表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

「エルフて巨乳じゃないの?」


 辺境の村――ベステュルラ村の端っこ。ちょっと寂れて年季の入った一軒家に、俺と銀髪のエルフ、そして赤髪の令嬢は暮らしていた。

 同居である。

 同棲ではない。


 そんな夢見がちなキッズに向けて言うと、女性との同棲は地獄でしかない。

 同居でいいのだ。居座っているくらいでいい。

 面倒なことがあれば撤退するくらいかちょうどいい。

 というか、そうでもしなければ面倒事を押し付けられるのだ。


 隙あらば働け。

 隙なくても働け。

 口を開けば働け。


 辺境の村人に対しての当たりが非常に強すぎるのだ。

 もう慣れたものだけど。


「ユサチ。あんたいつまで働かずに、寄生虫みたいに居座るつもりなの」


「寄生虫とは失礼な。せめて、脛をかじる虫程度だぞ」


「どっちでもクソに変わりないじゃない……」


 ちょっとばかし古めのテーブルに肘をつき、露骨に呆れる銀髪のエルフ。

 彼女が言う「ユサチ」とは、俺がこの世界へ転生した時の名前で、もう一つの本名みたいなものだ。

 ユサチ・ベーパル。それが辺境の村人に転生した俺の、名前であって寄生虫のユサチという異名まで持ったそこそこ村の中で有名な人間だ。


「クソでもな。排泄物でも住めるならどこでもいいだろ? どうするんだよいちいち、ここは嫌、ここも嫌て選んでいて一番いい物件を奪われたら」


「クソを居場所にしたがるのなんてアンタくらいだって」


 まぁ糞みたいな人間にはお似合いだと。

 彼女はそう言ったが、確かにそうだな。

 実際、転生する前も結構クソダメみたいな所にいたし――


「そうだ、クソと言えば俺が転生する前も、よくクソダメみたいな所にいたな」


「はぁ? クソダメみたいな所って、堆肥場とかそういうところのことでしょ?」


「いや、不良達がたむろっていてタバコなんか吸ってるし、ゲームもしていて授業なんか出ずに遊んでいる場所だな。

 よく皆が近づかない中、俺だけがいたんだよ」


「はぁ……」


 銀髪のエルフ――クルフは、話が理解できない様子でとりあえず相槌を打つ。

 まぁ、この異世界にタバコはあってもゲームなんかないし、辺境の村だから座学をするような学校なんかないしな。

 そう思うと、この毎日の暇を潰すならゲームとかは必需品なわけか。今度作ってみよう。


「見てみるか? あんま覚えていないから、たむろっていた場所しか出ないかもしれないけど」


 俺は懐から先日二人へお披露目したスマートフォンもどきを取り出す。

 別に異世界転生した時のボーナスとかではなく、神様から授けられた異能力でもなく、俺が時間の限りを尽くして精力を注いだ魂の結晶だ。

 完成まで十年間。いやはや、長かったが、なんとか魔力を注ぐことで術者の記憶を映し出すことができるようにした最高傑作だ。


 それ以外の機能はないが。


「うぅん。まぁ、ちょっとだけ、なら……」


 クルフもやっぱりこの世界で言うところの異世界が気になるのだろう。

 このスマートフォンもどきを見せた時も、酷く驚いていたし、当然ちゃ当然か。

 俺もこの異世界に来て気になるものはたくさんある。

 服の下はどうなっているのかとか。

 胸の突起は何色なのかとか。

 なぜ、エルフなのに巨乳じゃないのかとか。


 今まで見てきたアニメのエルフなんて、巨乳だったぞ。結構お世話になったし。素晴らしい作品ばかりであった。


 そう思いながら、クルフにも見えるよう移動し、彼女の目の前へスマートフォンを置く。


「動画再生」


 お決まりの詠唱を済ませると、スマートフォンに円形の魔術式が吸い込まれ、液晶画面が明るく光る。

 そして、流れたのは――


 金髪ブロンドの巨乳エルフがエッティンガーな目に合うアニメの一部分であった。


「なんてもの見せてんだ!!!」


「――おぶっ!?」


 すぐそばで覗き込んでいた俺の顎へ、綺麗なクリーンヒット。

 この辺境の村で、狩人として働いている彼女の腕力があれば俺の脳を震わせ、気を失わせるなんて容易いことであった。


 綺麗な放物線を描きながら、俺は床へ受け身もとれず天を仰いでくたばる。

 ちょっと、直前で記憶がすれ違っただけなのに……酷い。


 こうして、気絶した俺に対してクルフは真っ赤に赤面した後、自身の胸に手を添える。


「……そ、そんなに大きい胸が、いいのかしら……」


 とりあえず、クルフを前にした時はあまり巨乳な作品を思い浮かべるのは控えるようにした出来事であった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

そして、いつも応援ありがとうございます。


辺境の村ということで、寂れてしまった拠点というよりかは自国の防衛拠点最前線という認識のため、働いていない者は家すら追い出される村です。

働かざるもの住むべからざる。


魔物を狩猟し、他国からの旅人を受け入れ、時には賊と戦うそんな村なわけですから、働いていない寄生虫は厄介払いされやすい。

そんな感じです。


まぁ、働かずに飯がでて好きな時間に寝て、好きなことをたくさんするのは楽しいんですけどね!!!!!!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