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第1話 武器のつくれないお前は追放だ


「カグヤ=クラーセコ! 武器の一つもろくに作れない無能め! お前は今日でこの武器職人ギルドを追放だ!」


 新しいギルド長である、ブキラ=ボウクエットは僕にそう言った。

 ブキラはぶっきらぼうな性格の大男で、いつも僕をいじめてくる嫌な奴だ。


「それはわかったけど、どうして!? これまで僕なりに頑張ってきたつもりなんだけど……」


 僕は武器職人ギルドの見習いだったけど、雑用はちゃんと言われた通りにこなしていた。

 少ないお給料と、キツイ職場環境にも文句を言わずに働いてきたんだ。


「お前が職人のくせにろくに武器も作れねえ無能だからだよ! まだわかんねえのか? 才能がないって自分でもわかってるんだろ?」

「う……そ、それは……」


 ブキラの言う才能というのは、スキルのことだ。

 僕には武器を作るのに役に立つようなスキルはなにもない。

 【家具職人】――それが僕の唯一のスキルだった。

 武器屋の息子なのに、家具職人だなんて笑っちゃうだろ?

 でも、このギルドのあらゆる家具は僕が作ったものだ。

 僕も自分にできることで貢献している。


「で、でもどうして今更なんだ!?」

「それは俺がこうしてギルド長になったからだ! 今までは前のギルド長に忖度(そんたく)して、甘く見てやっていたが、今日からはそうはいかねえ!」


 前のギルド長というのは、僕の父親のことだ。

 僕の父、ボーン=クラーセコは偉大な武器職人だった。

 この武器職人ギルド【神の(つち)】は、代々クラーセコ家が継いでいる有名ギルドだった。

 だけど、父は僕じゃなく、ブキラをギルド長に選んだ。

 まあ、僕のスキルが家具職人じゃ仕方がないよね……。


「で、でも父さんがそんなこと許すはずがない! 武器を作るスキルはないけれど、僕だって仕事がなくちゃ困るんだ……!」


 スキルはなくたって、教われば武器は作れる。

 それ以外にも、これまで通り雑用だってやるつもりだ。

 僕が路頭に迷わないように父さんも考えてくれているはず……。


「残念だったなぁバカめ! すでにボーン前ギルド長にも話は通してあるんだよぉ!」

「え……!?」


 ブキラが何を言っているのか一瞬わからなかった。

 それってつまり、父さんが僕を見捨てたってこと……?

 すると奥の扉から、決まずそうな顔の父さんが現れた。


「すまないカグヤ。ブキラの言う通りだ。お前はもうこのギルドを出ていってくれ。いや……クラーセコ家からもだ。お前は永遠に、追放だ……!」

「そ、そんな……!? なんで……!?」

「わかるだろう? ブキラがギルド長になるんだ。お前がいると他のものの士気にも関わる。武器もろくにつくれないような無能のお前を、ただ前ギルド長の息子だからって置いておくわけにもいかんのだ」

「う……父さんまで……」

「お前には期待していたんだがな……。期待外れだったよ。はぁ……。せめて武器系スキルの一つでもあればなぁ……! クソが! このボンクラ息子め! 見た目も女みたいで武器を作るのにふさわしくないしよぅ……! 子ガチャ失敗だよまったく」

「と、父さん……!?」


 一気に態度が豹変した父さんを目の前にして、僕は驚きを隠せない。

 どうしてだろう、今までこんな父さんは見たこともない。

 去年まではあれほど優しく僕を男手一つで育ててくれたっていうのに。


「それもこれも産まれた直後のスキル鑑定ガチャのせいだ! あそこで私の人生は狂いだした! これまで我慢して育ててきたがもう限界だ! 武器の作れないお前は一族の恥さらしなんだよ!」


 まるで今まで我慢してきたうっぷんを吐き出すかのように、父さんはまくしたてた。

 そんな……そんなふうに思ってただなんて……。

 つまり、今までの愛情は嘘だったってことなのか……!?

 だとしたら、そんな……! 悲しすぎる。

 確かに、ブキラがこのギルドにやってきてから、父さんは少し僕に冷たくなった。

 でもそれは、僕が大人になったからだと思ってたのに……!


「はっはっは! これでわかっただろう!? もうこの家にお前を必要としている人間は一人もいないんだよ! さっさと消え失せろこのゴミめ!」

「っく……! 僕はいらない子なのか……!?」


 今まで必死に、父さんの喜ぶ顔が見たくて頑張ってきたのに!

