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~ゴブリンの子供~

     ~ゴブリンの子供~


 一夜明けて次の日の朝、今日も天気がいい。

 僕たちはタミーとアルが集めてくれた木の実を朝食として摂ったあと、近くの川で顔を洗ったり出発に向けて身支度をすすめていた。

 パーティのリーダーらしくエレーナがみんなに、

「ユウト、タミー、アル、今日中にトレンスまで行きますよ、そのつもりでいて下さいね」

「は~い! アル頑張りま~す^^」

「私も頑張るわ、ウフ」

 タミー、アルは二人ともよく眠れたようで、朝から上機嫌でニコニコしてる。

「昨日のように魔物が襲ってくるかもしれないから、周囲の警戒は厳重にしながら進もうね」

 僕は昨日のことがあったので、一応みんなに注意を促すように言うとアルがそんな僕の言葉に反応した。

「また魔物が襲ってきたらユウトに守ってもらいたいからアルはユウトのそばにいるよ♪」

「なんだよそれ、アルだって魔物くらい倒せるだろ?」

「それでもいいの、アルはユウトに守ってもらいたいの! フフフ」

「またフフフか・・訳わかんないよまったく・・」

 テントをしまって僕たちはトレンスに向かって歩き始めた。


 人間界なら電車とか使う距離もこの世界にはそういった便利な乗り物は無いから昔のように自分の足で歩くしかないんだ。

 少し進んだところでタミーがイヤなことを思い出してしまった。

「そういえば、ここってゴブリンの巣が近いって聞いたことあるわよ」

 と言いながら言ったタミー自身が顔を険しくしてる。

「えぇ~、ゴブリン嫌~い」

 それを聞いてアルも嫌がってるようだけど、ゴブリンって?

「え~と、ゴブリンって何? そんなに嫌がるモノなの?」

「ユウトは初めて聞くのかもしれないですね」

「うん、聞いたことないけど、それって生き物?」

「そうです、ゴブリンとは妖精の一種ですが、見た目に少々癖があり、他の種にいろいろ悪さをするため嫌われています」

「ふ~ん、嫌われ者ってことだね、戦いになったりしたら手ごわい?」

「いえ、それほど強いわけでは無いものがほとんどですが、複数できますので厄介な相手です」

「でも、中には大人しくて優しいゴブリンもいるよ」

 アルもゴブリンを知ってるようだ。

「アルはゴブリンを見たことあったりするの?」

「何回かあるよ、ゴブリンを飼ってる人間もいるよ」

「ゴブリンを飼うって・・・」

そこまで話すとエレーナが割ってはいって、

「まぁ、どちらにしても用心することですね」

「は~い」「はい!」「うん!」3人3様に返事をして進んだ。

 しばらく進んだとき、なんか人の声のようなものが聞こえてるような気がした。

「ちょっとみんな止まって!」

 僕が急に止まってと言ったもんだから3人とも少々驚き、同時に魔物の襲撃かと思ったらしく周囲に目を走らせた。

「なんですかユウト?」

「ごめん、気のせいかもだけど、なんか人の声みたいのものが聞こえた気がした」

「人の声?」

「こんなところで声なんて妙ですね、もしかしたらゴブリンかもしれません」

 すぐさまエレーナとタミーはしまってある剣を出して戦闘態勢をとった。

 アルも短剣を出し、耳をレーダーのように回して周囲の音に神経を集中させてる。

「ユウト、どっちの方角から聞こえるのです?」

「う~ん、そっちだ」

 僕は声のする右を指さしながらそろりそろり進んだ。

 すると少し進んだ先になにかが倒れているのが見えた。

「なんか倒れてる」

「なに?」

「あれは、ゴブリンじゃない!?」

 アルはその鋭い嗅覚でその倒れてるモノがゴブリンだと察知した。

「えっ! マジ?」

「アルが言うなら間違いないでしょうね」

 エレーナもアルの言うことなら間違いないという、となると、あれはやっぱりゴブリンってことっぽい。

「ゴブリンってあんまり強くないって言ったよね? でもこんなところで何で倒れてるんだろう?」

 僕はゴブリンを見るのは初めてだから、いくら強くないと聞いてもやっぱり気味悪い感じは消えない。

 そろそろと進んで倒れてるゴブリンの横まで来ちゃった、マジ大丈夫なものかな?・・

 そのゴブリンは身体全体がくすんだ緑色をしてる、そしてかなり小さい。

 倒れてるゴブリンを見ていたエレーナが。

「このゴブリンはまだ子供みたいですし、足にケガをしてるようです、助けてあげましょう」

「えっ!? ゴブリンを助けるの?」

「えぇ、このゴブリンはまだ子供ですから害はないように思えますし、ケガもしてます、消えそうな命を救うのも私たち巫神の役割なのです、ゴブリンと言えど命には変わりはありません、なので助けてあげるのは当然なんですよ、ユウト」

