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跡継ぎ

 翌日、王は民衆を集めて挨拶をした。

 王は自分の病気が快復したこと、この国はかなりのところまで破滅しかかっていたが、それもずいぶん建て直って来たこと、それらを快復したての病人とは思えない饒舌ぶりで説明していた。


 「マトイのお父さん、演説が上手いね」

 「……うん、病気で倒れる前は、国民からも人気があったし、あのひともばりばり働いていた。もともと、有能なひとだと思う」


 王の端っこでマトイとそんな話をしていると、突然、


 「ピギー君、こっちに来てくれるか! 」

  

 と、演説中の王に名指しされた。

 

 「え、ぼ、僕ですか?? 」

 「そう、君だ。早くこっちに来たまえ」


 困惑しながら王のもとに近づくと、王は民衆に向き直って、こう叫んだ。


 「……私が病気から治ったのも、この国を立て直したのも、すべてこの男のおかげだ。この男の名前を、ピギーという! この男に感謝の意を表すために、どうか、みんなで一斉に拍手してくれ! 」

 「お、王……!? 」


 王がそう号令すると、集まっていた民衆が一斉に、俺に向かって拍手を始めた。

 民衆たちは口笛を吹いたり、

 「ピギー様、私の村を救ってくれてありがとう! 」

 とか、

 「農園を作ってくれたこと、感謝しています! 」

 といった声援を送ってくれていた。


 「……ピギー、胸を張って」

 いつの間にか隣に来ていたマトイが、そう呟く。

 「マトイ……」

 「みんな、この国を立て直してくれた、あなたの顔を見たがってる。ほら、顔もあげて」

 「う、うん……」


 さすがに、込み上げてくるものがあった。

 この世界に転生する前も含めて、こんなにも大勢のひとに感謝されるなんて、初めてのことだったのだ。

 

 (俺なんて……)

 

 (ただのクラスのいじめられっ子だったのに……)


