一話
とある日曜日の朝。
東京の都心部で、高校生のカップルが手を繋いで歩いていた。
「うぅ、やっぱり東京は人が多いよぅ」
彼女は人混みに圧倒され、涙目になりながら体を縮こませている。
「大丈夫だ美海! 俺がついてる! 」
彼氏は美海の手を強く握り、大きな声でそう言った。
「楓がいても、なにも解決しないよ」
「なに!? 」
楓は真剣に考える素振りをした後、
「じゃあ、俺はいなくても一緒って事か……? 」
「そんな事、ないよ」
がっくしと項垂れる楓に対し、小さな声で否定する美海。意地悪言ってごめんねと、美海は心の中で謝る。
二人は暫く歩いた後、朝食を取りに適当な喫茶店に入った。
古い印象を受ける喫茶店であったが、店内はオシャレでとても綺麗だ。二人は席に着いてメニューを確認し、モーニングセットを注文して一息つく。
「電車、疲れたか? 」
楓と美海は隣の県である、神奈川県横浜市に住んでいる。電車で片道約1時間ではあったが、人混みが苦手で電車慣れしていない美海にとっては憂鬱だった。楓はそれを気遣い、優しい顔で聞いた。
「ううん、大丈夫だよ。楓が居てくれたから」
「そうか」
さっきの弁明だと言わんばかりに美海は言った。楓も安心そうだ。
「よしっ、今日はいっぱい遊ぼうな! 何したい? 」
「うーん、ショッピングしたいかな。東京に売ってる服ってお洒落なの多いし」
「そうだな。じゃあ、イヲン行こうか」
「イヲンなら横浜にもあるよ!? 」
「イヲン嫌いなのか? イヲンだぞ!? 」
「そうじゃなくて! 」
その後イヲン以外の場所がいいと、美海は楓を必死で説得した。イヲンは食事からショッピングまで幅広く楽しめる素晴らしい場所であるが、せっかく東京に来たのだから東京らしいところに行きたい。と美海は思ったらしい。
モーニングセットを美味しく頂いた後、店を出た二人はダイバーシティに向かった。時刻は正午。今日の天気は非常に良く、体に当たる秋風が気持ちいい。
絶好のデート日和に、二人のテンションはかなり高まっていた。
二人は手を繋いで駅に入る。改札では惜しみながら手を離し、すぐにまた手を繋ぎ直した。普段、地元では人目を気にして中々できない、恋人繋ぎだ。
ダイバーシティに到着した。外見は想像以上に大きく、人も多い。中には飲食店から雑貨屋まで様々あり、案内がないと出口もわからなくなるほどに広い。
二人は早速、手短にあったオシャレな洋服屋に入った。適当に歩き回りながら美海は楓に似合いそうな服を探し、楓は美海に似合いそうな服を探した。この時も当然、別行動はせずに手を繋いだままだ。
お互いに着せたい服を見つけた二人は、試着室に向かった。
試着室の前の高級感漂う椅子で、そわそわしながら楓は待っていた。待つ事数分、美海が頬を赤らめながらカーテンを開けた。
「ど、どうかな? 」
そこには、天使が立っていた。
幼さが残る愛くるしい顔立ちに、大きな瞳。
ギュッと抱きしめたくなるような愛くるしい表情。
中学生にしか見えないほどの、小柄な体つき。
そんな天使ちゃん(高校一年生)は大人っぽい雰囲気の白のワンピースに身を包み、恥ずかしそうに俺を見つめる。
「後ろ、向いてくれ」
「う、うん」
天使が、くるっと後ろを向いた。ロングスカートがふわっと宙に浮き、静かに戻る。高得点。
天使はソワソワしているのか、少し左右に揺れている。揺れるたび、高めの位置で一括りにされた艶やかな黒髪も、肩のあたりで揺れていた。時々見えるうなじには、あまり色っぽさを感じないが、もうとにかく可愛い。
「もういい? 」
「うん」
