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 拘束されたグレンフリードは、その後もしばらくじたばたしていたが、そのうちに俺の“修理”スキル、マトイの魔術の強さに観念したのか、暴れるのをやめにした。


「……逃げるのも、自害するのも難しそうだな……。フン、諦めて、捕まるとしよう」


 捕まっている割に、偉そうにグレンフリードがそう言う。


「グレンフリード、魔族だったなんて……! 」


 その隣でカラミが驚いている。どうやらグレンフリードが魔族だったことは、彼女は知らなかったらしい。


「それにしても、魔族なんて初めてみたな」と俺。

「当たり前だ。魔族が、こんな辺境にわざわざ来るか」とグレンフリード。

「じゃあ、お前は、なにしに来たの」とマトイ。若干、高圧的に話すことで、プレッシャーを掛けている。

 そして、マトイはこう続けた。



「私に呪いを掛けたのも、お前なの? 」



 そう問いただされたグレンフリードは、しばらく黙ったままマトイを見ていた。

 ふたりは睨み合うように、なにも言わずに、互いを見つめている。



「……そうだ。俺がやった」

「……」

 このことには、カラミは驚いていない。

 やはり、マトイを呪いの掛けたのは、――その手助けをしたのは――カラミだったらしい。


「それを手伝ったのがカラミお姉さま、というわけね……」

 マトイがそう睨みつけると、

「そう……私が、――私が手伝った……! 」


 と、さすがに観念したのか、カラミは辛そうに俯いて言った。



「いったい、なぜ、そんなことをしたの? 私をターゲットにした理由は、なに? 」

「……“バランス調整“の為だ」

 グレンフリードが悪ぶれもせず、そう答える。

「バランス調整……?? いったい、なんの? 」

「世界のだ。世界の均衡を保つために、お前には呪いに掛かってもらった。そして、お前は野垂れ死ぬはずだった。……失敗したが」

「……わからない。私が、狙われる理由は、なに」



「お前が“原初の魔術士”だからだ」



 グレンフリードがそう言うと、全員が静かになった。



「原初の、魔術士……? 」

 と、俺だけが、意味がわからず、そう呟く。


 すると、

「ピギーは知らないだろうから、説明するけど……」

 とマトイが詳しいことを話してくれた。



 そもそも、この世界では様々な職業がある。

 魔術系で言えば、魔術士、魔道士、大魔道士、大魔術師、……さらに属性も含めれば、闇の魔術士や光の魔術士等、それこそ膨大な数の魔術士の職業がある。

 だが、そんななかでも、頂点とされる魔術系職業がある。

 それが“原初の魔術士”で、この職業を持って生まれる者はめったに現れない。

 以前マトイが呟いたように、千年に一人の逸材だった。



「マトイ、そんなすごい職業持ちだったの?? 」

 びっくりしてそう呟くと、マトイは若干恥ずかしそうに、こくりと頷く。


「原初の魔術士は、なにが出来るの?? 」

「……原初の魔術士の特徴は、“新たに魔術を作成出来る”ということ。……つまり、ほかの魔術士のように、既存の魔術を学んだり、取得するのではなくて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから、“原初の魔術士”」

「そうだ」とグレンフリードが口を挟む。「だから、原初の魔術士が生まれると、そこから歴史が変わる、と言われている」

「でも、魔族も警戒するほどなの……? 」とマトイ。

「警戒しているさ。決まっているだろう。原初の魔術士は、世界の秩序を根本から変えてしまう。……魔族は、人間たちの世界に“原初の魔術士”が生まれることを、常に恐れている。……もっとも、恐れている職業は、ほかにもいくつかあるが……」


「ということは、特殊な職業持ちが生まれると、魔族が目を付け、そのひとに呪いを掛けている、ということ……? 」


「その通りだ。呪いとは、魔族が作った特殊な秘術だ。……それを受けた人物は、固有職のスキルの殆どを制限され、無力化する。そうすることで、特殊な職業を持って生まれた人物は、その才能を発揮すること無く、生涯を過ごす。……特にエルフの国では、容姿の理由から、迫害されながら」


 

 この世界では、“呪い”に掛かる子どもが複数人目撃されていた。

 それを“忌み子”と呼ぶ。

 その原因も、なぜ発症するのかもわかっていなかったが、――その現象の原因は魔族だったのだ。

 それも、あまりに突出した才能を持った人物を、魔族の秘術によって無力化していたというのだ。



「……聞きたいことは、ほかにもある。ユウリス渓谷の壁を壊したのも、あなたね? 」

「そうだ」

「……! 」

 カラミが、明らかに動揺を見せた。

 どうやら、うすうすは分かっていたようだが、壁に関しては彼女は関与していなかったらしい。

 そうなると、カラミはグレンフリードにずいぶん良いように使われていたようだ。

 マトイをハメるのには手を汚させ、肝心なところは、教えて貰えなかったのだろう。



「な、なぜ、そんなことを……!? 」

 とっさに、カラミがそう叫ぶ。

「決まっているだろう。この国を滅ぼすためさ」とグレンフリード。

「滅ぼす……? あなた、そんなことを……?? 」

「今更わかったのか? お前はずっと、魔族に手を貸していたんだぞ? 」

 グレンフリードが、いやらしい笑みを浮かべてそう言う。

「そ、そんな……!? そんな!? 」 

 さすがにショックだったのか、カラミがその場に崩れ落ちる。

 いくらマトイへの対抗心が強く、性格が悪くても、この国を滅ぼそうなどという気はなかったらしい。

 いや、それどころか、カラミはカラミなりに、この国を良くしようとはしていたのだ。

 ただ、その空回る気持ちや、マトイへの嫉妬心を、魔族に上手く利用されただけで……。



「しかし、誤算だったな」

 グレンフリードが、おかしそうに呟く。

「誤算? なにが? 」とマトイ。



「原初の魔術士がまさか、()()()()()()()()()()とはな」



「……なにが、言いたい? 」と俺。

「……? お前ら、知らないのか……? 」

「なにを……? 」




「……職業のランクとしては、“修理士”は、“原初の魔術士”よりも上だぞ? 」




 グレンフリードは可笑しそうに続けた。



「人間族は、そんなことも忘れてしまったのか? 魔族の間では大昔から言われている。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と」



 そう言い終わると、グレンフリードは、からかうように、くっくっ、と笑った。


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