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第7話 証拠隠滅!?


 ブキラのもとから、彼が毒の矢を生み出した証拠を持ち帰った僕。

 裁判に持ち込まれると厄介だから、先に手を打とう。

 僕はその足で兵士団の兵舎を訪れた。

 兵士長さんに面会を頼む。


「おう、お前はブキラのところの下っ端のカグヤじゃないか! ブキラから話は聞いているんだ! お前のせいで回復の矢が毒の矢に変わってしまったらしいじゃないか! 自首しに来たっていうのか……!?」


 兵士長は僕をにらみつけた。

 ブキラの口車にのせられて、僕を犯人だと思っているようだ。


「違うんです。ここに証拠があります! 悪いのは全部ブキラです!」

「なんだと……!? 証拠……!?」


 僕はブキラの工房から持ち出した矢と、その素材を机に並べて見せた。

 そして鑑定結果も、鑑定用紙に映し出したものを提出する。

 これは鑑定士ギルドに行って正規に発行してもらったものだから、証拠になるはずだ。


「こ、これは……!? 本当なのか……!?」

「はい! そしてブキラはそれを隠蔽しようとしています! しかも僕にすべての罪をかぶせるつもりです!」

「そんな……あのブキラが……!」


 ブキラは工房の中ではぶっきらぼうな性格だが、外面だけはよかった。


「危うく騙されるところだった……ありがとうカグヤ。疑ってすまなかったな」

「いえ、大丈夫です。わかってもらえれば」


 これで兵士団からの訴えは取り下げられるから、裁判はなしになる。

 だからブキラが賄賂を贈った裁判官も無駄になるね。

 あとは改めて別の裁判所に、ブキラを訴えればいいだけだ。


「それにしても……ひどいなコレは」


 兵士長さんはブキラの使っていた素材を手にしてそう言った。


「こんな粗悪な素材で回復の矢を作っていたなんて……騙された。吐き気がするよ……」

「ええ、ひどいですよね。これじゃあ、毒の矢にならなくても感染症の危険もあります」

「もうあのブキラとかいうやつは信用しないことにするよ。知らせてくれて本当に感謝する。我々、正義を愛する兵士団として、君を誇りに思うよ。疑われても冷静な判断力を持って、尊敬に値する」

「いえ……そんな……僕はただ自分の疑いを晴らしたかっただけです」


 あまり褒められてもくすぐったいので、僕はその場をあとにしようとする。

 去り際に、兵士長さんからこんなことをきかれた。


「なあカグヤ。モンスター襲来の時についてなんだが……。肝心のモンスターを倒した奴を誰も知らないっていうんだ。なにか見ていないか……?」

「いえ……僕は……なにも……」

「そうか。ならいいんだが……。またなにかわかったら兵士団まで教えてくれ」

「はい、そうします」


 よかった、あのモンスターを倒したのが僕だというのは、まだ知られていないようだ。

 あまりことを大きくしたくはないし、別に英雄になりたいわけじゃないしね。

 あの時意識をもって僕を見ていた兵士さんがいたけど、彼はまだ病院にいるようだし……。

 とりあえず今のところは大丈夫そうだ。





【side:ブキラ】


 結局、回復の矢が毒の矢に変化したのは、俺の天才的なスキルが原因だった。

 まあ、天才にも弱点はあるものだ。


「このことがバレるとまずいな……。まあ裁判官は買収してあるから大丈夫だろうが、矢を調べられでもしたら非常にまずい」

「ですねぇ……」

「おいマキ! この矢をすべて焼却するんだ! 証拠がなかったら、なにも鑑定できないからな! はっはっは!」

「はい! わかりました!」


 兵士団から戻ってくるときに、すべての矢は回収してある。

 だから燃やしてしまえば、完全犯罪成立だ。





「ふぅ……これでよし」


 すべての矢を焼却し、俺は安堵する。


 そのときだった――。


 突然、兵士長がどかどかと工房内に入って来た。


「おいブキラ……!」

「な、なんだ……!?」


 まさか俺の策略がバレたのか……?

 いや、そんなはずはない。

 もうすでに回収した矢はすべて廃棄したから、どこにも証拠はないはずだ。


「よし、連れていけ」

「は……? なんだ……!? 離せクソ!」


 俺は屈強な兵士たちに囲まれて、羽交い絞めにされてしまった。

 どこでバレた……!?


「証拠はあがっているんだ。言い訳なら兵舎できこう」

「馬鹿な……!? 証拠だと……!?」

「これが証拠だ。カグヤが提出してくれた。お前のやろうとしていた卑劣な行為は、すでに全部バレている!」

「なにぃ……!? クソ! カグヤだとぉお!? あのゴミクズめ……!!!!」

「うるさい! ゴミクズはお前だこのカス!」

「うわああああ! 俺は悪くない! 離せえええええ!」


 兵士たちだけでなく、警官も外に待機していた。

 今回ばかりはトリマーとマキも制止されて着いてきてはくれない。

 俺は単身、連行されてしまった。


 その後俺がどうなったかは、話したくもない。

 俺を恨む屈強な男たちに囲まれて……そのあとは想像通りだ。


「くっそおおおおおお! カグヤ!!!! 全部アイツのせいだ! 俺の順風満帆な人生が、あいつのせいで狂ってしまうんだああああ!!!! 許せねえ!!!!」


 独房で、俺は壁を殴りつけた。

 しかし、なにも反応はない。

 そこにあるのはただの孤独だけだった。


「絶対に出てやるんだ! くそ、金ならいくらでも払う! 俺を出せ! この!」


 まあ、ボーンさんがこのことを知れば、俺はすぐにでも保釈されるだろう。

 あの人にはそのくらいの権力と金がある。

 そうなれば、カグヤに復讐してやる……!!!!





 愚かにも、自らの非を決して認めずにカグヤを恨むブキラ。

 そんな彼が、今後さらなる破滅の道をたどることになるのは、想像に難くない――。


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