩こうよ、町に着いたらアルの大好きなケーキおごってあげるからさぁ」

 僕がアルを餌で釣るようなことで宥めるのがいつものルーティンワークなんだけど、内心これでいいのか少々疑問・・・

 でもこれでアルがいつもの明るいアルに戻ってくれるなら安いもんだよ。

「やったー! じゃあクリームいっぱいのクレープケーキがイイっ!」

「はい、はい」

「まったくユウトはアルを甘やかしすぎだわ、でもぉ、私にもケーキ奢ってくれたら許してあげるわよ、ウフッ」

 タミーまでケーキをねだるなんて、計算外だった・・・

「えぇ~っ! タミーまでっ!?」

「エレーナぁ、なんとかしてよぉ~」

 僕はエレーナに助けを求めたけど、エレーナには冷たくあしらわれてしまった、

「ユウトは優しすぎなのと、甘すぎなのですよ、自分の言葉には自身で責任を取るしかないですね、フフフ」

「あらそぅ・・仕方ない、いいよタミーにも奢るよ」

「やった~っ! 私はフルーツ増し増しのタルトでお願いするわ! フフッ」

「フッ!フルーツ増し増しって・・フルーツって高かったハズ、とほほ・・・」

 僕は町に着いてからの出費で重~い足取りになったけど、タミーとアルは逆に飛び跳ねそうな勢いの軽い足取りで鼻歌まで歌ってる、やれやれだよ・・・

 トレンスの町を出たのが昼過ぎだったので、ツーソンまでその日のうちには着けないのは承知していた。

 陽が傾き、辺りがうす暗くなり、雲が夕焼けのオレンジ色に染まって高校の授業で聞いた薄暮という感じになってきた。

 そろそろ今夜の野営する場所を決めなければという時間だ。

「エレーナ、どこかテントにちょうど良さげな場所ないかな?」

 そう聞くと、エレーナは巫神の空中浮揚能力を発動させて上空へ浮き上がり、上から辺りを見まわして。

「少し先に川がありますね、脇には小さい林もあります、あそこなら野営できそうですよ」

 浮遊する能力はホントに羨ましいと思う能力だ、タミーもエルフだから持ってるけど、タミーの場合はエレーナと違って技的なものじゃなく、言ってみれば身体機能の一部みたい。

 まぁ、どっちにしても僕も自由に空を飛んでみたいよなぁ・・

「川があるなら魚が捕れるね、今夜は魚三昧だよユウトっ!」

 アルはキャットピープルだからか魚も好物だから喜んでいる。

 エレーナが降りてきた。

「喜んでくださいユウト、以前のように木があるのでテントが張れます、今夜はテントで眠れますよ」

 テントが張れるというだけでエレーナは上機嫌、まぁテントも張れない場所で野営するよりぜんぜんマシだけど、昨日は宿のベッドで寝れたのに、それに比べると喜べる環境とはほど遠い、でもそんなことを言うとエレーナに悪いし・・

「そうだね、テントが張れれば熟睡できるからうれしいよ」

 とまぁ忖度した言葉をエレーナに返した、しかしアルがそんな僕の配慮をぶっ潰してくれた。

「アルはぜ~んぜん嬉しくないよ、昨日はベッドに寝れたじゃない! それに比べて今夜はテントなんて、やだなぁ~」

 またアルは感じたままを遠慮なく言葉にしちゃったよ。

 しかし、それにタミーが即座に反応した。

「アルッ、私たちは遊びで旅をしてる訳じゃないのよ! 昨日はたまたまベッドで寝れただけ、もう少しマジメになりなさいっ!」

 珍しくタミーがマジ顔でアルに説教した、その勢いもあってかアルは一瞬で耳を低くしてシュンとしてしまった。

 アルがシュンとするとタミーは僕のほうを見て、サムズアップしてウィンクしてみせた。

 なるほど、ホントに怒ってるんじゃなくてアルを調子に乗せないためのゼスチャーだったんだ、さすがタミー、グッジョブ!!

