~経路と対策~
~ 経路と対策 ~
被害が無かったことを4人で喜んでいると、家主の老人が血相を変えて小屋から出てきた。
「やられたっ!!」
「!」
「どうしたのです? やられたとはどういうことですか?」
「キーウェが一匹盗まれた!」
「え~っ?!」
「そんなはずは?!」
僕たちはすぐさまキーウェの小屋へ入った。
そこには数匹のキーウェが飼われていて、そのキーウェにはそれぞれ番号が付いている、老人はそのなかの5番がいなくなったというのだ。
昨日までは確かに5番もいたという。
しかし、朝まで僕たちが警備をしてたし、エレーナの神術でバリアも張っていた状況だったから外部から侵入されたとは考えられない。
「あんたらがいたのに、なんでこんなことになったんじゃ!?」
老人は僕たちを責めるように言い放った。
そうなるのも当然かもしれない、なにせ僕たちが警備してるということで安心しきってたのに、それが裏切られた形になってしまったのだから・・
でも、僕からすれば、そこまで言われるのも困るかな・・
でもエレーナはそんな老人に対しても、一言も反論などせずに謝っている。
巫神のエレーナが謝ってるので、僕やタミー・アルも老人に対して謝り今夜は対策を強化する約束をした。
それにしてもどうやってエレーナの施した防壁神術と僕たちの警備をかいくぐって小屋に入ったのか、僕にはさっぱり判らなかった。
しかし、エレーナにはなにか心当たりがあるようだ。
「異現神術・・」
エレーナがひとりごとのように言った
「何?そのイゲン神術って?」
「異現神術というのは、神術のひとつでこの世界とは違う次元を使って瞬時に遠くへ移動できる神術です、異現神術を使えば防壁神術も難なく超えることができます」
「異次元移動か? ワープみたいなことかな・・」
「わーぷ? 人間界には異現移動のようなことができる人間はいないはずですが?」
「いやぁ、そのワープっていうのは、ほんとにできることじゃなくて、空想っていうか妄想なんだよ」
僕とエレーナが敵の侵入手段について話しているとタミーが不安そうに言ってきた、
「巫神と同じ高等神術の異現神術を使える邪魂なんて聞いたことないわ、それにそうだとしたら他の神術も使えるかもしれないし、そんな相手とどう戦うの?」
タミーの言う通りだった、今までの邪魂はいろいろ強力な技を持っていたけど、神術を使える邪魂はいなかった、そういった意味ではタミーが不安がるのも当然かもしれない。
正直言えば僕も不安だ。
しかし、今のエレーナは不安という感じではないようだ、どちらかというと自分たち巫神と同等の能力を邪魂がなぜ持てるのか、そっちに脅威を感じてるようだ。
「エレーナ、今度の邪魂は今までのとは違うようだね、でも僕たちなら大丈夫だと思うよ」
僕はなんとかエレーナを元気づけようと思ったけど、根拠のない自信のような言葉を伝えることしかできなかった。
アルもタミーも不安でいっぱいというのが顔色でわかるほどだ。
しかし、僕たちはそうそう落ち込んでもいられないんだ、今夜までに邪魂対策を考えないといけない。
もしかしたら今晩は襲ってこないかもしれない、でも、一応対策は考えておかないと万が一ということもある。
「エレーナ、異現神術を使った場合、実際にはどんな空間を移動するのか判ってるの?」
「それはあまりよく判ってないのです、ですから私たち巫神でも異現神術はあまり使いたがらない者が多いのです」
「そうなんだ・・」
そこでアルがちょっと違った意見を言ってきた。
「でもさぁ、今回の邪魂が神術を使ったっていう証拠はないんでしょ? だったらエレーナのような神術を使ったんじゃないって可能性もあるんじゃない?」
「!?」
さらにタミーが加えた。
「そうよ! 私たちは万全と思っていた警備を破られてちょっとしたパニック状態になってるんだわ、でも冷静に考えると邪魂が神術を使ったというのは私たちの推測でしかないのよ、もっと単純な方法でキーウェを奪っていったという可能性も十分あるはずよ」
「確かに! 神術を使った証拠はない、僕たちが勝手に神術を使ったと思い込んでるだけだよ!」
「そうですね、私も少々うかつでした、ではキーウェの小屋をしっかり調べてみましょう・・私も巫神としてはまだまだ未熟ですね」
