~こっちの日常ってけっこうグダグダ?~
~こっちの日常ってけっこうグダグダ?~
昼食を終え、宿に戻ると、疲れていたのだろう、タミーとアルはすぐにベッドに横になった。
「タミーにアル、もう寝ちゃうの? まだ昼間だよ・・」
「いいの、アルは昼食べたら眠くなっちゃったのぉ、ユウトも一緒に寝ようよ・・」
「私もちょっと眠らせてもらうわ、ユウトもどうぞ・・・」
そんなことを言ってるそばから、二人はもう夢の中の様子。
エレーナはどうしてるのかというと、タミー/アルとは違い、真面目にこれからのことを考えてるみたい。
「エレーナ、君も少し休んだら? 昨日は徹夜だったし」
「心配してくれるのですか、ありがとう、でも、私は巫神ですし、ユウトやタミーにしっかり仕事をしてもらうための役目を果たさなければなりませんから、ゆっくりはしていられないのです」
「でも、ちょっとでもいいから休んでほしいよ・・」
エレーナは巫神で僕たちのグループの中で核となる立場だから、いつもしっかりしてくれてる、だけど僕としてはエレーナにももう少しゆっくり休んでもらいたい、そのためにも僕たちがもっとしっかりしないとと思う。
「そうですね、では今日はお休みにします、ユウト、ありがとうございます」
エレーナも僕の言葉に従ってくれて、今日はゆっくりしてくれるようで、部屋のソファに腰をおろして目をと閉じた。
窓から流れるそよ風にエレーナの髪がそよいでいる、絹のような髪に陽が当たるときらきらと輝き、その姿はまさに女神の休息と言っていい、もしスマホがあれば絶対写真を撮りまくってるだろうなぁ。
4人は夕方まで宿の部屋で各々身体を休めて、夜は昼に続き町で美味しいものを食べて、早めに就寝となった・・
次の日の朝、僕は少し遅めに目を覚ました。
「フワァ~」(寝起きのあくび)
僕が起きたとき、エレーナとタミーの姿は無く、早起きして外出したらしかった。
「二人とも、もう外に行ったんだ・・まったく真面目なんだから・・・」
そんな二人とは対照的にアルはというと、余裕でまだ夢の中のようだ。
ずっと寝させてあげたいけど、そうもいかない、今日もやることがあるはずだし・・
「アル、そろそろ起きて、もうエレーナとタミーは外に行っちゃったようだよ」
「う~ん、まだいいよ・・ユウトも一緒に寝てよう・・ムニャムニャ・・・」
「ダメだな・・」
するとタミーが部屋に戻ってきた。
「あら、ユウトは起きてたのね、おはよう」
朝からタミーはしっかり身を整えていて、ホントにキレイだ、エレーナとはまた違う綺麗さがあって、時々その綺麗さに見惚れてしまうのが少々ハズい。
「あぁ、タミーおはよう、もうどこかに行ってきたんだね」
「ええ、この近くの森まで行って、心を整えてきたわ、ユウトも私と一緒に心の整えをしてみない? エルフがする精神浄化法教えてあげるわよ、ウフッ」
タミーは僕に話した最後は、必ず「ウフッ」と微笑みを見せる、いやぁこの微笑みがなんともイイっ!
それにしてもアルはなかなか起きる雰囲気じゃない、まだまだ眠りの海に深く潜航中の様子。
しかし、そんなアルをタミーがほおっておくはずもなく。
「そろそろ、アルにも起きてもらわないと・・」
そう言ってアルの側に近づいて。
「アルが寝てるうちにあのイケメン、私が貰っちゃおう!」
それを聞いたアルはこっちが驚くくらいの勢いで飛び起きた!