 エレーナもそれに気づいていたようで、タミーに軽く会釈したように見えた。


 僕たちはエレーナの見つけた川のそばの林に着いた。

 林のあまり奥へは行かず、川からも遠くならずテントが張れそうな木を見つけて、3セットのテントを張った。

「皆さん、テント張りが早くなりましたね」

「当然よ、もう何回も張ってるし、このテントは組み立てしやすくて好きよ」

「アルももう見なくても作れそうだよ」

 みんな僕が人間界で使っていたテントと同じようなテントを念で作ったものをイイ感じに受け入れてくれてる、なんかちょっと嬉しい^^


 テント張りが済んで、次は川で魚を捕る作業だ、この作業はアルが得意としている、数日前にも川で釣りをしたけど、そのときはアルの釣りではなく「捕る」そうまさしく手で捕るという方法に完敗した。

 まぁ負け惜しみみたいに聞こえちゃうかもだけど、捕るは釣るとは完全に別物だ! やっぱり釣りはジグやルアーを使って魚との駆け引きを楽しむゲームだと思う、しかし、冷静になってみると今の僕たちは生きるために魚を捕らないといけない状況なので、駆け引きを楽しんでる場合じゃない気もする、う~ん、難しい・・・

 とは言っても人種の僕がアルみたいに素手で魚を捕るなんて芸当はまずムリなので、やっぱりここは普通に竿で釣りというスタイルになるしかなさそうだ・・・

 とかなんとか考えてるとアルはすでに魚を捕りに川へ入ってた!

「アル! ちょっと待ってよ、僕も魚釣りするよぉ」

「ユウト、遅いよ! ここ魚多いから、沢山捕れそうだよっ!」^^

 アルはそう言いながら川に入ってニコニコしてる。

 キャットピープルのアルは水面が光りを反射してても関係なく水中が見えるんだそうだ、その身体能力のすべてが僕たち人種を超越している。

 そんなことを考えながら僕はアルから少し離れた場所で釣りを始めた。

 すると、すぐさま反応があった!

「おっ! 来たかっ?!」

 僕の竿に反応があったのとほぼ同時にアルは最初の獲物をゲットした。

「一匹目捕ったぁ~っ! でっか~い!」

 僕は自分の竿のほうをコントロールしながらもちょっとアルのほうを見ると60センチくらいはありそうな大物を素手で掴んでいるアルが見えた。

「うわぁ、でっかっ!!」

 デカい魚をゲットしたアルのほうを気にしながらも、僕は自分の竿のほうが大事だ

こっちもそこそこのサイズらしく、竿がしなりまくって、ラインをうまく巻き取れない。

「これは・・なかなかのサイズかもっ・・・」

 竿を持つ腕から力を抜けばロッドごともってかれそうな引き。

「うぐぅぐぅ~」

 なかなかラインを巻けないながらもやっと魚を目で見えるところまで引き寄せた

普通ならタモですくいあげる場面だけど、ここにはタモは無い。

「どうするか?」

 と考えてると、アルが走ってきて僕の釣った魚を手で捕まえてくれた。

「やったねユウトっ! これも大きいね! ハハハ」

 アルがいればタモ要らずってことか・・・

「ありがとう、アル」^^

「それにしてもこの川の魚ってデカいなぁ、アルの捕ったヤツとこの二匹で今夜の食事分は余裕で足りちゃうな」

「この川の魚はみんな大きいみたいだよ、大きいのが沢山泳いでるのが見えるもん」

「そうんなんだ、アルの目は便利な目だよね^^」

 そういうとアルは尻尾をピンと立てなながら嬉しそうに、

「エッヘン、だってアルはキャットピープルだもん! 水中の獲物を捕まえるのメッチャ得意だよっ!!」^^

 次に魚捕りするときは全部アルにお任せしようかなぁ・・・

 魚もとれたし、そろそろ夕飯にしようとなり、タミーとアルは林に食べられる木の実や野草を取りに入った。

 僕とエレーナは魚釣りの前に張ったテントの脇で焚火を点けて魚を焼く準備をし、タミーとアルが戻るのを待つことにした。

 魚をさばくとなって、僕は少々困った、なぜかというと、僕は釣りはするけど、魚をさばいたことがない、前に魚を食べたときは木の枝に刺して丸焼きにしたから問題なかったけど、今回はタミーがしっかり魚料理にして食べたいと言うのでさばくことになったのだ、しかし、僕は釣ることはできてもさばくことはまったく経験がなかったので、どうしようと困っていると、エレーナが大きな石の上に魚をのせた。

「何する気エレーナ?」

「何って、タミーの望みとおり、魚をさばくのですよ」

「さばくって、まさかエレーナ、魚さばけるの?」

「魚をさばくくらい巫神の神術を使えば、なんでもないことです、見ていて下さい」

 そう言ってエレーナは手を魚の上にかざした、するとエレーナの手に20センチくらいの少し小さめの包丁のような刃物が2本現れた。

「えっ? 包丁?」

 エレーナはその刃物を両手に持ち、魚をさばき始めた。

スゥースパッスパッパッシャピーン (エレーナが魚をさばく音)

 その手際の良さは、その道ウン十年という職人技レベルって感じのスピード。

「すッ! 凄ッ!」

「終わりました、いかがです、なかなか綺麗にさばけたんじゃないでしょうか?」

 始めてから三枚おろしに仕上げるまで、1分掛かってない・・

 しかもウロコもちゃんと落としてある、エレーナって実は職人?

