表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/95

砂漠

 それは天変地異に似ていた。

 微かに漂っていた薄曇りの空に、突如として巨大な槍が現れたのだ。

 

 砂漠の一帯に群がっていた生物は、全員が空を見上げていた。

 群れを成していた魔物たち、それを討伐しに来ていた兵士たち。

 そして、俺とアオも呆然と空を見つめていた。


 「らひほうふ、ほのまふふは、りんへんやえるふにはひはない……」

 (大丈夫、この魔術は、人間やエルフには効かない……)


 マトイはそう言うと、翳していた手を振り下ろした。


 ……すると、空に現れた槍が砂漠の地面に突き刺さり、凄まじい爆風が辺りに巻き起こる。

 

 「ちょちょちょ、ちょ、マトイ……!?! 」

 

 俺は、目の前から吹いてくる砂嵐に驚き、必死に顔を庇った。

 

 「お、お姉さま!?? 」

 

 と、蛇の姿から戻ったアオも、この突然の超常現象に戸惑っている。


 「まらまら、ろんろん行く」


 マトイはそう言うと、もう一度こう唱えた。


 「ろっふうろんひひ、――“はらひのはひ”」

 (特級怨式、――“裁きの槍”)


 そして今度は、さっきと同じ大きさの槍が、空に6本も現れたのだ。


 「ま、ま、マトイ!? いくら俺たちにダメージがないと言っても、爆風が、凄すぎる……! 」


 俺は慌ててそう制止するが、酔っ払ったマトイは、言うことを聞こうともしない。

 空に浮かべた巨大な槍を次々と砂漠に突き刺し、凄まじい爆風を何度も起こした。


 ……マトイが十数本の槍を空から降り下ろし、俺たちが吹き荒れる砂嵐に疲れ切ったとき、突然、マトイの暴走が終わった。

 

 徐々に晴れていく砂埃のなか、アオと一緒に静かに立ち上がると、俺たちの目の前にあったはずの平坦な砂漠は、巨大なクレーターだらけの荒れた大地となっていた。


 突然のことになにが起こったかわからない兵士たちは、呆然と至るところで立ち尽くしていた。

 

 そして、魔術を連発したマトイは、酔いが急激に回ったのか、地面のうえで仰向けに寝そべり、寝息を立てて眠っていた。

 

 「ね、寝てる……! 」 

 「お姉さま、怖いひとですね……! 」

 と、アオも若干怯えている。

 「それにしても、なぜ急にこんなに暴れたのでしょう?? 」

 「え、それは……! 」

 マトイは多分、俺と気持ちを打ち明けあったことが、急に恥ずかしくなったのだ。

 だが、そんなことが理由でマトイが暴れたのだ、とは言えず、

 「なんだろう、すごく、むしゃくしゃしてたんじゃないかな……」

 「な、なにに、ですか?? 」

 「え!? さ、さあ?? 」

 「?? 」

 と、良くわからない会話になってしまった。




 ……



 突然の砂嵐に巻き込まれた兵士たちを、アオの青蛇を使って、優しく一箇所に集めた。

 彼らは無傷ではあったが、全身に砂を浴びていた。

 彼らに水を飲ませたり、やや劣化した装備品を修理してあげた。


 「ぴ、ピギー様たちでしたか! 」 

 兵士の一人が言う。

 「せ、世界が終わったのかと思った……! 突然、空に巨大な槍が現れて……! 」 

 と、別の兵士が唇を青くさせて言った。

 「ご、ごめんね……」

 と、申し訳ない気持ちでいっぱいになって、ひとりひとりに謝る。

 「い、いえ、戦況としては危ないところだったので、救っていただいて、感謝しかありません! 」

 と、兵士は一応、恐縮してそう言ってくれた。

 「ただ、今度からは、一旦兵士たちが避難してから、あの魔術を使って頂けると、助かります……! 」 

 と言いにくそうに苦言していた。

 「うん、ほんと、ごめん……」 

 と、俺は終始謝っていた。



 ……


 

 彼らに戦況を聞くと、この西の砂漠地帯では、ある程度魔物を殲滅し終えているのだが、その分、奥にいた強力な魔物が姿を見せ始めている、ということだった。

 確かに、マトイの魔術で飛び散った魔物のなかには、俺たちが見たこともない魔物もいた。

 恐らく、クエストのランクとしてはA級以上の魔物が現れ始めているのだ。


 マトイを兵士たちのテントに眠らせているあいだに、兵士たちをかき集めて、戦力を整えさせた。

 彼らが持っていた空のポーションに新しくポーションを詰め、そこに集まっていた約200人の兵士の装備に修理スキルを当てておいた。

 

 「改めて初めて生で見ますが、ほんとうに奇跡のようですね……! 」

 俺がポーションを生成したり、装備を修復するのを見て、兵士のひとりが言った。

 「うん、まあ、普通だよ」

 「い、いえ、普通だなんて、とんでもありません!! こ、こんなの、奇跡としか、言いようがありません! 」

 こういう褒め言葉に未だに慣れない俺は、ただ俯くしかない。

 

 ふと、彼らがひどくげっそりしていることに気づいた。


 「もしかして、食料が、足りていない? 」

 そう尋ねると、

 「はあ、恥ずかしい限りですが、満足に食えているとは言えません……! 魔物の討伐が上手く行かず、補給部隊との連携も上手く取れていないのです……! 」

 「そうか……」

 話に聞くと、本来ここに来るはずの補給部隊が、急激に強くなった魔物に追い払われて、この場所まで辿り着けなかったのだという。

 何度かそういうことが続くうちに、彼らは飢餓状態に陥っていたのだ。



 「じゃあ、俺に任して」



 俺はそう言うと、テントから離れて砂漠地帯に歩いていった。

 

 「な、なにをなさるので……? 」


 俺は地面にかがみ込み、プラント士スキルを発動した。



 「“プラント”――ウトゥルーの実」



 そう言うと、目の前の砂漠地帯が一気に緑地化し、莫大な量のウトゥルーを生えさせた。


 

 「さあ、もう実はなっているから、みんなで食べようよ。この実は、すっごく美味しいんだ」


 俺がそう言うと、俺の隣に立っていた兵士は、呆気に取られて、持っていた剣を地面に落とした。


 「これが奇跡でないなら、な、なにが奇跡なのですか……? 」


 兵士は、誰に言うともなく、うつろな表情でそう呟いた。





※読んでくれた方へ




少しでも、


「面白い」


「続きが読みたい」


「楽しい」


と感じるものがありましたら、広告下の「☆☆☆☆☆」から評価をお願いします!!


ブクマ、評価があると物凄くモチベーションがあがります!


どうか、どうか、ご協力下さい! m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にして評価をお願いします!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