ドワーフ
2000人集まった民衆を、とりあえず俺は18組ほどのパーティーに分類した。
彼らはスポットには派遣せず、エディ―ガーデンの国のなかで孤立している村専用の「救出部隊」に任命した。
国全体を調査し、滅びかかっている村の場所を特定し、そこに住む村人たちを救出しに向かって貰ったのだ。
……もっとも、この部隊に関しては、スポットに向かわせた兵とは違う仕組みが必要だった。
そもそも、スポットとは違い、彼らはそれほど多くの魔物に遭遇しない。
つまり、任務の間にそれほど多くの魔物の死体を手に入れられないのだ。
……となると、スポットに行った兵士のように、「敵を倒した数に応じて結晶が貰える」という仕組みが成り立たない。
そこで、この「救出部隊」には、任務の達成ごとに結晶を与えることにした。
スポットに討伐しに行った兵士たちとは違い、「村を救出する」ごとに報酬を与えることにしたのだ。
……考えてみると、これは「クエスト」の考え方に近いものだった。
任務を受け、それを遂行すると、報酬が得られるのだから。
彼らに与える結晶に関しては、不足はなかった。
スポットに出かけたパーティーたちにも膨大に結晶を喰わせてはいたが、それでも、すでに結晶はあまり始めていたのだ。
集まった2000人の民衆は喜んでこの任務に励んでくれた。
なにより、スポットほど戦闘に励む必要もなく、命の危機に貧している国民を救えるのだから、危険は少ない割に、やりがいが大きいのだろう。
生まれつき戦闘職でない彼らには、うってつけの任務だったと言える。
……
この間に、スポットに出かけたパーティーが続々と城に戻ってきていた。
簡単に言えば、彼らは二周目を終え始めていたのだ。
彼らはだいたい1000前後の魔物の死体を置いてスポットに戻っていった。
というわけで、城には再び、約2万強の結晶が蓄えられていた。
「ピギー様、指令通り、200人の民衆はどこにも派遣せずに、残しておきました! 」
とムラサミが言う。
2000人の民衆のなかから、俺はさらに200人だけを、特別になんの指令も与えずに残しておいて貰ったのだ。
「ありがとう。彼らには、別の仕事をしてもらおうと思うんだ」
「どのような別の仕事を、ですか? 」
「うーん、考えはあるんだけど、……とりあえず、結晶のなかから、使えるものを探そうと思う」
「そ、そうですか……! 」
俺はシウとムラサミで手分けして、結晶の中から使えそうな“スキル獲得系”の結晶を探しだした。
見つけては端に寄せて分類し、再び結晶を鑑定しては、良いものは端に寄せていった。
エミルの実はこの間もぞくぞくと採れていたし、食料問題、魔物の異常繁殖問題に関しては解決の兆しが見え始めていたが、国として体裁を整えるためには、まだまだ問題が山積みだったのだ。
特に、次に考えられる問題は、救出された村人たちの「住まいの問題」だった。
孤立した村から救出されても、彼らには「住む場所」がないのだ。
……今のところは、城下町の空き家や、城の空いたスペースに住んで貰っているが、そうした余裕のある住居もいつまで確保出来るかわからない。
「ピギー殿、まさにこれが、お望みの結晶ではありませんか!? 」
「どれどれ? 」
シウに見せてもらうと、そこには、
《ボーナス》 建築士スキル“建築”獲得 ×6
の結晶があった。
……集まってくれた2000人の民衆のなかには“建築士”もふたりいたのだが、城の周辺に家を建てて貰うには、その数は圧倒的に足りなかったのだ。
「うん、それが欲しかったんだ! 良かった。早速、6人に喰わせて、作業に取り掛かってくれ」
「はっ! 」
シウは俺に敬礼をすると、事前に打ち合わせておいた通りに、城下町の一角に避難民用の住居の作成に取り掛かってくれた。
(良かった……)
(欲しかった結晶がちゃんと出てきてくれた……)
……
……だが、本当に俺が欲しいものは、それとは別にもうひとつあった。
ゾフさんと会話しているときに耳にした職業で、きっと、このなかにそのスキル獲得の結晶があると睨んでいたのだ。
「う~ん、なかなか見つからないな……。あるとは思うんだが……」
ムラサミと延々と作業をしていると、
「ピギー様、これではないでしょうか!? 」
と、ムラサミがついにその結晶を見つけてくれた。
それは……、
《ボーナス》 運び士スキル“運搬”獲得
「見つけた……! これだ……! 」
そう、……俺は“運び士”の結晶を探していたのだ。
ゾフさんがちらっと話していたのだが、この職業は荷物を運搬するのに特化したものらしいのだ。
この結晶に関しては、あとで色々と検証してわかったことだが、「運搬」に関して特殊な恩恵が得られる。
この職業のスキルを持っている人物は、まず、