美海は先のようにくるっと振り返ったが、ロングスカートは浮かなかった。でも高得点。
「可愛い」
「ありがと」
「好きだ」
「う、うぅ」
美海はカーテンをぴしゃりと勢いよく閉めた。
「天使だ! 天使が我が目の前に! 」
「他の人もいるからやめて! 」
美海はカーテンから顔だけ出して、静かに叫んだ。
次は楓の番だ。試着室に入って着替える楓を、美海は前の椅子で座って待っている。
待つ事数分。楓が胸元を両手で開いたセクシーなポーズ(美海がリクエストした)をとりながら、恥ずかしげもなくカーテンを開けた。
そこには、堕天使が立っていた。
平凡な顔に不釣り合いな黒いロングコートに黒のTシャツ、黒いズボン。Tシャツには胸のところに十字架が描かれている。
さらに服の素材はほとんどが革できており、なんとも動きづらい。ポーズを取るのも一苦労だ。
そんな厨二っぽい服装にも関わらず、楓は『斉藤さんだぞ』と言わんばかりのポーズで登場した。
美海は第一声、
「かっこいい」
と、恍惚の表情でうっとりと声を漏らした。
「そうだろ? 」
楓はおでこに手を当て、黒い髪をかき上げた。足元を見ると、少しだけ背伸びもしている。中肉中背で身長も平均のため、モデルのように着こなせているわけではないのだが、本人は満足げだ。
「うん。でもそのポーズは鬱陶しい」
「え、あ、ごめん」
楓はピシッと気をつけした。
結局、服は買わなかった。というか、高すぎて買えなかった。
楓は元の地味な服装に、美海はデニムのオーバーオールに身を包み、違う店に移動した。
次に入ったのは、綺麗な指輪やネックレスが沢山並ぶ、アクセサリーショップ。高級な商品ばかりではなく、手頃な価格の物も置いている。
「きれい……」
「あぁ、綺麗だ。全部欲しい」
「うん、別に全部はいらない」
呆れもせず、冷静に突っ込む美海。
暫くアクセサリーを眺めながら歩いていると、美海の足が止まった。
「これ、今日の記念にどうかな? 」
美海は指輪のついたペアネックレスを指差した。色はピンクと黒の二色。売り文句には、【二人の愛を強く感じるアクセサリー】と書いてある。
「うーん」
楓は少し黙り込んだ。
ネックレスの値段は、二つ合わせて22,000円。高校三年生の楓はアルバイトをしている為、出せる金額ではある。しかし美海の性格上、割り勘じゃないと文句を言ってくるに違いない。美海はまだ高校一年生。アルバイトもした事がない為、お金に余裕があるとは思えない。
「だめ? 」
上目遣いで楓を見つめる美海。ここで買わないのは男じゃない。でも、
「俺、ネックレスとかはあんまり興味ないかな」
「そっか」
叱られた子犬の様にしょんぼりした様子の美海。
「ごめんな」
「ううん、全然。ちょっといいなと思っただけだから」
努めて笑顔で美海はそう言った。
その後楓と美海は、手を繋いで店内を回った。美海に変わった様子はないのだが、楓にはそれが余計恐ろしく感じていた。
その後、店を出てエスカレーター付近にあるカラフルな椅子に腰掛けて休憩する事になった。
穏やかな時間が流れる中、不意に楓が立ち上がった。
「ごめん、ちょっとうんこ」
「わざわざ言わないでいいから! 」
楓はお腹を押さえながら、トイレへ向かった。
待つ事数十分。足をぶらぶらさせながら待ちぼうけている美海の元へ、楓が帰ってきた。
「すまん、俺のベルゼビュートが穴に引っかかってて、遅くなった」
「それ、待たせた彼女に言うセリフ!? 」
美海は思わず立ち上がり、静かに叫んだ。
