運命の糸
きらきらと 星を抱える夜空みたい
ふわふわで 風に揺れると絹のよう
大きなあなたがやってきて
星を抱えたクモの巣を
星の網を引くように
強い腕に巻きつけた
これは誰かの 夢物語?
『違うよ 誰かの生きた場所』
取ってしまって 大丈夫?
『それは 私が決められない』
とてもきれいだったのに
『それが全てと 限らない』
大きなあなたは そう言うと
透ける硝子に似た足で
か細い糸を綱渡り
糸は揺れても切れはせず
見れば 新たな糸が張る
一本 二本 十本 百本
無数の糸が煌めいた
そっと歩いた あなたの後に
みるみるうちに クモの巣が
前よりもっと 輝いて
前よりずっと 広くなり
前よりうんと 続いてる
なんて美しいのだろう
夜空がすっぽり 入り込み
淡い風さえ 受け取って
それは一層 優しく見えた
これが誰かの 生きる場所?
『そうなることもあるだろう』
使わないかも知れないの?
『これが どんなにきれいでも
誰もが 使えるわけでもない
どれほど 広く煌めいて
いつでも 先へ進めても
触れても見えない目と胸に
これは 何の価値もない』
大きなあなたは そう言うと
強い腕に絡まった 古い糸をはぎとって
虚空の底へ 抛り捨てた
消えてしまった 古い場所
なくなったら 困らない?
不安な気持ちが 押し上げる
大きなあなたは こう言った
『記憶は 過去を越えられない
越えるとすれば 生きた意思
それは既に 過去になく
記憶を引きずる 生きる意思
何を選ぶも その時 その時』
透ける硝子の 長い足
重さも音もないように
細い煌めく糸の上
ゆったり歩いて いなくなった
星図を広げた 残った巣
誰かが見上げる 輝く巣
次は 誰が来るのだろう