カンスト
結論から言うと、俺たちはその森のなかに一週間籠もることになる。
討伐した敵の数は実に1万3000匹を越えていた。
その間に、いろんなことが進展していった。
それについて、順を追って話していこう。
まず、ムラサミとの仲がかなり改善された。
……というか、詳しく事情を聞くと、ムラサミはそもそももっと早く魔物の討伐に出たかったのだという。
だが、カラミの直属の騎士団ということもあって、自由な行動が制限されていた。
「カラミ様は魔物の討伐に騎士団を派遣することに躊躇しておられました。城が手薄になることを恐れていたのでしょう。しかし、これだけの魔物が繁殖してしまえば、そんなことを言っている場合ではない……。あの御方は、それがわからなかったのでしょう」
とムラサミは悔しそうに言った。
「なるほど、それで謎が解けた……」
とシウが言った。
なんでも、ムラサミ騎士団と言えば、この国の優秀な騎士団の象徴だったのだという。
それが、これだけの国の窮地に、なぜか城に立てこもっている。
シウからすれば奇妙なことだったが、その背景には、カラミの指示があったのだ。
「すまない。私たちがあの御方の命令を無視して、もっと早く魔物の討伐に出ていれば……」
とムラサミは誠実に頭を下げていた。
それで誤解が解けたのか、シウとムラサミは親しそうに話し合っていた。
次に、ムラサミ騎士団の装備すべてに修理を当ててあげた。
彼らの装備は見るからに劣化していて、敵と戦えるような状態ではなかったのだ。
「す、すごい、新品に戻るのか……」
ムラサミはそう言って驚いていた。
だが、問題はこれと似た苦境を国の全兵隊が味わっている、ということだった。
エディーガーデンの国は今まさに破綻し掛かっており、新しく武器を買う資金もなければ、それを製造する鍛冶屋たちも機能していない。
魔物を討伐に出たくても、兵隊たちの装備はすべてがらくたのように衰えていたのだ。
「それじゃあ、彼らの装備は僕がすべて直しますよ」
そう言うと、どよめきが上がった。
「僕が直せば新品に戻るので。そうすれば、また戦いに出られる」
「……すごいぞ」
と、ムラサミが漏らす。
「……正直、この国はもうおしまいだと思っていた。だが、マトイ様、ピギー様が戻ってきてから、希望が見えてきた……」
いつの間にか、ムラサミにはピギー様呼ばわりされている。
「……巻き返せるでしょ」
とマトイが言った。
「私とピギーに、全部任せて」
……
「ところで、国には今、どのくらい兵隊がいるんですか? 」
と、この質問をしたときが、森に潜伏して一週間が経ったときのことだった。
すでに1万3000を超える魔物を討伐し終えている。
倒した魔物の素材、結晶は、すべてアオに回収してもらって、青蛇の群れを駆使して森の入り口の荷馬車に積み入れ、定期的に城に運んでもらっていた。
「装備が使い物にならない兵隊も入れれば、大体2500人ぐらいはいます」
とムラサミが答える。
「2500人か……。彼らも強化すれば、もっと効率が良くなりそうだな……」
と俺は呟く。
「彼らを、強化、ですか……? 」
とムラサミが意味がわからない、というように俺を見ていた。
……というわけで、このタイミングで俺は結晶のことをムラサミたちに打ち明けた。
1万以上もの結晶がすでに手に入っているのだ。
この膨大な結晶を兵隊に分け与えて強化すれば、恐らくはあっという間にAクラスの冒険者たちが続々と出てくる。
さすがに意味がわからないのか、
「ちょっと、わかりません……。話についていけません……」
とムラサミは困惑していた。
仕方のないことだろう。装備を完璧に修繕出来るだけでも異常なのに、結晶などと言われてもついて来られるはずがない。
というわけで、そこからは実際に彼らに結晶を喰ってもらいながらさらに討伐を続けた。
初めて彼らが結晶を喰ったときの反応がこう。
「う、美味い……ッ、なんだこれ……!?? 」
「身体が軽い……! 素早さが上がってる……!? 」
「初期ステータスが上がることなんてあるのか……?? 」
「待ってくれ、俺、フレアが使えるようになってる……」
などなど。
この体験があってから初めて俺の言うことがわかったのか、
「確かにこれなら、城の兵たちも魔物を討伐に出られる……! 」
とムラサミがハッとしていた。
そして、その目に希望の光が宿るのが分かった。
「いける……。この国を、立て直せる……」
と、ムラサミは興奮した顔でひとり呟いていた。
……
さて、このときに手に入れた結晶の効果は、以下の通り。
《ボーナス》 敏捷性アップ(中) ×600
《ボーナス》 敏捷性アップ(小) ×1200
《ボーナス》 魔術量増加(中) ×540
《ボーナス》 魔術量増加(小) ×720
《ボーナス》 毒耐性(中) ×98
《ボーナス》 毒耐性(小) ×76
《ボーナス》 調理師スキル上昇(中) ×65
《ボーナス》 装備重量増大(小) ×178
《ボーナス》 プラント士スキル上昇(中) ×134
《ボーナス》 スタミナアップ(中)×130
《ボーナス》 スタミナアップ(小)×230
《ボーナス》 ポーション効果上昇(中) ×123
《ボーナス》 ポーション効果上昇(小) × 223
《ボーナス》 攻撃力増加(中) ×135
《ボーナス》 攻撃力増加(小) ×245
《ボーナス》 防御力増加(中) ×145
《ボーナス》 雷属性耐性(中) ×156
《ボーナス》 火属性耐性(中) ×178
《ボーナス》 水属性耐性(小) ×156
《ボーナス》 風属性耐性(中) ×198
《ボーナス》 土属性耐性(中) ×156
それから、それとは別に、やや以前とは種類の違うものも出てきた。
魔術使用時の魔術が減少したり、物理耐性がアップするのはありがたかった。
《ボーナス》 物理耐性アップ(中) ×234
《ボーナス》 物理耐性アップ(小) ×256
《ボーナス》 魔術使用時魔術量減少(中) ×560
《ボーナス》 魔術使用時魔術量減少(小) ×670
《ボーナス》 酸耐性(中) ×321
《ボーナス》 塩耐性(小) ×234
それから、ポーション関係のもの妙に出てきた。
それも、ポーションを生成するときに、別の効果も付与してくれる、という種類の結晶が多かった。
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに魔術量快復を付与(大) ×89
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに魔術量快復を付与(中) ×178
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに魔術量快復を付与(小) ×278