それから近くのゲームセンターに入り、プリクラを撮ることになった。二人でプリクラを撮ったことは何回かあるのだが、恋人になってからは初めてのことだ。
撮り終わってプリクラ機の前でシールの完成を待つ二人。出来上がったシールを楓が切り離し、美海に渡した。
「ふふふ」
「嬉しそうだな」
「だってここ、彼女って書いてる」
美海は自分の顔の下に書いてある『彼女』という文字を指差して、にっこりと笑った。
「俺の所には彼氏って書いてるな」
「うん! 」
楓がうんこから帰ってきた時とは違い、上機嫌の美海。よほどプリクラを撮ったのが嬉しかったのか、嬉しそうに見つめた後、宝物を扱うような手つきで財布の中に仕舞った。
「ほんとに嬉しい。携帯の待ち受けにしたいくらい……」
「そうだな」
美海は壊れそうな笑みを浮かべた。楓はそんな美海の手を、強く握りしめる。
二人はそのまま手を繋いで店を出た。
次はカラオケに行った。店内は少し混んでいるらしく、受付まで並ぶことになった。数分後、自分達の番が来た。
「お待たせしました。何名様ですか? 」
「二人です」
「お二人ですね。ええっと、失礼ですが……」
受付のお姉さんが、急に下を向いて縮こまってしまった。
目線の先にはメニュー表がある。そこには【カップル半額!】と、アニメでしか見た事がないキャンペーンが表記されていた。
恐らくお姉さんはカップルかどうか聞かなければならないのだが、もし違っていたらどうしようと考え、縮こまってしまったのだろう。本当に良い迷惑なキャンペーンだ。客としては最高だが。
「カップルですよ! 」
「そ、そうなんですね! すみませんわざわざ、ありがとうございます! 」
察して言った楓に、察してくれてありがたいと感じたお姉さんがぺこぺこ頭を下げた。
「学生証はお持ちですか? 」
「あ、持っていまーー」
楓は言いかけて辞め、
「いえ、持ってません」
と、悲しそうに答えた。
「美海は出すか? 」
「ううん、いい」
小声で話す楓と美海。楓はお姉さんと目を合わせ、
「二人とも、学生証は無しでお願いします」
「かしこまりました」
その後、利用時間や機種を選択してから部屋に入った。
時刻は午後4時過ぎ。少し歌った後、休憩する二人。
お腹が空いたのか、美海は二人で食べようと言ってチョコレートパフェを一つ注文した。
「はい、あーん」
「あーん」
パフェの上に乗ったポッキーを美海が手に取り、楓の口の中に入れた。ポキッと言う気持ちいい音が、楓の口元で鳴る。
「はい、あーん」
「あーん」
今度は楓がパフェの上に乗ったキノコの形をしたチョコを美海の口に入れた。チョコレートの甘さと、スナック部分のしょっぱさが絶妙に噛み合い、口の中を幸せにしてくれる。
「おいしい? 」
「おいしい」
楓が聞いて、美海が答える。
二人の、幸せな時間。
楓はそんななんでもない幸せに悶々としてしまい、そっと美海にキスをした。
「んっ」
美海が小さく喘ぎを漏らす。
離れてしまうと切なくなって、美海は楓にキスをする。
「んんっ」
今度は頭が溶けてしまいそうなほど濃厚で熱いキスをした。口の中がチョコレートの甘さでいっぱいになるのを感じる。
10秒くらい経って、段々と美海が現実に戻ってきた。
部屋のドアの中央部分はガラスでできており、廊下が見える。今は人がいないが、もしかしたらさっき通ったかもしれないと考えると急に恥ずかしくなってきた。
「も、もうおしまい! 」
「えー」
顔を真っ赤にして押しのける美海と、残念そうな楓。
美海は恥ずかしさを紛らそうと勢いよくパフェを平らげる。
「え、俺の分は? 」
「ごめん、お腹がベルゼビュートした」