「そんなことないよ、エレーナはりっかり巫神としての役目を果たしてくれてる、自信を持っていいと思うよ」
「ありがとう、ユウト・・・」
僕は自信を失いかけてるエレーナに僕なりに元気づけられそうな言葉を掛けた。
しかし、エレーナからありがとうと言われて、僕のほうが逆にテンション爆上げにして貰った感じで、顔が火照ってしまった。
そんな僕の顔を見たエレーナが微笑みながら。
「ユウト、どうしたんですか?顔が真っ赤ですよ、ウフッ」
ヒャア~ッ、メッチャハズ~イッ、僕ってカッコわる~・・
その後、僕たちはいろいろ意見を出し合ってキーウェの小屋の中でキーウェを奪った方法の手がかりがないか調べた。
小屋の中で変わったことがないかも老人に聞いたが特に変わってないようだ。
「でも、なにか手がかりはあるはずだよ」
僕たちは、それからしばらく調べてみたけど、これといてって手がかりらしいものは見つからなかった。
少し手詰まり感を感じはじめたときアルがキーウェの様子がおかしいのに気づいた。
「あれ? キーウェが穴掘ってる」
「何始めたのかしら?」
「なに?・・」
見るとアルの言う通り数匹のキーウェが小屋の真ん中あたりの地面を掘ってる。
「あぁ~っ! これってもしかして邪魂の侵入した跡?」
僕は穴を掘ってるキーウェを見てピンときた、もしかしたら邪魂は地中を進んできたんじゃないかと、そうすれば地上に張ってあるエレーナの防壁神術も難なく突破できる。
そしたらエレーナも同じようなことを想像したようで、
「地中なら防壁神術も届かないし、私たちがいくら地上を警備をしていても無駄ですね」
「もっと早く気づくべきだった!」
僕は自分の未熟さを痛感した。
「くっそっ!」
アルはキーウェたちが穴を掘っている場所を見つめながら、
「もし、邪魂が地下から来たとして、どうやって食い止めるの? なんか手があるのかな?」
アルは僕やタミーが思っていたことをずばり言ちゃった。
しかし、言葉にしたことで、今の僕たちにある問題をしっかり受け止めるきっかけになったようで、タミーもエレーナにいいアイデアがないか聞いたり、それぞれが動きを見せ始めた。
「エレーナ、神術とかで地下にも効果のあることってなにかないの?」
僕の問いに対してエレーナはすぐには答えなかった、いつものエレーナとは少し違うようだ。
「どうしたの、エレーナ?」
「いえ、なんでもありません、地下に対して効果的な手段ですが、私たち巫神も地下というこの世界とは違う領域にまでは簡単には関われないのです」
地下のことを違う領域と少々大げさな言い方な気もするけど、どういうことなんだろう?
「地下は別領域ってどういうこと?」
「地下は暗黒領域、別の言い方をすれば冥府の入口、邪悪なるものが溢れる世界です、ですから人種や亜人などは関わってはいけない領域なのです」
エレーナの話を聞いただけだけど、地下というエリアが超デンジャラスな領域とされてることだけは分かった、そのエリアからくる邪魂にどう対処すればいいのか僕にはまったく分からない・・
するとタミーがある提案をした。
「まぁ、実現できるかは分からないけど、地上で戦えるようにできないかしら?」
「どうやって?」
タミーの提案にアルも興味深々の様子。
「もし、今夜も襲ってくるとすれば、目標はこのキーウェの小屋よね、なら昼間のうちにキーウィをどこか別の場所に避難させておいて、小屋の中で私たちが待ち伏せるってどうかしらね?」
「なかなか泥臭い作戦だね、へへへ」
「えぇ、私としてももっとスマートな作戦のほうが好みよ、でも地下はムリなんだから、地上で待ち受けるしかないと思うわ」
タミーは仕方ないよと言いたげなゼスチャーをしながら話した。
それを聞いていたエレーナも覚悟を決めた様子で、
「そうですね、私たちに選り好みをする余裕はありません、タミーの言う通りこの小屋で待ち伏せで行きましょう」
「じゃあここの老人にキーウェを移動させてもらうよう話してくるネ!」
アルはそう言って母屋に走っていった。
更新が遅くなってしまいました、
読んで下さってる皆さん、ゴメンナサイ・・
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