バサァ~ッ (布団を飛ばして飛び起きたアル)
「あぁ、また例の手か・・・」
イケメンという言葉を聞いたアルはミミはピンと立ち、しっぽはフワァと毛が膨れて、今にも飛び掛かって行きそうな感じ。
また例の手というのは、アルにイケメンという言葉を言うと、たとえ熟睡中でも瞬時に飛び起きるという習性? みたいなモノをタミーが応用したアルの起こし方なんだけど、毎度毎度ひっかるアルもアルだよなぁ・・・
飛び起きて、すぐタミーのウソと知ったアルは、ガッカリした感じで、
「またぁタミーにだまされた~うぅ~・・・」
と言いながら、ふてくされてまたフトンを被ってしまった。
でも、一度起きたアルを甘やかすようなタミーじゃないことは僕もエレーナも知っている。
そんな厳しいほうのタミーが発動した。
鬼のようなというと言い過ぎだけど、中々の迫力顔でアルをたたき起こしにかかったのだ。
「アル!起きなさい!!」
「もうちょっと寝かせてよぉ~」
タミーの顔の変化に僕はヤバイものを感じた。
「もう限界だな・・・」
「起きろ!アル~ッ!!」
タミーは突然そう叫び、ほぼ同時にアルの被っていたフトンを引っぺがした!
その声と動きの圧にこっちまで圧倒されて、3歩ほどたじろいでしまったほど。
そんなタミーの行動と気迫にはさすがのアルも起きない訳にはいかないようで、グタグタと文句を言いながらだけど、やっと起きてくれた。
「もうタミーってホントに乱暴なんだから! エレーナに言いつけちゃうんだからッ!」
「いいわよ、言いなさいな、早起きしないアルがいけないんだから、もしかしたらあなたはクビかもしれないわよ、フフ」
「どういうことよ! まるでアルは要らないって言ってるようじゃない!!」
タミーとアルが一触即発な険悪なムードになってしまった、女子って男からすればどうでもいいことでも、けっこうひっかかりヤバイ感じになってしまうことがあるようで、今日も朝からにらみ合いになってしまった。
「まぁまぁ、ふたりとも仲間なんだからクビになるとか言い合いなんてしないでくれよ、ふたりがケンカするとエレーナに僕が怒られるだからさぁ」
タミーとアルは時々ケンカする、すると必ずエレーナはなぜか僕にケンカの収拾をさせるんだ、元モブの僕は女子の扱いは鬼門と言えるくらいに苦手だけど、エレーナの指示だから仕方なくしてる、ホントやりづらい・・
「ごめんなさいユウト、あなたが困るならケンカしないようにするわ、まぁケンカしないようにするかどうかはアルの協力次第よ、ウフフ」
またウフフか・・
「アルもユウトが困るならケンカしないよ! だからユウト、抱きしめてぇ~お願いッ!!」
「なっ! なんでそうなるんだっ?!」
いきなり抱きしめてとは、言われた僕のほうも女子を抱きしめたことなんてないし、恥ずかしさで自分の顔が暑くなってくるのがハッキリ分かった!
すると、そんな僕を見てたタミーが、
「抱きしめるくらい、いいんじゃないかしら? ユウトも男子なんだし、女子を抱きしめてみたいでしょ? もしかして私を抱きたいのか~しら、ウフッ」
「えぇ~っ?! いいのっ?!」
「やった~っ! タミー、応援ありがとネ!」
まったく、さっきまでケンカしてたのに、なんなの、この連携プレーは?
「じゃあ、アル、もうケンカしないって約束してくれたら、抱きしめてあげるよ」
僕は抱きしめてあげる代わりにもうケンカしないとアルに約束をさせることにした、我ながら上手いアイデアとは思うんだけど、それでもタミーが見てる前でアルを抱きしめるのはやっぱり恥ずかしいな・・・
「わかった! アルはもうケンカしないよ、約束する! だからユウト早くぅ~」
そのあともアルにせっつかれて、ついにアルを抱きしてるときがきてしまった。
「じゃあ、いいかなアル?」
「は~い! フフフ」♪
僕は女子を抱きしめたことが無いので恐々あまり力をいれずにアルの背に腕を廻してアルの身体を僕に引き寄せてみた、アルの暖かさが僕に伝わってきた。
「アル、暖かいね」
「ユウトもあったかいね・・」
すると、そんな状態になってるという最悪のタイミングでエレーナが戻ってきてしまった!