「それ、どう言う意味? 」
美海は澄ました顔でそう言った。本当はパフェを一気に食べたせいで頭が痛い。
その後、カラオケデートは大いに盛り上がった。美海は歌が上手く、高得点を連発しては楓が「凄い凄い」 と褒め称えた。
楓は歌があまり上手ではなかったが、盛り上がる曲を連続して歌って美海を楽しませた。
そんな感じであっという間に時間は過ぎてゆく。気がつけば午後6時を過ぎていた。
「お腹すいたなぁ」
カラオケ店を出てすぐ、美海が呟く。
「さっき食べたのに? 」
「さっき食べたのに」
楓の質問にオウム返しで答える美海。女の子にとって甘いものは別腹という噂があるが、どうやら本当らしい。
「じゃ、じゃあさ」
「ん? 」
楓はたじろぎながら美海の手をぎゅっと握り、
「行きたい店があるんだ」
「そうなんだ。ふふっ、楽しみ」
不慣れな様子で美海の手を引いて歩く紳士、楓。その後ろ姿には、『美海を楽しませる為、素敵なディナーをご用意致しますよ』 といったかっこいい漢を感じる。美海は素敵な彼氏を持ったなと、胸がときめいた。
電車で移動し、少し歩いて数分後。
夜の街を歩く、二人の高校生カップル。辺りにいかがわしいお店が並び、妖艶な空気が流れていた。
「ほんとにこの辺りなの? 」
「あぁ、もうちょいだ」
不安になって尋ねる美海に対し、はっきりしない様子の楓。
周りに大人しかいない為、二人は不自然に目立っていた。客引きのお兄さんも、流石に二人には声をかける事ができない。
そして、目的地にたどり着いた。
店には、【休憩3000ポッキリ!】【宿泊8200円!】と書かれている、清々しいほどのラブホテルだった。
「えっと、ここが予約してたレストラン、かなぁ」
訥々と、白々しく、よそよそしく、楓が美海をちらちら見ながら言った。
「……」
「さて、入るかー」
「楓? 」
「ん? どした? 」
「どういうこと? 」
「……」
黙り込む楓。緊張で手が汗ばむ。美海は光を失った目で楓の顔を覗き見る。
「ここ、一人3000円でディナーを楽しめるらしいぞ? 」
楓が看板を指さして言った。美海は嘆息し、一言。
「帰ろっか」
「ちょっと待ってくれ美海! いえ待ってくださいお願いします! どうか俺にチャンスを! 」
「嫌」
「お願いだよ美海ぃ。入ろうよ〜」
肩を撫でる楓に対し、美海は世界一怖い笑顔を作る。
「え、冗談だよね? 」
「……はい」
楓は素直に頷いた。
結局、帰りにファーストフード店に寄って夕食を済ませる事になった。手を繋いで店に入り、席につく。一見ラブラブのカップルに見えるのだが、美海は一切笑わない。
「機嫌直してくれよ美海〜」
「……」
「美海、べろべろばぁー」
「……」
楓が面白い顔を作りながらべろべろばぁした。しかし、効果は今ひとつのようだ。
「あっちょんぶりけ」
「……」
またもや、効果は見られない。
「いないいない……はぁ」
「ぷっ」
いないいないばあをしようとするが、途中で諦めてため息をつく楓を見て、美海は思わず吹き出してしまう。
「もういいよ楓。もう怒ってないよ。ほんともう、馬鹿だなぁ」
美海は目の端に涙を溜めて笑いながら言った。
「本当か? 許してくれるのか? 」
「別に悪いことはしてないと思うし。ただ、騙すみたいな誘い方が嫌だっただけで。でも私達は恋人である訳でその、そういうことだって順序を守ってくれれば……」
尻すぼみになりながら早口で喋る美海。
「すまん、聞こえなかった」
「さ、何食べよっかなぁ」
「え、聞こえてない? 」
楓を無視する美海は、少し笑っていた。
