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収穫

農地に出かけた俺は、早速ムラサミとシウに結晶を分配する。

 

 「これを喰うのですね」とムラサミ。

 「そう。そうすれば、シウとムラサミも“プラント”スキルが使えるようになる」

 俺は彼らに、以前手に入れた“プラント士スキルプラント獲得”の結晶を持たせていたのだ。


 「うーむ、結晶は、やはり美味いですね! 」

 「若干酔うのも良いですな! 」

 とふたりは美味そうに喰っていた。


 そして、早速ふたりに“プラント”スキルを実行してもらうと、


 「おおっ! 本当に土が耕せた……! 」 

 とムラサミが驚嘆している。

 「こっちも出来ましたぞ! 」

 と少し離れたところでシウも声をあげた。


 こうして俺たちは三人で手分けして、ひたすらまた土を耕し、苗を植え始めた。

 特に俺に関しては“プラントと使用時に苗及び種不要化”の結晶を喰っていたから、もはや苗すら必要としなかった。

 当然、二人よりも効果範囲も広いから、圧倒的な速さで耕していく。

 ふたりが野球場ほどの広さを耕す間に、俺の方ではその6倍は耕し、苗を植え終わっていたのだ。


 「ピギー殿、始めにピギー殿が植えた苗が早くも成長しているようですぞ! 」

 シウにそう言われて見に行くと、エミルの苗はかなり成長していた。

 すでに俺の背丈を超えるほどの高さになっている。

 

 「もしかしたら、エミルの苗って成長が早いの? 」

 「早い方の植物ではあります。栄養も多いし、食材としても万能ではあります。……ですが、この成長速度は少し異常ですね」とムラサミ。

 「ここまで育つと、もうすぐ実が採れますぞ! 」

 とシウがエミルの葉に触りながら言う。

 

 (確かにかなり早いな……)

 

 (成長速度促進系の結晶を喰ったからだと思うが……)


 (やはり専用職のスキルを使うと、なんでもかなり便利になる……)


 俺は広々とした土地を眺めた。


 (それでも、まだまだ土地は広い……。人手は三人に増えたが、それでも十分な人手とは言えない……)


 

 ……


 

 この頃、スポットに殲滅に出かけていた23組のパーティーが次々と城に戻ってきた。

 彼らは共通して、大体1000匹前後の魔物の死体を積んで戻ってくる。

 どうやら、装備品が劣化するのがちょうどそのタイミングらしい。

 みんな、装備品を修理してもらいに城に戻ってくるのだ。


 というわけで約2万強の結晶が集まっていた。


 当然、そのなかにはプラント系の結晶もかなり混ざっている。


 まずは、一番欲しかったこの結晶。



《ボーナス》 プラント士スキル“プラント”獲得 ×20



 これが一気に20個集まった。

 その結晶を俺はムラサミが所有する騎士団20人に分配。

 そのことによってシウとムラサミを含めた22人に常に農地を耕してもらえるようになった。


 さらに、

 


 《ボーナス》 “プラント”範囲拡張(大) ×60

 《ボーナス》 “プラント”範囲拡張(中) ×220

 《ボーナス》 “プラント”範囲拡張(小) ×420

 《ボーナス》 “プラント”使用時作物に成長速度促進を付与(大) ×80

 《ボーナス》 “プラント”使用時作物に成長速度促進を付与(中) ×140

 《ボーナス》 “プラント”使用時作物に成長速度促進を付与(小) ×540


 

 と、プラントの範囲拡張や成長速度促進系のものもかなり手に入った。

 今度は、これらの結晶をすべて自分では喰わず、“プラント”スキルを持っている兵士たちにも分け与えた。

 そのことによって城周辺の農地化はさらに効率化。22人のプラント士は次々と周囲一帯を農地化していった。


 「み、みるみるうちに農地化されていきますね……! 」

 作業をする兵士を眺めながらムラサミが言う。

 もはや、俺たちが一週間掛けて作業していた広さを、たった半日で上回るほどに農地化は効率化されていたのだ。

 途中で危惧していた種の不足も、最初に俺が植えた苗たちが種を落とし始めたことによって問題は解消された。

 植えた苗から種が落ちる。その種をさらに植えていく。

 これがルーティン化し、いよいよ順調に作物は育ち始めていたのだ。


 そして、始めに苗を植えて三週間後……、


 「ピギ―殿、ついに作物が採れましたぞ! 」

 

 と、最初のエミルの実が採れ始めたのだ。


 「ついにですか! 」

 俺はベッドから飛び起きて、シウたちを連れて初めに耕した辺りに向かった。


 そこにはすでに兵士たちが集まり、白菜に似たエミルの実をもぎ取っているところだった。


 「これが、エミルの実か……! 」

 「これほど荒れていた荒野に実が成るなんて、感慨深いですな……! 」

 と、若干涙ぐみながらシウが言う。

 「そうですね……。さすがに、嬉しいな……! 」

 と、俺も込み上げてくるものがあって、つい泣きそうになる。


 「ピギー殿、どうぞ、最初の一個をぜひ食べてみて下さい。エミルの実は栄養満点、味も美味とあって古来からエディーガーデンの特産物として名高い一品であります」

 「そ、そう? じゃあお言葉に甘えて……」

 俺はエミルの実を一口頬張った。


 「う、美味い……! 」

 「そうでありましょう! 」とシウが誇らしげに胸を張る。

 「お世辞じゃなく、本当に美味いよこれ! 」 

 

 それは味のマイルドなマンゴーに似ていた。

 エディーガーデンの国ではこれを煮込み料理や肉と合わせて調理し、独特に甘みのある料理に仕上げるのが一般的なのだという。


 「美味いけど、それとは別に、……なにか、身体に効果があるような……? 」 

 と俺は呟く。

 なんとなくエンチャントを掛けられているような効能を感じたのだ。

 

 「さすがピギー殿ですな」

 シウが言う。

 「どういうこと? 」

 「……エミルの実には毒とマヒに対する一時的な耐性をもたらす効能があるのです」

 「そういうことか……! 」


 と、このとき、俺はあることを思い出していた。

 スポットから戻ってきたパーティーのなかに、かなり討伐に苦労している地区があったのだ。

 それは、南にある深い沼地のスポットだった。

 そこでは魔物たちが毒とマヒ系の技や魔術を多用するらしく、攻略にかなり苦労している、というのだ。


 「こ、これだ……! 」

 と思わず呟く。

 「ど、どうされたのですか、ピギー様!? 」

 とムラサミがびっくりして言う。

 

 「南に向かったパーティーたちにこれを大量に届けよう。……そうすれば、彼らの討伐もかなり楽になるはずだ……! 」

 

 「な、なるほど……! 毒とマヒの耐性を彼らに付けさせる、ということですな……!? 」

 「早速、この大量のエミルの実を収穫するとしましょう……! 」

 シウがそう言って辺りを見渡す。

 

 俺たちが最初に植えた苗たちは、この辺り一帯にたくさんの実を付けていたのだ。


 「さあ、みんな、手伝ってくれ! エミルの実を収穫するぞ! 」


 ムラサミの叫んだその声が、もはや荒れ地とは言えない城周辺の緑のなかで、高く木霊した。


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