「エッ!エレーナッ!」
「ユウト、なにをしてるのですか?!」
僕はアルの背にまわしていた腕を速攻で解いて、飛ぶ勢いでアルから離れた。
「えっ?あっあのぉこれは、え~と、ケンカの仲裁というか、え~と・・」
僕は突然のエレーナの問いに、しっかりとした返事ができず、あたふたしてしまった。
「アル! あなたユウトになにを要求したのですか?!」
珍しくエレーナはかなりお怒りのご様子だけど、タミーの次の言葉で誤解が解けたようだ。
「エレーナ、これはアルがわがままを言ったんじゃないわ、アルがもうケンカしないって約束したかわりに、ユウトがアルを抱きしめてあげるってことにしたのよ、だからエレーナが思ってるような変なことじゃないわよ」
「そうなんですね、タミーが言うなら信じましょう、しかし、ケンカしない約束ということは、私のいない間にまたケンカしたのですか?」
「あら、エレーナったら余計なことまで察知しなくてもいいのよ、少しはリラックスしなきゃダメよ、ウフ」
タミーの説明でエレーナもこの状況を理解してくれたようで、僕も安心した。
しかし、エレーナが戻ってきたことで僕が離れてしまったアルは不機嫌っぽい。
「も~う、エレーナはまだ戻ってこなくてよかったのにぃ~ プンプン!」
エレーナが帰ってきたので、僕の抱きしめが終わってしまったのがお気に召さないアルはご機嫌斜めになったけど、起き抜けからいろいろあった今朝のイベント?も一応幕を下ろすことができたようで、よかった、よかった・・・
「エレーナ、今日はどんな予定になってるの?」
「そうね、私も聞きたいわ、今日の予定はどうなってるのかしら?」
僕が今日の予定をエレーナに聞くと、タミーも予定を教えてと言った。
「今日の予定はまだ決めていません、ですので、昼くらいまでこの宿で待機したいと思います、いかがでしょう?」
せっかく早くからエレーナが支宮へ定期通信をしに行ったけど、今のところ指示や要望などは無かったようだ。
なので、僕は朝早くから頑張ってるエレーナの労を少しでも労えればと思って。
「まぁ、そんなに急がなくても少しすれば連絡がくるよ、エレーナもこんな日くらいゆっくりしてほしいな」
「そうですね、ちょっと急ぎすぎたようですね・・では、ユウトの言うとおり、今日はゆっくりさせてもらいます」
そう言うとエレーナは昨日も座っていた部屋の隅のソファに腰を下ろして、ゆっくり目を閉じ、瞑想を始めた。
エレーナが戻ってきてご機嫌斜めだったアルは気が付くと、またベッドでスゥスゥ可愛い寝息をたてている、寝てるアルはまんま子供のようで可愛い。
タミーは昼まで特にすることが無いならと、また森に向うと言い僕にも行ってみないかと誘ってきたので、僕はそれに従い森に行くことにした。
タミーたちエルフは本来は森に住み森の生き物たちと共に森の恵で生きる種族、だからだろうか、森の中のタミーは圧倒的な透明感を纏っているかのようで輝いてみえる、そしてエルフ特有の澄んだソプラノで歌う祈りの歌は森の隅々まで伝わって、あたりを穏やかに包み込むように思えた。
「タミーの歌は心を穏やかにしてくれる、聞いてるとホントに気持ちイイよ」
「あら、そんなにイイ? じゃあユウトにはもっと聞かせてあげるわ」
そう言ってタミーは術で小さなハープを取り出して、ハープの音色で彩ったソプラノの歌を聞かせてくれた。
僕はそんなタミーの美しい歌声を聞いて、いつのまにか眠ってしまっていた・・・
今話はいつもよりちょっとだけ長くなっちゃいました。
ダラダラ長いだけと言われそうですが、温かい目で
読んでやって下さい、お願いします。
それと、これからのサブタイトルなんですけど、
サブタイトルって付けるの結構難しいんですよね、
なのでこれからはサブタイトルは無しってことにさせてもらうかもしれないです。
勝手ではございますが、あらかじめご承知おき下さいませ。
よろしくお願いいたします。