ディナーを楽んだ後、二人は店を出た。後はもう、帰るだけだ。
「あーあ。早かったなぁ」
帰り道。駅の前で美海が呟いた。
時刻は午後8時半を過ぎている。帰るのは10時くらいになるだろうか。
「ほんとだな」
「もうちょっと遊びたかったなぁ」
「俺もだ。でもお母さんに怒られるから、今日は帰らないとな」
「そうだね」
二人は手を繋ぎ、東京の夜空を見上げていた。
電車に揺られ、美海がうとうとしはじめた頃。楓はそっと美海の顔を自分の肩に乗せた。
そしてごそごそとポケットからある物を取り出し、気づかれないようにそっと、美海の首元に手を伸ばす。
それから数十分後。残り二駅で目的の駅に辿り着くという頃に、美海が目を覚ました。
「ん、あれ、寝てた? 」
「おはよう。もうちょっとで着くよ」
「そっかぁ。ん? なにこれ? 」
美海が胸に光るネックレスを手に取る。
「プレゼントだ」
「これ、あの時の? 」
「そうだよ」
『あの時』とは、楓がベルゼビュートを排出していた時のことだろう。いや、排出していたのも嘘なんだろうけど。
「ふふっ、嬉しい」
美海はうっとりした顔でネックレスを手に取り、ニコニコしていた。暫く見つめた後、楓の顔を愛情たっぷりの笑顔で見つめ、
「ありがとう楓。大好き」
愛くるしい矢を放った。効果は抜群だ。楓はあまりの可愛さに言葉を失い、ただの屍と化した。しばらくは天国から戻ってこないつもりらしい。
こうして、二人は目的の駅に辿り着いたのだった。
改札を抜け、駅の前で立ち止まる。
お別れの言葉を、告げる時間がやってきた。
「今日はありがとな」
「うん、こちらこそ。楽しかった」
「また、遊びに行こうな」
「うん」
俯きながら寂しそうな声で話す、美海と楓。久しぶりのデートが楽しかったからこそ、別れは辛いのだろう。
「じゃあ美海、先帰ってくれるか? 」
「うん、わかった」
「気をつけて帰るんだぞ」
「うん、楓もね」
お互いの心配をした後、美海は努めて可愛い笑顔を作り、
「ばいばい」
と手を振って帰っていった。
暫く歩いて、楓から見えなくなるギリギリの場所で一度振り返り、「ばいばい」小さく手を振った。そんな美海がたまらなく可愛いのは、言うまでもないだろう。
美海を見送ってから俺は、少し遠回りをして家に帰ることにした。意味もなく公園に行き、ブランコを二、三回漕いだ後、コンビニに向かう。
時刻は午後10時半過ぎ。そろそろ帰らないと親が心配する時間帯。しかし、まだ帰らない。
「あーあ、今日は楽しかったなぁ」
そんな事を夜道、一人で呟いた。やけに静かに感じる帰り道。いつもは通らない道をわざと通ってコンビニに着いた。
コンビニ前でいつも飲まない缶コーヒーを一気飲みし、一息ついた。なんだか頭が冴え渡ってきたような気がする。きっとカフェインのせいだ。なんだか心までスッキリしたような気もする。コーヒー名が【モーニングショット】だったので、今はまだ朝という事にしたい。
「もう、いいかな」
頃合いを見て帰宅する事にした。
コンビニから歩いて20分、大きな一軒家が見えた。俺の家だ。
玄関の前でもう一度息を整え、頭をリセットさせる。
「よしっ! 」
なにか強い覚悟を決め、玄関を開けて中に入る。目の前には誰もいない。しかし、右隣にあるリビングからは光が挿していた。
俺はそっと、リビングの扉を開いた。
そこには女の子が一人、ジャージ姿で立っていた。
――あぁ、今日は楽しかったな。
――でも、今は泣きそうだ。だって、、
「おかえり、お兄ちゃん」
「ただいま、美海」
――また、兄妹に戻ってしまうのだから。