・荷物の劣化が抑えられる。
・荷馬車を引く速度にボーナスが加わる(速くなる)。
・荷物積載量が増加する。
・移動の疲れが非常に軽減される。
つまり、荷物を運ぶのがものすごく楽になるのだ。
「ピギー様、こっちにも見つかりましたぞ! 」
……一度見つかると、今度は続々と見つかり始め、この結晶がなんと20個も見つかった。
「この結晶を使って、なにをしようと言うので……? 」
とムラサミが尋ねてくる。
「うん、簡単に言うと、“補給部隊”を作りたいんだ」
「補給部隊。なるほど……! 」
「そう。運び士のスキルを持っているひとを中心に、警護の兵士を数名付けて、スポットにいる兵士との間を往復してもらおうと思うんだ」
「なるほど……! 彼らに、ポーションを届けようと言うのですね!? 」
「それだけじゃない。彼らには、スポットで討伐した魔物の死体を回収してもらおうと思うんだ。これまではその度にパーティーに城を往復させていたけど、それだと、かなりの時間のロスだからね」
「そうか……! スポットに出かけた兵士たちは、現地に居続けられる、というわけですな……! 」
「その通り。さすがムラサミ、飲み込みが早くて助かるよ」
「はっ! ありがたきお言葉! 」
ムラサミは慇懃に頭を下げていた。
「ちょ、そんなに、かしこまらないでよ……! 」
この辺りのムラサミの忠実さは、未だに慣れない……。
……だが、このことには、もうひとつ、クリアしなければならない難題があった。
そう、この国には根本的に「装備品」が足りないのだ。
スポットに出かけたパーティーたちは、魔物の死体を届けに城に戻ってくるという目的もあるが、もうひとつの帰還の理由は、彼らの装備品が劣化するためだった。
俺に修理して貰わないと、武器や防具がすぐに役に立たなくなってしまうのだ。
「出来れば、一人二組ずつ装備を持っていれば、わざわざ城に戻ってこずに済むんだけど……」
修理した装備を補給部隊に届けさせ、劣化したものを回収して来て貰う。
それを俺が修理し、修理したものを補給部隊が再びスポットに届けに行く。
これが上手く成立すれば、兵士たちはスポットから戻ってこずに済むのだ。
……だが、そのためには、兵士ひとりが二組の装備品を所有していることが条件だった。
「うーん、どうしても、根本的に、装備品が足りないな……」
「今のところは、ポーションを届けるだけの補給部隊で良いのではないでしょうか……? 」
と、ムラサミも多少残念そうに、そう言っていた。
……
しかし、その晩のことだった。
「ピギー様、夜分遅くに、失礼いたします! 」
と、ムラサミが俺の部屋のドアをノックした。
「どうした、ムラサミ? 」
「はっ! 何者かが、ピギー様に会いたいと、城に来ております! 」
「へ? どんなひと? 」
「どんなひとというより、かなりの数の団体であります! 」
「え、誰だろう……」
全然思い当たるフシがなく、部屋を出ていくと、
「ピギー様、見たところ、彼らは人間ではありません」
とムラサミが言った。
「人間じゃない? エルフってこと? 」
「……いえ、エルフでもありません! 」
「??? なにそれ、誰だ?? 」
ますます意味がわからず、城の表に出ると、
「ピギー、久しぶりだな! 」
と、暗闇のなかで、ひとりの男がそう声をあげた。
「あ、あれ、ズキさん、それと、ミズリさん……! 」
そこには、ドワーフとの混血である、ズキさんとミズリさんが立っていたのだ。
「な、なにしに、こんなところへ……?? 」
そう尋ねると、
ミズリさんが後ろを指差して言った。
「里から、俺の知り合いのドワーフの鍛冶屋たちを連れてきた。……ピギー、困っているんだろう? あのときの恩を返しに来たよ」
見ると、彼らふたりの後ろに、約20人ほどのドワーフが並んで立っていたのだ。
「こいつがピギーか? がはは! 強そうには見えねぇが! 」
と、ドワ―フのひとりが快活そうにそう笑った。
「……だけど、ズキとミズリが世話になったとあっちゃあ、手伝わずにはいられねぇ。おい、ピギーとかいう小僧、装備が足りねぇんだろう? あとは俺たちに任せな! 」
あとで分かったことだが、俺がフリューゲルさんやゾフさんに話していたことを、彼らがこのふたりに伝えて、こうして気を利かして動いてくれていたのだ。
まったく、……本当に優しいひとたちだった。
「あ、ありがとうございます……! 」
「ズキさん、ミズリさん……」
感動してそう呟くと、
「ピギー、彼らは里でも有数の腕利きだ。……装備品の制作に関しては、俺たちに任せろ」
と、頼もしく、ズキさんが親指を立てて言った。
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