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに継続快復効果付与(大) ×56
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに継続快復効果付与(中) ×145
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに継続快復効果付与(小) ×234
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションにスタミナ自動回復効果付与(大)×99
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションにスタミナ自動回復効果付与(中)×145
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションにスタミナ自動回復効果付与(小) ×245
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに保護魔術“障壁”効果付与(大) ×87
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに保護魔術“障壁”効果付与(中) ×123
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに保護魔術“障壁”効果付与(小) ×345
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに一時攻撃力増加効果付与(大) ×101
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに一時攻撃力増加効果付与(中) ×126
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに一時攻撃力増加効果付与(小) ×345
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに一時敏捷性上昇効果付与(大) ×79
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに一時敏捷性上昇効果付与(中) ×134
《ボーナス》 ポーション作成時ポーションに一時敏捷性上昇効果付与(小) ×341
ポーション関係に関しては、ポーションを作れるスキルを持っているのが俺だけだったから、すべて俺が喰うことにした。
これらの効果をまとめると、要するに、俺が作ったポーションを飲めば、体力快復だけでなく、魔術量が快復し、継続的に体力が快復し、スタミナが自動で快復し、保護魔術によって防御力が上昇し、一時的に攻撃力が増加し、一時的に敏捷性が上がることになる。
「そ、それはもう、ポ、ポーションなのですか……???? 」
と俺の説明を受けたムラサミが困惑を隠さずに言った。
「さ、さあ……」
と俺も若干困惑気味に答えた。
(確かにこれ、もはや究極の回復薬なような……)
(ゲームで言うと、最終エリアでようやく一個二個持てる程度の、そういう超希少な薬のような……)
……
さらに、そのあとでこんな結晶まで出てきた。
《ボーナス》 ポーション生成数増加(大) ×87
《ボーナス》 ポーション生成数増加(中) ×123
《ボーナス》 ポーション生成数増加(小) ×341
要するに、ポーションをひとつずつではなく、複数いっぺんに生成出来るようになるのだろうが、この結晶もかなりの数が出てきた。
……これに関してはあとで試したことだが、俺はポーションを入れる器さえあれば、いっぺんに700程度のポーションなら作れるようになった。
……まあ、これに関しては、詳しい話はあとで。
新しく出たものや、効果の大きいものは別にして、なるべくムラサミたちにも結晶を喰わせ続けながら森の探索を続けた。
それでも喰いきれないもの、あまり効果のないものは、アオの力で次々と城に運んでいく。
ムラサミたちはもともと結晶の酔いに強い体質だったのか、さして酔うこともなく、ぐんぐん強くなっていた。
恐らく、森の入口で出会った頃とは比べ物にならないほどに……。
……
さて、前述した結晶とは別に、俺はAランクのものや希少なものを分類して、それを自分用に喰い歩いていた。
それが以下。
《ボーナス》 攻撃力増加(大) ×89
《ボーナス》 防御力増加(大) ×86
《ボーナス》 雷属性耐性(大) ×67
《ボーナス》 火属性耐性(大) ×65
《ボーナス》 水属性耐性(大) ×161
《ボーナス》 風属性耐性(大) ×294
《ボーナス》 土属性耐性(大) ×142
《ボーナス》 毒耐性(大) ×123
《ボーナス》 毒耐性(大) ×144
《ボーナス》 プラント士スキル上昇(大) ×143
《ボーナス》 調理師スキル上昇(大) ×145
《ボーナス》 固有職スキル上昇(大) ×156
これらに関して言うと、基礎的な攻撃力や防御力が上昇したのも大きいが、まずは毒耐性とマヒ耐性がカンストした。
……これもあとで試したことだが、俺にはマヒ系の攻撃、毒系の攻撃は一切効かなくなった。
それから、プラント士のスキルが大幅に上昇。調理師スキルもかなり上がった。
固有職スキル上昇の結晶もかなり出たから、「修理」に関しても新しい力が期待できるかもしれない。
だが、一番上ったのはこのステータスだった。
《ボーナス》 敏捷性上昇(大)×1256
……もはや喰えるようなレベルの量ではなかったから、俺は器のなかで砕いてジュース状にして流し込んだ。
その結果、とんでもないことが起こった。
なんと、俺は敏捷性のステータスがカンストを迎えたのだ。
つまり行動する際の“速度”が、マックスになったのだ。
それは、もはや今まで見ていたものとは別次元の世界だった。
現在のステータス
愛称:奇跡のピギー
ギルドランク:A
種族:人間
専属契約:ゾフ商会
同伴者:マトイ(忌み子)、アオ(青蛇の女王)
所属ギルド:ハングリー・バグ
パーティー名:【子豚】
所持金:金貨1062枚、銀貨306枚
所持品:古の戦斧、古の甲冑
所有スキル:修理士、ポーション生成、調合、魔術フレア
生体反応感知、思考共有、侵入、熱反応感知、プラント、裁縫
カンストステータス:スタミナ、皮剥速度、毒耐性、マヒ耐性、敏捷性
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