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 民衆から募集した兵士は、とりあえず280人ほどが集まった。

 十分な数とは言えないが、最初としてはこんなものだろう。

 彼らを活用して、国としての信用が快復すれば、もっと志願してくれる民衆も増えるかもしれない。


 「とにかく、彼らに結晶を喰わせよう」

 俺はシウとムラサミに手配して、単なる一般職に過ぎない彼らを、戦闘員に育てさせた。

 具体的には、



 《ボーナス》 攻撃力アップ

 《ボーナス》 防御力アップ

 《ボーナス》 スタミナアップ

 《ボーナス》 敏捷性アップ

 《ボーナス》 装備重量上昇

 《ボーナス》 敏捷性アップ

 


 この辺りの基礎ステータス上昇系の結晶を喰わせた。


 それだけでも、戦闘職に匹敵するほどの戦力にはなるが、それに合わせて俺の生成したポーションをできるだけ大量に持たせた。

 前回ゾフさんが来てくれたときに、膨大な、ポーション用の容器を置いていってくれたのだ。


 問題は、彼らの装備品だった。

 ただでさえ装備品が不足しているなかで、彼らの武器や防具を用意するのは、かなり大変だった。

 たまたま、城の奥に古い装備品が眠っていて、今回は、それを修理することで間に合った。

 

 「やっぱり、いろいろとまだ問題はあるな……」

 孤立しているという村に向けて出発した280人の兵士を眺めながら、そう呟く。

 「特に、装備品の不足は著しいですね……! 」

 と隣りにいるムラサミも呟く。

 

 即席の兵士となった民衆たちはかなり戸惑っていたが、緊張しながらも城の外に出て行った。

 

 (まあ、あれだけの数がいれば、戦闘経験がなくても、なんとかなるだろう……)




 ……


 

 ところが、思わぬ誤算が起こった。

 なんと、出て行った兵士たちが、翌日には戻ってきたのだ。


 「あ、あれ、なにか、上手く行かなかったのかな……」

 「いや、違うみたいですぞ」

 とムラサミが戻ってきた兵士たちの後ろを指差す。

 「ふむ、どうやら、もう救出して来たようですな……! 」 

 「え、こんなに早く……?? 」


 城のなかに迎え入れると、確かに兵士たちは村人を救出し終わっていた。

 「ず、ずいぶん早かったね」

 とびっくりして言うと、

 「いえ、私たちのほうこそ、びっくりしてしまいました……! 」

 と兵士のひとりが呆れて言った。



 「魔物との戦闘とは、こんなにも楽なのですか……!?? 」



 兵士のひとりが、恐る恐るそう言った。


 なるほど。

 確かに驚いても不思議はないかもしれない。

 彼らは、昨日までは非戦闘員だったのだ。

 そして、非戦闘員は絶対に戦闘職に成れないという常識のなかに生きてきた。

 それが、昨日突然結晶を喰わされ、翌日には簡単に魔物の討伐に成功していたのだ。

 驚くのは無理もなかった。


 「……改めて言いますが、結晶の力とは、奇跡そのものですな……! 」

 とシウが零す。

 「ええ、まったく! 非戦闘職の民衆が、翌日には優秀な兵士となっている。こんなこと、奇跡としか言いようがない……! 」

 とムラサミも同意する。

 

 この意見に同じ気持ちを持っているのか、昨日まで民衆に過ぎなかった兵士たちは、自分の手を見つめて、呆然としていた。

 まるで、自分たちが夢のなかにいる、と感じているかのように。



 「ねえ、君たち」

 と俺は彼らに言った。

 「驚いているみたいだけど、これは現実に起こったことだよ。君たちが自分の手で魔物を討伐し、村人たちを救ったんだ」

 兵士たちが、一斉に俺を見つめる。

 「だから、胸を張って欲しい。これは夢ではないし、幻でもない。……君たちが自分の手で成し遂げた、本当に起こったことなんだ」


 ……すると、徐々に彼らが顔を上げ始めた。

 そして、辺りにいた仲間と顔を見合わすと、突然、大声をあげた。

 ついには、

「やった、本当に、俺たちが自分の手で、やったんだ……! 」

「やった、俺、やったぞ……! 」

「うおおお! すげえ、本当に、魔物と戦えた! 倒せた……! 」

と、剣や槍を高く掲げ、仲間たちと抱き合い、次々と叫び始めた。

 

 ……多分、俺に言われるまで、自分たちのしたことに現実味が持てなかったのだ。


 

 「城のなかでこんなに騒ぐなど、本当はあってはならないことですが……! 」

 とシウが零す。

 「今日くらいは良いでしょう。それに、彼らの気持ちも良く分かる。ピギー様が来てから、まるで夢を見ているみたいだ。私自身、今ここで起こっていることが現実だと、時々信じられないくらいだ……! 」

