第5.5話 古参たちは大騒ぎ
お休みを言って手を振ってニーナが宿泊所に入るのを見送る。
そのとたん、周りの奴らがこっち向きやがった。
「おいダン。なんであの子ソロなんだよ」
いきなりプライベートなことを聞いてきやがった。
「会って2日目でそんな踏み入ったこと聞けるか。警戒されたらどうすんだよ」
周りは、「それはまずい」って静かに大騒ぎだ。
ニーナはあまり気にしてないみたいだが、ギルドに登録に来た時から古参の連中から注目されている。
というか、子どもの事をさりげなく見守る空気がこの街のギルドにはあるからだ。
子どもの冒険者は何かしら事情を抱えている子どもばかりだから。
でも冒険者は自己責任だから、積極的には手助けできない。
やれるとすれば、アドバイスや個人的に仲良くなって多少の手ほどきをしてやるくらいしかないんだけど、初心者からすればそれがあるだけで生存率がかなり変わってくる。
そんなギルドに最年少でソロのニーナは古参からは注目の的だ。
不自然なく声をかける機会を誰もがうかがっていた状態で、声をかけるのに成功したのが俺だ。
「とりあえず、肉も渡しているし自力でスープも買えてる。腹空かせてはいないよ」
周りからはよくやったって声がかかる。
どいつもこいつも、むさいのに子煩悩のおやじかってくらい騒いでやがる。
「どうせ聞いてたんだろうけど、左の森の危険を話しておいた。あと、ニーナは人懐っこいから悪いやつらに騙されないように気を付けてやってくれ」
とても静かに、でもむさい同意が返ってきたので俺たちも定宿に戻ることにする。
ニーナの隣で酒を飲むのも気が引けたので、宿に戻ってから飲む予定だ。
1回話しただけで、嬉しそうに相席を認めるニーナに、警戒心を持つように今度は話をしないとって親のような心配をしながら戻っていった。