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爵位

「恐らく、なんらかの毒素が身体に回っていたのでしょう」

  

 俺がそう言うと、


 「……いや、まさか、だいいち、かなりの検査はしたつもりだが……! 」

 と医者が驚愕している。

 「だが、現に私の身体は治っている……! 」 

 と、突然身体が快復した王も、ベッドの上で戸惑っていた。


 “修理スキル”の効果のひとつである“浄化”というのは、かなり強力なもののだろうと思う。

 なにしろ、魔物化した動物たちを、もとの動物に戻せるほどの“浄化力”なのだ。

 ここにいる医者も王が毒に掛かっている可能性も検証し、かなりの数の毒を除去する薬を試したらしいが、すべて無駄だったようだ。

 それほどの強力な毒を、俺の“浄化”が取り払った、というわけだった。


 

 「どこかで、毒を浴びた記憶はありますか? 」

 そう聞くと、

 「いや、なにも思い当たる節はないが……」

 と王は戸惑っている。

 「もしかしたら、ユウリス渓谷の壁を壊した件と、関係があるかも」

 とマトイが言う。

 「なんだ、その、ユウリス渓谷の壁を壊した、というのは? 」と王。

 「……ユウリス渓谷で北からの魔物の侵攻を護っていた壁が、何者かに破壊されていたの。……もしかしたら、お父様の身体の毒も、それと関係があるかもしれない」

 「……壁を、何者かが、壊す……?? 」

 「そう、おかげで、この国は、すっかり魔物で溢れかえってた」

 「なんだと!? 」

 と王が驚愕の声を上げる。

 「それで、この国は無事なのか!? この国の民は、大丈夫なのか!?? 」


 どうやら、病に伏せていた王に、この国の惨状は一切伝えていなかったらしい。

 この国の周辺では膨大な魔物が発生していること、国民が飢えに苦しんでいること。

 それらをすべて秘密にして、何事もないかのように、みんなで黙っていたようだ。

 恐らく、家族も含め、みんなもう王は助からないと考えていたのだろう。

 ……死にゆく者に、この国の悲惨さを伝えたところで、哀しい想いをさせるだけだ。

 そう判断して、誰も話さなかったのだろう。


 「……本当のことを言うと、この国は、もう殆ど滅びかかっていた」

 マトイが、ぽつりと、だがはっきりとした口調で言う。

 「!?? 」

 「……だけど、今はもう、大丈夫。飢えは克服したし、魔物も、かなりの数が減ってきている」

 「そ、そうか!? 」

 王の顔がぱっと明るくなる。

 「それで、誰がそれを先導してくれたんだ!? カラミか!? マトイか?? 」

 「ううん、私たちの、どちらでもない」

 「なんだと?? じゃあ、いったい、誰が……?? 」

 

 すると、マトイがすっと俺を指差した。


 「このひと、……ピギーがみんなやってくれた」

 

 「な、なんと……! 」

 

 王は驚愕した表情で、俺を見つめた。


 そして、マトイはここまでの経緯を王に話して聞かせた。

 いかにこの国が破滅すれすれまで追い込まれていたか。

 それを俺がいかにして立て直したか。

 マトイは自身に掛けられた呪いが、俺の力で治ったことも話した。

 本当に治ったというよりは、表に出ている部分は見えなくなっただけのことなのだが、王を安心させるために、そう嘘をついたようだ。

 


 ……すると、王はゆっくりとベッドから這い出て、なんと、俺の前で膝をついた。


 「ピギー殿、なにやら私の娘、それから、私の国が本当に世話になったようだ。君にはいくら礼を言っても、足りそうもない。君にはあとで、それ相応の褒美を用意しておく。……だが、これだけは先に言っておきたい。私の、この国を、私の娘を救ってくれて、心より、感謝を申しあげる……! 」


 そう言うと、王は深々と俺に頭を下げた。


 「ちょ、ちょっと、やめて下さい! そんな、恐れ多いです! 」

 慌ててそう引き止めるが、

 「いや、そうはいかん。君にはどれだけ頭を下げても、足りないほどだ……! 」

 と意固地に言って聞いてくれなかった。

 そして、王は頭を上げると、


 「君にはあとで、侯爵の地位を授ける」


 と凛々しい顔つきで言った。


 「こ、侯爵!?? 」

 と、急にカラミが会話に入ってきて言った。

 「こんな醜い、ブ男が、侯爵ですって!? お父様、いくらなんでも、そんなの、馬鹿馬鹿しいわ! 」

 「なにを言う。この方のお礼としては、足りないくらいだ。……それに、カラミ、お前はこの方が国を立て直すあいだ、何をしていたんだ? 本来であれば、お前がやらなくてはならない立場のはずだが? 」

 すると、王はきっとカラミを睨みつけた。

 さすがのカラミも、ぐっと押し黙る。

 

 「カラミはなにもしていない。ただ邪魔をしてただけ」

 と、ここぞとばかりに、マトイが告げ口する。

 「ちょっ、なにを言うの!? そんなの、デタラメよ! 」とカラミは狼狽している。

 「ふん、カラミ、お前のことだ。あながち嘘とも思われんな。……お前には、昔からズルいところがある。とにかく、国王であるこの私が、この方に爵位を授けると決めたんだ。……なにか、文句があるか? 」 

 「……っ! 」

 カラミはぐっと歯を食いしばり、ゆっくりと俯いた。


 「なにも、文句など、ありません……」

 「ふん、それで良い」

 

 王が、俺のほうを向き直って言った。


 「ピギー殿、良かったらこの国の爵位を授かっておくれ。エディーガーデンの貴族ともあれば、この世界のどの場所でも通用するというものだ。……持っていて、損はないかと思うが? 」

 「ぼ、僕が、貴族ですか……?? 」

 「嫌かね? 」

 「いいえ、とんでもない! 嫌なわけが、ありません! 」

 「じゃあ、喜んでくれると言うのだね? 」 

 王はそう言うと、俺の顔の前でにっこりと笑った。

 「は、はあ……」

 と俺は、困惑しながらも、やっと微笑み返す。


 (マトイの代わりにこの国の立て直し役をいつの間にかやっていたが……)


 (その結果が、貴族の仲間入りか……)


 (なんか、とんでもないことになってしまったな……)


 嬉しそうに王を取り囲む従者や家族たちの騒ぎのなかで、俺ひとりが、最後まで戸惑っているのだった。



 現在のステータス


 愛称:奇跡のピギー

 ギルドランク:A

 種族:人間


 【NEW!】爵位:エディーガーデンの侯爵


 専属契約:ゾフ商会

 同伴者:マトイ(忌み子)、アオ(青蛇の女王)

所属ギルド:ハングリー・バグ

 パーティー名:【子豚】

所持金:金貨1062枚、銀貨306枚

 所持品:古の戦斧、古の甲冑

所有スキル:修理士、ポーション生成、調合、魔術フレア

      生体反応感知、思考共有、侵入、熱反応感知、プラント、裁縫


カンストステータス:スタミナ、皮剥速度、毒耐性、マヒ耐性、敏捷性


※読んでくれた方へ




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