表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

プロローグもしくはエピローグ

 爽やかな朝だった。

 そのはずだった。

 今日は十三日の金曜日ではなくて、黒猫に横切られもしなくて、カラスが鳴いてもいなかった。


 雲一つない空の下、春先の少し暖かな風を浴びて、僕は目的の場所ま歩いていた。

 僕は、お墓に向かっていた。


 彼女に会いたかったのだ。

 彼女に会って、愚痴を聞いてもらいたかったのだ。

 インターネットでも相手にされないような、くだらない愚痴を話したかったのだ。


 しかしその道中で、ネットニュースはおろか、地上波でも取り上げられるような事件に巻き込まれてしまったのだ。


 いつからだろう?

 いつからいたのだろう?

 ほんの数十秒前なのだろうか、それとも近道のために公園を抜けた時からなのだろうか、はたまた花屋で財布と相談していた時からなのだろうか、あるいはそれよりずっと前から......?

 そう考えてしまうほど唐突に、彼はあるいは彼女は僕の後ろに現れた。

 痛みというより衝撃が、怒りというより戸惑いが、恐怖というより疑問が、僕の中を駆け巡った。

 しかし、それらは僕の身体からこぼれ出た、なにかを見たときぴたりと止んだ。


 理解したのだ。

 自分がどうなったのかを、そしてどうなるのかを。

 だからこそ、僕は彼をあるいは彼女を見た。

 春になったばかりとは言え、暑そうな黒いダウンジャケットをフードまでしかっりとかぶり、マスクとサングラスをつけていた。

 笑っているのだろうか、焦っているのだろうか、あるは無表情なのだろうか?

 いや、もうそんなことはどうでもいい。


 僕は彼にあるいは彼女に微笑みかける。

 諦念という名の許しをもって。

 死んだ後まで恨むほどの義理は、ないのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