「い、いやぁエレーナスゴイね、こんなに早く綺麗にさばけるなんてさすがだね、へへへ」

「巫神の能力はいろんなことに応用できるのです、ですから見方を変えると巫神とは便利屋みたいなものです、ウフッ」

 巫神を便利屋呼ばわりなんて恐れ多くて絶対ムリ!ムリ!

 でも、もしエレーナが便利屋なら毎日でも呼びたい!なんなら住み込みでムフフ・・ 

 ってそれって専属メイドじゃん!

 僕の脳内はあらぬ妄想が暴風を伴う台風がごとく荒れ狂い去っていった・・・

 またも僕は不覚にもニヤついてしまってたようで。

「ユウト、なにを想像してニヤニヤしているのです? 今はタミーはいませんし、私のことでニヤニヤしてるのですね?」

「えっ!? いっいやぁそうじゃなくて、あのぅ・・・」

 エレーナには僕の思考がバレバレなんじゃないかと思うくらい当たってるじゃないか! 巫神ってエスパーだな・・気を付けよう・・・

「まぁ、ユウトが私のことをどのように妄想してもかまいません、でも邪魂との戦いではしっかりしてもらわなければ困りますよ、いいですか?」

 えぇ~! どんな妄想してもイイのっ?

 そしたら僕の中の妄想列車はアクセル全開で男子の妄想一直線だぁ~~ッ!!

「そりゃとうぜんだよ、邪魂との戦いは全力で挑むつもりだよエレーナ」


 エレーナが魚をさばき終わると、ちょうどタミーとアルも戻ってきた。

 手にはいろいろな木の実や野草を抱えている、大漁だったみたいだ。

「二人も戻ってきたし、魚を焼き始めようか」

「そうね、じゃあ私が火を点けるわ」

 そう言ってタミーが集めてきた枯葉や小枝に術で点火してくれた。

 これが人間界なら着火剤やファイヤスターターとか使うんだろうけど、さすがエルフ! いとも簡単に着火しちゃった、異世界サイコーッ!!!

 パチパチと木が燃える音がし始めて、火が安定すると木の枝に刺した魚の身を火の周りの地面に刺して焼き始める。

「魚の焼けるイイにおいがしてきた!」

 アルは鼻も効くから、魚のニオイは僕たちより数倍おいしそうに感じちゃうのかもしれないな、ちょっと可愛そうな気もする・・

 しばらくして魚が焼けて、それぞれ一切れづつ手に取ってエレーナの持ってきたスパイスをふりかけて口に運んだ。

「うっ、旨~いっ!!」

「メッチャ!美味しいっ!!」

「うぅ~ん、美味しいわぁ~♡」

「これは格別においしいですね」

 4人それぞれ言葉は違えど、その絶品級の旨さに顔がほころんだ。

 僕は元々魚は得意ではなかったんだけど、異世界に来て川魚を食べるようになって、魚を旨いと思えるようになった。

 そんな僕でも判る、今日の魚は特に旨い! これなら毎日でもいけそうだ、いやっ毎日食いたいぞ~ッ!

 メチャ旨い魚と一緒にタミーとアルが取ってきてくれた木の実や野草もたらふく食べて4人とも満足できるテント食になった・・

 そして気が付くと夜も深くなり、鳥たちのさえずりもなくなる深夜となっていた。

「この林にはホウホウがいるみたい、声が聞こえる」

 アルが耳をレーダーのように前後に動かしてホウホウの声の方向を探ってる、

 ホウホウとはフクロウのような夜行性の鳥のことで、アルにとっては恰好の獲物らしい。

「アル、捕まえてくれば明日の朝食にできるんじゃないかしら?」

 タミーもホウホウがアルの好物なのを知っているから、こんなことを言ったんだけど、それを聞いていたエレーナがそれを止めた。

「アル、今は我慢してください、今から狩りなどしてると寝る時間が減って明日の行動に影響します」

 それを聞いた途端、アルのミミの動きが止まりしゅんと畳まれてしまった・・

「そうね、もう遅いし我慢ねア~ル」

「わかったよ~、ホウホウ食べたかったなぁ・・」

今話はちょっと長めになっちゃいました、

うまいことまとめることができなかった、わたしの表現力不足

が原因です、反省・・・

いつも読んで下さってる皆さん、またよろしくお願いします!!


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