仕組み
その後、西から北に向かい、順番にスポットを潰していった。
スポットにはそれぞれ5千~7千ほどの魔物が残っていたが、それをマトイとアオとで手分けして討伐した。
特に目を覚ましたマトイの働きぶりは物凄かった。
マトイの言う“特級怨式”は百匹単位で魔物を攻撃できる。
なかでも“裁きの槍”は魔物にだけ効果のある魔術で、味方には当たることがない。
しかも、マトイは魔術の枯渇がないから、強力なこの魔術を連発しまくっていた。
マトイが現れたところは地形が変わるから、途中からは、兵士たちに「破壊者」とあだ名されていた。
時にはひとの去った村や街を壊すこともあったから、それらはひとつずつ俺が「修理」して回った。
そして、マトイがずたずたにした魔物を、アオが酸で溶かし、最後に俺が結晶化した。
結晶化した魔物はアオが回収した。
ふたりの働きぶりが有能だったおかげもあって、翌日の昼にはスポットのうち半分が殲滅し終わっていた。
「さすがに、ピギー様たち三人の働きぶりはほかの兵士たちとは比較になりませんね……! 」
合流したムラサミが言った。
「……マトイ様もかなり力が戻っておられる! 神童と呼ばれたあのころを思い出しますな……! 」
シウも、そう感慨に耽っている。
スポットの殲滅も半分が過ぎ、この国に集まってくれたパーティーたちもかなり強くなっていた。
「でも、ここからはもう少し仕組みを整備しようと思うんだ」
俺は言った。
もともと俺たちは冒険者ギルドに属していたが、ギルドという制度自体が、半ば壊滅している。
それは、俺が結晶を与えるようになったからだが、そのおかげもあって、今やエルフのふたつの国ではハングリー・バグ以外のギルドは機能しなくなっている。
そこで、いっそこのギルドをエルフの国の標準ギルドにすることにして、制度も1から組み立てなおそうと考えたのだ。
「まず、ランクについて見直そうと思う」
もとのギルドのランクで言うと、一番上のランクがAで、それ以上はない。
だが、そのうえにさらにふたつのランクを設けようと考えたのだ。
「ひとつは、A級の上の特撰級。このランクのひとたちは国の重要な決定にも関わってもらおうと思う」
「A級ランクはすでに大勢いて、飽和状態ですから、良いと思います」とムラサミ。
「それと、さらにもう一つ上のランクを作ろうと思うんだ。それを、超特撰級と呼ぼうと思う。……このランクには、特別に僕が信用出来るひとだけを入れさせようと思う。例えば、マトイとか、アオとか、実力もあって、全部が信用できるひと」
“特撰級”と“超特選級”のランクを新たに設けることには、ふたつのメリットがあった。
ひとつは、A級より上を作ることで、より冒険者達にモチベーションを持ってもらうこと。
こうすることで、彼らに、今まで以上に働いて貰うことが期待出来る。
当然、このランクの冒険者が受注するクエストには、破格の報酬を与えるつもりではある。
……さらに、“超特選級”を設けたのは、簡単に言えば、はっきりと「贔屓」をするためだった。
例えば、超高品質の結晶などは、誰にでも与えるわけにはいかない。
でも、俺はそういった結晶を自分の好きなひと、マトイやアオや仲間たちに、好きなタイミングであげたい。
そんなときに“超特選級”の名目があれば、彼らにだけ頻繁に結晶を与えても角が立たない。
“超特選級”とは俺に贔屓される超特権階級で、それを肩書としてはっきりと誰にでも分かる形で示しておきたかったのだ。
もちろん、建前としては、業績を評価してその人物を“超特撰級”に任命した、ということにはするつもりだが……。
「えー、じゃあ、任命式をします! 」
とりあえず、このときこの近くに来ていた兵士やパーティーたちを広場に集め、順番にランク付けしていった。
いつのまにかかなり強くなっている兵士たちもたくさんいたから、彼らを正当なランクに繰り上げしてあげる目的もあった。
「それと、“特撰級”に、イップさんのパーティーを任命します」
そう言うと、
「良、良いのですか!? 」
とイップさんは驚いていた。
それはそうだろう。
イップさんのパーティーは、エルフの国で初めて誕生するA級以上のランクの冒険者だった。
「それから、“超特撰級”にエフィーさんのパーティーを任命します! 」
「わ、私がですか!? 」
エフィーさんはもっとびっくりしている。
「そうです。ぜひお願いします! 」
「よ、喜んで……! すごく、光栄です……! 」
特撰級と超特選級に任命されたふたつのパーティーは、兵士たちに羨望の眼差しで見つめられていた。
そして、二組には褒賞として、それぞれ1000個と2000個の結晶を渡した。
特にエフィーさんのパーティーには希少価値の高い結晶をかなりたくさん混ぜておいた。
「こ、こんなに貰っても良いのですか……!? 」
恐縮してエフィーさんがそう言う。
「良いんですよ。それだけ働いて貰ったので」
これに関しては事実でもある。
エフィーさんのパーティーは、スポットに殲滅に出かけたパーティーのなかでも抜きん出て討伐数が多かったのだ。
実力がそれだけ高くなっていたというのもあるし、彼女たちがとても真面目だというのもある。
その後、フリューゲルさんと“思考共有”を使って軽い会議をした。
フリューゲルさんにも協力して貰い、ムルナグルの国でも同じシステムでギルドを運営してもらうことにした。
そのときに、今後は結晶は「クエストの成果報酬」で与えることにした。
今までは基本的に俺の裁量で与えていたが、今後は、クエストに成功すると、その報酬として結晶が貰えるのだ。
つまり、頑張れば頑張るほど冒険者達が強くなる仕組みだった。
しばらく経つと、これらの変化がエディーガーデンの国と、ムルナグルの冒険者たちの間で知れ渡った。
A級以上のランクにあるということで、エフィーさんたちもかなり周りからの対応が変わったという。
「みなさん、私のことを特別なひとのように扱うから、参ってしまいます……! 」
久しぶりに会ったエフィーさんはそう困っていた。
「そんなに、みんなの見る目が変わりますか? 」
「変わりますよ! A級だけでも尊敬されるのに、その上の特撰のさらに上の超特撰ですよ。……みなさん、伝説の生き物を見るような目で見てきます……! 」
そう言うと、エフィーさんは恥ずかしそうに俯いた。
かつてフリューゲルさんが言ったように、ギルドの制度は一旦完全に崩壊を向かえた。
そして、俺のもとで新たな制度として生まれ変わった。
そんなことをすればどうなるか。
気がつくと、俺は「ギルド総長」として世の中に知れ渡っていた。
このエルフの国に存在するすべてのギルドを総括する男。
ギルドの仕組みを自由に変えられる存在。
新しい制度の根幹を成す、「結晶」を自由にひとに分け与えれる人物。
それはほとんど、伝説上の謎の人物として、冒険者たちに噂されるようになっていった。
特に、俺に会ったこともない冒険者からすれば、肩書だけで畏怖してしまうような、恐ろしい存在に違いなかった。
そして、この頃にはスポットの殲滅はほぼ終わり、残るは北にあるユウリス渓谷近くのスポットだけだった。
残るスポットは、俺とマトイとアオで手短に片付けるつもりだった。
「じゃあ、そろそろ行こ」
準備を終えたマトイが俺に声を掛けに来た。
「ご主人さま、わたくしのほうでももう準備は出来ております。
「うん、今行く」
こうして、俺たちはこの国の異常な魔物繁殖を解決する、最後の仕上げに取り掛かった。
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