 と、いかにも嬉しそうに、ムラサミが呟く。


 

 嬉しい誤算はそのあとも続いた。

 280人の新たな兵士たちが、自分たちが救った村人を招いて、真夜中にパーティーを開いたのだ。

 ……兵士を統率する立場としては、多少は咎めなくてはならない行為なのかもしれないが。



 「……ですが、こんなに幸せそうな民衆を見るのは、本当に数年ぶりのことです! 」

 とムラサミが呟く。

 俺とシウとムラサミは、城下町の大広場で聞こえる騒ぎを見に、深夜に城を出てきていたのだ。

 「まったくです。……兵士としての心構えが出来ているとは言い難い行いですが、まったく咎める気にはならんな……! 」

 と、シウも感慨深そうに頷く。


 近くまで行って、俺は喜んで酒坏を交わす民衆たちを眺めた。

 ……確かに、こんなに嬉しそうに騒いでいるこの国の民を見るのは、この国に来て始めてのことだった。

 この国は貧困に喘ぎ、魔物が大量繁殖し、今にも滅びかかっていたのだ。

 だから、国のムードはずっと最悪に憂鬱だった。


 (……)


 「……シウさん、ムラサミ。これで、ありったけの酒を買ってきてよ」

 そう言うと、俺は大量の金貨をムラサミに預けた。

 「今日は無礼講だ。シウさんとムラサミも、混ざってきて欲しい。……彼らと一緒に喜びを味わって欲しいんだ」

 「ピギー殿……!? 」

 「良いのですか……? 」

 「うん、良いよ。……俺はこういう集まりは苦手だから、先に城に戻って、もう少し作業を続けるよ」

 

 すると、ふたりが顔を見合わせた。

 そして、

 

 「今日は、無礼講と言いましたな? 」

 とシウ。

 「ええ、確かにピギー様はそう言いました」とムラサミ。


 「であれば、こういう行為も許されるということでありますな? 」


 そう言うと、シウが突然、俺を羽交い締めにして、こう言った。

 

 「なにを言っておられるのだ、ピギー殿! 主役が参加しないでどうする! さあ、ムラサミ殿、貴殿も協力せい! 」

 「ピギー様、先に城に戻るなど、許されることではございませんぞ! さあ、シウ殿、このまま担いで、彼らのもとに運ぼうではないか! 」

 「ちょ、ちょっと待ってよ、ふたりとも! 」

 

 そして、ふたりは俺を民衆のもとに連れて行くと、

 

 「みんな、飲んでいるか! ここに大量の金貨がある! さあ、酒を買ってこい! 宴を続けよう! ここにいる方が代金を支払ってくれたぞ! 」と叫んだ。



 ……すると、兵士のひとりが、

 「ピギー様だ……! 」

 と叫んだ。

 その叫びは、次々と繋がった。

 「ピギー様、……本当にピギー様だ……! 」

 どうやら彼らは、自分たちを兵士にしてくれた俺に、心底感謝してくれていたようなのだ。


 「ピギー殿、どうやら、今晩は逃げられないようですぞ……! 」

 シウが俺にそう耳打ちすると、酔っ払った民衆たちが俺たちに覆いかぶさってきた。

 「ありがとうございます! 俺、本当に、本当に兵士になれるなんて……! 」

 「俺も、魔物を本当に倒せるなんて、思わなかった……! 」

 次々とそんなことを叫ばれながら、俺たちはもみくちゃにされた。

 最後には、一緒になって肩を抱き合いながら、俺たちは朝まで酒を交わしたのだった。



 ……


 ……思わぬ誤算が起こったのは、そのあとのことだった。

この晩の宴のおかげで、民衆の間で、ある決定的な噂が広まったのだ。

 「国は本当に立て直ってきている」 

 「非戦闘職が、兵士になれるのは本当だった」

 「ピギーという方についていけば、誰でも魔物と戦えるようになる」


 こんな噂が次々と広まったのだ。

 そして、救われた村人たちが、その噂にこんな尾ひれをつけた。


 「ピギーという方は、私たちの住むような辺境の村人も見捨てなかった」


 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 と。


 

 ……たった一晩のパーティーによって、国周辺の民衆の政府に対する感情はがらりと変わったのだ。


 

 そして、その二日後の朝のことだった。

 城の前に集まった群衆の騒ぎ声で、俺たちは目を覚ました。


 「なんだ、なにがあった……?? 」

 同じように起きてきたムラサミにそう聞くと、

 「はっ、ただいま、兵に確認を取らせています……! 」


 そして、城の入り口に近づいてわかったのは、彼らは新たに兵に志願しに集まった民衆だったのだ。

 そして彼らは口々に、

 「なにか俺に手伝えることはないか! 」

 と叫んでいたのだ。

 その数はなんと、優に2000人を越えていた。


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