 もともと僕は争いや武器は苦手だったんだ。

 それでも、なんとか後を継がないとと思ってやってこれたんだ。

 でも、それも無駄だったわけだね……。

 全部、僕が授かったスキルのせい……。


「代々うちの家系は武器系の制作スキルだというのにまったく……お前は。もしかしてあの女がどこかで浮気でもしてたんじゃないのか……?」


 父さんはそんなことを口にする。

 僕はその瞬間、頭の中が煮えたぎるような怒りを覚えた。


「母さんを馬鹿にするな!!!!」


 死んだ母さんを侮辱することは、父さんであろうと許さない。


「うるせえなぁ無能のくせに! お前はもう私の息子じゃないんだカス!」

「そうだそうだ! もうボーンさんの息子はお前じゃなくて俺なんだからな!」


 ブキラは突然そんなことを言い出した。


「どういうことだ……!?」

「はっはっは! まだわかんねえのか? 俺が正式に養子になったんだよ! だからマジでお前は用済みなんだよ! 莫大な遺産も、このギルドの所有権も俺のものだ!」

「っく……!」


 まさか……本当に……?

 僕はすべてをブキラに奪われるのか……?

 父さんは前から才能のあるブキラを気にかけていたけど、これほどとは……。

 たしかに、ブキラには武器系の制作スキルもあって、向いている。

 彼には【毒属性付与】と【ナイフ研ぎ】という、強力な武器職人スキルがあった。


「で、でも……命日には母さんの墓参りにくるくらいはいいだろ……?」


 最後に、僕は父さんに尋ねた。

 この武器職人ギルドは、僕らの家でもあり、裏には母さんの墓もある。


「はぁ? 寝ぼけるなよ? この家の敷居は二度とまたがせん! お前はもうクラーセコ家の人間ではないんだからな!」

「そ、そんなひどい!」

「ひどいのはお前の能力だ! このウスノロめ! あの売女の墓なんぞ壊してしまってもいいくらいだ! お前のようなゴミクズしか産めなかった無価値な女の墓なんてな!」

「……!?」


 いくら父さんでも言いすぎだ。

 あれほど愛していたはずの母さんをそこまで言うなんて……!


「うおおおおおおおおおおお! 許せない!!!!」


 僕は一心不乱に殴りかかっていた。

 死んだ母さんをそこまで侮辱するなんて、黙っていられない。


「触るなクズめ! 無能がうつる!」

「うわ……!」


 しかし僕なんかのパンチじゃ、父さんには軽く一蹴されてしまう。

 僕は……無力だ……。


「私はブキラの母と再婚も予定してるんだ。大事な顔に傷がついたらどうしてくれるんだ!」

「え……?」


 そんな……。

 だから母さんをそこまでひどく言ったの……?

 もう父さんに、前のような優しい心は残っていないのか……!?

 信じていたのに、裏切られた気分だ。


「わかったよ……。本当にもう僕は必要ないんだね……」

「ようやくわかったか、ゴミめ」

「これだけは……持っていかせてくれよ?」


 僕は最後に、母さんの写真を持っていこうとする。

 しかし――そんな僕の手を、ブキラがナイフで制止する。


「オイオイオイ、盗難は困るなあ?」

「っく……!」


 これさえも許されないのか……!

 もう馬鹿らしくなって、僕はすべてがどうでもよくなった。


「もういいよ……!」

「それはこっちのセリフだ。バカめ」


 僕は何も持たずに、逃げるようにその場を飛び出した。

 ギルドを、家を、父を、母を――そのすべてを失った。

 いや、なにもかもをブキラに根こそぎ奪われたような、ひどく屈辱的な気分だった。





 さてさて、理不尽なまでのひどい扱いを受け、追放されてしまったカグヤ。

 だがブキラもボーンも、カグヤの本当の能力を、知ろうともしなかった。

 カグヤの作った家具の、その本当の価値に気づかずに……。

 彼らはこの後、とんでもないしっぺ返しを受けることになる――。


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[気になる点] >ブキラの言う才能というのは、スキルのことだ。 あらずじはあとのスートリー展開は書いますから、一話のやりとりおかしいと思う。 もし才能 = スキル = できるのことならば、スキル判明…
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