 するとこんどはタミーが付け加えるように、

「それにぃ、ゴブリンに恩を売っておけば、後々何かの役に立つかもしれないわよ、ウフフフ」

 さらにアルまでも、

「そうだね、ゴブリンは悪賢いけど、その能力を見方に付ければ使い道はあるかも」

「ふ、ふたりとも悪代官みたいだな・・」

「アクダイカン? 何それ?」

「い、いや、なんでもない・・」

 悪代官の意味なんて教えたら、アルにひっかれそうだし、ここは適当に誤魔化すのが吉のようだ。

 エレーナがケガの部分に回復の神術を掛けて、包帯のようなモノでゴブリンの足の傷口を塞いだ、しかし、まだゴブリンの子供は意識が戻った様子はない。

「ユウト、このゴブリンの子をおぶって下さい」

「えっ、僕がオンブするの?!」

「えぇ、体力の必要な仕事は男子というのが一般的ですから」

「頑張れ~ユウト!」

 タミーは僕がゴブリンをおぶって行くのを楽しんでる、まったく他人事だからって!!


 僕がゴブリンの子を背中に乗せたことで意識が戻ったようだった。

「うぅ~」

「おっ、気が付いたみたいだ」

「誰? なんで僕をおぶってるの?」

 このゴブリンは言葉が通じるようだ。

 気が付いてオドオドしてるゴブリンの子にエレーナが優しく話しかけた。

「あなたはそこで倒れていたのです、足にケガもしてた、そこで私たちが手当をして、あなたの村まで送っていこうとしていたところです、なにも危険はありませんよ」

「そうだったんですか、でも、僕はゴブリンですよ、いいんですか?」

「あなたはまだ子供、まだ小さい命にゴブリンも人もありません、あなたを救うのは巫神としての使命でもあります」

 そこまで聞いてそのゴブリンの子供は涙を流してありがとうと、何回も繰り返し言った。

 そのゴブリンの子供は名を「キニュア」といった、キニュアの村はここから少し行ったところ、トレンスの方向とは違うけど、送り届けない訳にもいかない、少々時間のロスになるけど、キニュアの村に寄ることになった。

 トレンスへの方向と違う方向へ少し進んだ林の中にゴブリンたちの村があった、

 僕たちが林に近づくと林の奥から数人のゴブリンが出てきた。

「そこで止まれ!!」

 ゴブリンの中のひとりが僕たちに向かって長刀のような武器を構えながら止まれと指示してきた。

 ゴブリンの声を初めて聞いたけど、子供の鼻声のようでいくら威嚇してきても怖さを感じるどころか、悪いけど笑っちゃいそうだった。

 でも、あきらかに僕たちに敵意を持って警戒してる感じだ。

 しかし、僕の背中にキニュアがいることが判ると、一瞬ですっかり敵意は消え、持ていた長刀みたいな武器も投げ捨て僕に寄ってきた。

 僕は背負っていたキュニアを下ろしてゴブリンたちに渡した。

「キニュア! どこに行ってたんだ?! みんな心配してたんだぞ!」

 武器を持っていたゴブリンはそう言ってキュニアを抱きしめてた。

「キュニア、そのゴブリンは知り合いか?」

「そうだよ、この人はこの村の長のマッカイさん」

「キュニア、もしかしてこいつらに何かされたのか?」

 そう言いながらマッカイはこっちをきつい目で睨んだ。

「ちがうよ、この人たちは僕を助けてくれて、ここまで送ってくれたんだ」

「そうだったか、巫神さま、そして皆さん、キュニアを助けてくれてありがとう、そして先ほどの無礼を許して下さい」

 それを聞いてエレーナが口を開いた。

「キュニアの足の傷は私が治療の神術を使っておきましたから、しばらくすれば治るでしょう」

 それを聞いてマッカイという長たちは驚いているようだった。

「私たちゴブリンにそこまでして頂いたとは、一時的にとはいえ刃を向けましたことご容赦頂きたく・・」

 容赦もなにも、別にホントに戦う気なんて無かったし、問題ないんだけど、村長は妙に気にしてる。

 そこでエレーナがゴブリンの長マッカイに聞いた。

「この近くで邪魂が悪さをしているとかはありませんか? あれば教えてほしいのですが」

 するとマッカイはとくには聞いてないと答えた。

 でも、僕たちが邪魂退治の旅をしていると知ると、キニュアのお礼にとサラブーなる動物を二頭貸してくれた。

 このサラブーは見た目は馬そっくり、違いは頭に一本角があることくらい、それ以外はまんま馬だ。

 それに跨ってトレンスまで行けば楽にはやく着けるという・・



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