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聖獣

その後、基礎ステータス系の結晶を特に重点的に口に入れた。


 

 《ボーナス》 攻撃力アップ(大) ×3345

 《ボーナス》 防御力アップ(大) ×2879

 《ボーナス》 魔術量増加(大) ×2640

 《ボーナス》 魔術使用時魔術量減少(大) ×325

 《ボーナス》 装備重量増大(大) ×1023



 ……もはや、最初の頃とは比較にならないほどの数の結晶を、俺は摂取していた。

 喰うだけでも大変な量だから、喰い切るのに10日以上掛かったが……。


 最初にカンストしたのは“装備重量増大”のステータスだった。

 この結晶を喰っているときに突然手が止まり、それ以上喰えなくなる。

 それがステータスが“カンスト”した際の合図だった。



 さらに、攻撃力、防御力がカンストを迎えた。

 攻撃力や防御力がカンストしたステータスの人間など、恐らく、この世界に一人たりともいはしない。

 その力がどれほどの破壊力を持つのか、試してみなければ、俺には想像もつかなかった。

 

 ただ、魔術量だけは、これだけ喰ってもなおカンストしなかった。

 この項目に関しては、ステータスの上限が異常に高いのかもしれない……。



 そのほかに、再び“プラント”系の結晶を大量に摂取した。



 《ボーナス》 プラント士スキルアップ(大) ×1078

 《ボーナス》 “プラント”範囲拡張(大) ×980

 《ボーナス》 プラント使用時作物に成長速度促進を付与(大) ×1498


 

 この膨大な数の結晶を喰うことで、上に書いた項目がそれぞれカンストした。

 つまり、ものすごく広範囲に、かなりの速度で成長する作物を、一瞬で植えられるようになったのだ。


 この結晶を喰ったあと、ムラサミとシウを連れて、俺は再び農園に出て行った。

 と言っても、城の周辺はすでに大部分が農園化されており、まだ耕されていない荒れ地に向かうには、かなり城から離れなくてはならない。

 15kmほど東に向かったあと、俺はふたりの前で久しぶりにプラントスキルを使った。


 「ピギー様の“プラント”スキルを見るのは久しぶりですな」

 わくわくした様子で、ムラサミが言う。

 「うん、俺も楽しみだよ。……・どのくらい範囲が広がっているか」

 「以前使っていたときは、家三軒分ほどの広さでしたが! 」

 とシウが捕捉する。


 「植える苗は、何が良い? 」

 俺はふたりに尋ねた。

 “プラント”スキルが上昇したことにより、苗が不要になっただけでなく、頭に思い浮かべるだけで、この世界に存在する植物なら、どれでも自由に植えられるようになっていたのだ。

 「な、なんと……!? 」

 その説明を受けたムラサミが驚愕する。

 「で、では、ウトゥルーの実など、いかがでしょう……! 」

 

 ……ウトゥルーの実とは、北部で採れる希少な果物で、この世界では高級品種として扱われていた。

 「面白いこと言うね」 

 俺がそう言うと、

 「はっ、お褒め頂き、恐縮でございます! 」 

 とムラサミがいちいち丁寧に頭を下げる。

 ウトゥルーの実というのは北部の冷寒な地域にしか育たないから、南に位置するエディーガーデンでは育たないはずなのだ。

 だが、そんな実がこの地で育てば、前代未聞のことだった。

 つまり、俺のプラント士のスキルがどれだけ上昇したかを確かめるには、うってつけのアイディアなのだった。


 「行くよ……! 」

 俺は荒れ地に向かって、手のひらを翳した。

 頭のなかに、ウトゥルーの実を想像しながら。


 すると……、


 見渡す限りの荒れ地が瞬時にして耕された畑に変わり、そこに苗が植わり、みるみううちにその苗が成長すると、しゅるしゅると音を立てて成長していった。

 一瞬にして、目の前の荒野一帯が、すべて農園になっていた。

 しかも、そこにはすでに成長しきったウトゥルーが実を付けていたのだ。


 「も、もう実をつけていますよ!?? 」

 びっくりして、ムラサミが実のひとつに駆け寄る。

 「し、信じられん……! 」 

 と、シウも恐る恐るウトゥルーの実に屈み込んでいた。


 「試しに食べてみようよ」 

 そう言うと、ふたりは緊張した面持ちで頷いた。

 高級果物であるウトゥルーの実など、この場にいる誰も口にしたことなどなかったのだ。

 

 「う、うま、過ぎる……! 」

 一口食べたムラサミが、そう零す。

 「……! 」

 シウに至っては、なにも言わずに目を瞑って涙を流していた。

 「確かにこれめちゃくちゃ美味いね……! 」

 一口食べた俺も、思わず絶句していた。


 その後、俺は三人で荒れ地を周り、ウトゥルーの実を植えまくった。

 二時間も経つころには、東一帯、半径60km圏内がすべてウトゥルーの農園になっていた。

 さらにあとでわかったことだが、この実はエディーガーデンの土地で育ちやすいように品種改良されていた。

 俺が植えたウトゥルーの実から落ちた種は、再びこの地に植えても、なんの抵抗も無く育つよう暑さに強くなっていたのだ。

 そして、もっと遥か未来の話だが、この実はやがてこの国の名産果物として世界に知られることになるのだった……。



 ……


 

 俺が結晶を喰うのに合わせて、実はアオにも同程度の結晶を喰わせていた。

 もっとも、アオに関してはそれほど希少なものは与えはしなかったが。

 

 それに伴ってマトイにも結晶を喰わせようとしたのだが、よほど体質が合わないのか、マトイは結晶をひとつ喰うごとに激しい酔いに苛まれて、それ以上口にしようとはしなかった。

 「……私はいらない。呪い耐性の結晶が出たときだけ頂戴。魔術さえ使えれば、私はどうにかなるから」

 と言うのが本人の弁だった。


 

 ……そんなふうに二週間弱、ひたすら三人で結晶を喰ったり、分類していたりすると、


 「あ、あれ、アオ……!? なんか、生えてきていない……?? 」 

 

 アオの額に、薄っすらと突起のようなものが生えてきていたのだ。


 「……? 」

 アオがそっとそこに手を触れると、

 「……どうやら、角が生えてきたようです」

 と、にっこりと微笑んでアオが言った。

 「つ、角……!? 」

 「ええ、角です」

 「なんで、角が生えるの?? 」

 と聞くと、


 「多分、膨大に結晶を喰ってきた影響でしょうか。どうやら私、《聖獣化》したようです」

 「せ、聖獣化?? 」

 「ええ、聖獣化です」

 と、再びアオがにっこりと笑う。

 良く見ると、アオの皮膚の表面に蒼い雷のようなものが迸っていた。


 呆気にとられている俺たちににっこりと微笑むと、

 

 「青蛇の女王というのはランクがあって、《通常種》、《希少種》、《聖獣種》と分類されています。……私は《希少種》に分類される、知性のある女王だったのですが、結晶の効果でしょうか、角が生えてきました。角は、《聖獣種》にしか生えてきません」


 「せ、聖獣種になると、ど、どうなるの……? 」

 

 と、聞くと、


 「簡単に言うと、ものすごーく強くなります」

  

 そう言って、アオは再びにっこりと笑った。


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