 俺があれこれこの国のために動いているあいだに、民衆の間ですっかり俺の顔が覚えられたのか、王の掛け声で始まった拍手は、その後もしばらくは鳴り止まなかった。



 ……



 その後、あれよあれよという間に、俺に爵位を授ける式典が行われ、正式に貴族となった。

 そのあとで、王は正式に俺を「高級指揮官」に任命した。

 これまで通り、兵士たちに直接指示を与えて、魔物の殲滅や国の立て直しに従事して欲しい、というのだ。


 俺はかしこまり、その任務を引き受けた。

 マトイや、シウやムラサミも満足そうだった。

 ずっと近くで俺を見てきた彼らは、俺が評価されることを心底喜んでくれているみたいだ。

 ただひとり、カラミだけが、不服そうな顔を隠さなかったが……。



 ……


 ある日、夕陽が沈む頃に、王に直接呼び出された。

 指定された高台に向かうと、王がすでにひとりで来ていた。


 「お、ピギー君、来たか。ささ、こっちに座ってくれ」

 「あ、はい、すいません」

 王に促されるまま、俺は用意してあった椅子に腰掛けた。

 王もその隣に、ゆっくりと腰を降ろす。


 「……何度も言うが、君には感謝しなくちゃいけない」

 「いえ、当然のことを、しただけです」

 「……君は本当に謙虚だな。さあ、見てご覧。素晴らしい景色だとは思わないかね。緑に溢れ、そこに夕陽が沈んでいく! 」

 王は延々と広がっているエミルの農園を見つめて言った。

 「素晴らしい景色だと思います。僕も、この景色が大好きです……! 」

 「あと少しで、この景色がみんな失われていたかと思うと、私は堪らない気持ちになる……! 」

 「ええ、僕も、同じ気持ちです」

 そう同意したが、王はなにも言わない。

 どうやら、必死に涙を堪えているようだった。


 その後、しばらくふたりで黙ったまま夕陽を眺めていた。

 会話はなかったが、悪くない空間だった。

 王に対してこんなことを言うべきないのかもしれないが、俺は密かに、このひととは気が合うな、と感じていた。

 有能な人なのに、ひとを圧迫するような、攻撃的なところが、少しも見当たらないのだ。


 「……ピギー君、私の後を継がないか」

 突然、王がそう言った。

 「ぼ、僕が?? まさか! 無理ですよ! それに、そんな権利もありません! 」

 「権利なら、どうともなる。問題は、君がやりたいかどうかだ」

 「無理です、無理です! 今でも、ただでさえ、必死なのに! ……それに、正当な跡継ぎなら、カラミ様ではないのですか?? 」

 「それなんだが……」

 と王は憂鬱そうに俯いた。


 ……薄々分かってはいたことだが、カラミにはかなり人格的な問題がある。

 王は親の贔屓目でそれに目を瞑ってきたが、どうやら、それも限界に感じているらしい。

 出来れば、有能な者にこの国の後を継いで欲しい、というのだ。


 「君は、マトイのことは、どう想っているのかね? 」 

 突然、王が言った。

 「ど、どう、と言うのは……?? 」

 「好きかどうかを、聞いているのだよ」

 俺は黙った。

 一瞬、ごまかそうと思うが、王が真剣に聞いてくれているのだ。誠実に答えないと、申し訳ないように感じた。

 「……好きです。すごく」

 と、答える。

 「そうか……! 」

 と、王が俺のほうに向き直る。

 「で、でも、だからと言って、僕が王の跡継ぎになるなんて、無理ですよ……! 」

 そう言うと、

 「良いんだ、君の気持ちがわかっただけで! ……ただ、後継ぎのことは、真剣に考えてみてくれ。君がマトイを貰ってくれるなら、権利の観点から言っても、そう無茶苦茶な話ではないのだから」


 そう言うと、王は「わははは! 」と急に笑って、俺の背中を叩いた。

 そして、再びしんみりとした調子に戻ると、またなにも言わずにしばらく遠くを眺めていた。


 王は多分、自分が死んだ後のことを考えて、いろいろと心配してくれているのだ。


 そのことが伝わり、俺もしばらく、しんみりとした気持ちになって、王の隣でエミルの農園を眺めていた。



 ……



 それから三日後、マトイとアオの三人で集まった。


 「この三人で集まるのも、久しぶりだね」

 「……うん、なにか、懐かしい」

 「本当ですわ。やはり、この三人で居るのが、一番ですね。もう、家族みたいなものです」

 とアオが珍しくテンション高くそう言う。


 

 「で、今日は、何をするの? 」とマトイ。

 「うん、今日は結晶を喰おうと思う。ずいぶん集まっているんだけど、忙しくて、あまり喰えていないからね」

 「……数は、どれくらいあるの? 」

 「大体、10万くらいはあるかな。……兵士に分配する分を考えても、8万近くは自由に喰える」

 「は、8万……」

 さすがのマトイも、若干呆れている。

 「ものすごい数字になってきましたね」とアオも引き気味に微笑んでいる。


 「その8万の結晶から良いものを選んで、ピギーを強化しようってことね? 」

 とマトイが言う。

 「その通り。ふたりには、それを手伝って欲しいんだ」

 「……喜んで」

 そう言うと、ふたりはにっこりと微笑んだ。


 

 ……


 三人で結晶を詰めた倉庫に向かい、延々と作業をした。

 とにかく、効果が(大)のものや、新しいスキル獲得系のものを、延々と隅に分類していく。

 

 夕方ごろになり、あらかた分類し終わったとき、

 「とりあえず、この辺りは喰ってしまえば? 」

 とマトイがある一角を指差した。

 そこにあった結晶は……、



 《ボーナス》 雷属性耐性(大) ×136

 《ボーナス》 火属性耐性(大) ×171

 《ボーナス》 水属性耐性(大) ×126

 《ボーナス》 風属性耐性(大) ×286

 《ボーナス》 土属性耐性(大) ×356


 

 その一角には、耐性獲得系の結晶が山積みにしてあったのだ。


 「なるほどね。とりえず、耐性をとことん強化しようということか……」

 俺がそう言うと、マトイがこくりと頷く。


 その日、俺はいろんな方法でこれらの結晶を喰っていった。

 普通に齧ったり、砕いてジュースにしたり、スープにしたり、料理に混ぜたり……。

 そして延々と喰うこと6時間。

 これらの結晶を全部喰い終わる頃には、俺はすべての属性攻撃に対する耐性がカンストしていた。

 

 「これで、属性攻撃は、ほぼ無効化できる……! 」

 「いよいよ、化け物染みてきたね……」

 マトイが、にやりとそう言う。


 「ピギー様、いよいよ、半端じゃなく強くなって参りましたね」


 アオが、いかにも嬉しそうに、俺にそう微笑む。きっと、自分を使役する主人が強くなることが、彼女も嬉しいのだろう。

 俺も喜びが抑えられず、ゆっくりと、アオに向かって頷いた。


 「さあ、結晶による強化を、続けよう……! 」




 現在のステータス


 愛称:奇跡のピギー

 ギルドランク:A

 種族:人間

 爵位:エディーガーデンの侯爵


 【NEW!】役職:高級指揮官


 専属契約:ゾフ商会

 同伴者:マトイ(忌み子)、アオ(青蛇の女王)

 所属ギルド:ハングリー・バグ

 パーティー名:【子豚】

 所持金:金貨1062枚、銀貨306枚

 所持品:古の戦斧、古の甲冑

 所有スキル:修理士、ポーション生成、調合、魔術フレア

      生体反応感知、思考共有、侵入、熱反応感知、プラント、裁縫


 【NEW!】カンストステータス:スタミナ、皮剥速度、毒耐性、マヒ耐性、敏捷性、雷属性耐性、火属性耐性、水属性耐性、土属性耐性、風属性耐性


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