赤ん坊
ふたりで青蛇の結晶を取り出す作業をしているときのことだった。
「……あれ? 」
マトイが不思議そうに呟く。
「どうした? マトイ」
そう尋ねるとマトイは、
「……ん、……ちょっと、待って」
と呟いて地面に腰を降ろして靴を脱ぎ始めた。
靴下を脱いで生足になったマトイは、裸足になった右足を俺に見せた。
「……おかしい」
足を突き上げた変な姿勢のまま、マトイが言う。
「……なにが? 」
「……生えてる」
「……生え、てる……? 」
マトイがこくりと頷く。
「……私は幼いときに右足の小指を事故で失っている。……だけどそれが生えてる」
「生えてるって……修理で治ったってこと? 」
「……たぶん」
マトイが頷く。
「……俺の修理スキルは少し前についた傷しか治せないはずだけど……」
そう言ったときにふとある考えに思い至った。
(いや、俺はさっき固有職スキル上昇(大)の結晶を食べている……)
(もともとは出来てすぐの傷しか治せなかったが……)
(スキルが上昇して“過去についた傷”も治せるようになったのか……? )
(だとしたら、ひとの身体をこれまで以上に治せるようになるが……)
「……マトイ、その傷は大体何年前ぐらいに出来た傷なんだ? 」
「……大体、十年前」
「十年前か……」
(つまり十年以内に出来た傷であれば、俺の修理スキルで治せるようになったということか……? )
「……失くなった指が戻ってる。……嬉しい」
マトイが足の指に触れながらそう呟いた。
「……そうか。俺も嬉しいよ」
そう返すと、マトイは顔を少し傾けてにこっと微笑んだ。
(最近、マトイが笑顔を見せるのが多くなったな……)
(それだけ俺との仲も深まって来ているんだろう……)
(過去の傷も治せるようになると、もしかしたらキースさんやユリの傷も治せるかもな……)
マトイの笑みを見ながらそんなことを考えていた。
(帰ったら試してみるか……)
「じゃあ青蛇を結晶化する作業を続けようか」
そう言うと、マトイは頷いた。
……
洞窟内の青蛇をすべて結晶化するのに、かなりの時間を要した。
洞窟内にはまだ単体になった青蛇が残っていて、それを討伐するのにも時間が掛かった。
結局、洞窟内で焚き火を起こして一泊することにした。
そして、翌日も作業を続けた。
手に入った青蛇の結晶は実に1132個。肝も同じ数が手に入った。
ランクはAランクが5つ。Bが56個、Cが374個。Dが697個だった。
《ボーナス》に関して綴ると大変なことになるが、一応、以下の通り。
《ボーナス》 調理師スキル上昇(中) ×4
《ボーナス》 皮剥速度上昇(大) ×15
《ボーナス》 皮剥速度上昇(中) ×78
《ボーナス》 皮剥速度上昇(小) ×2
《ボーナス》 装備重量増大(小) ×178
《ボーナス》 敏捷性アップ(中) ×20
《ボーナス》 敏捷性アップ(小) ×24
《ボーナス》 魔術量増加(大) ×4
《ボーナス》 魔術量増加(中) ×34
《ボーナス》 魔術量増加(小) ×101
《ボーナス》 所持重量アップ ×12
《ボーナス》 毒耐性(小) ×44
《ボーナス》 マヒ耐性(大) ×2
《ボーナス》 プラント士スキル上昇(中) ×43
《ボーナス》 スタミナアップ(小)××14
《ボーナス》 スキル“ポーション生成”獲得
《ボーナス》 ポーション効果上昇(中) ×3
《ボーナス》 ポーション効果上昇(小) × 26
《ボーナス》 スタミナアップ(中)××14
《ボーナス》 スタミナアップ(小)××78
《ボーナス》 ポーション効果上昇 ×67*
《ボーナス》 攻撃力増加(大) ×2
《ボーナス》 攻撃力増加(中) ×16
《ボーナス》 攻撃力増加(小) ×84
《ボーナス》 防御力増加(中) ×45
《ボーナス》 雷属性耐性(中) ×24
《ボーナス》 火属性耐性(中) ×65
《ボーナス》 水属性耐性(小) ×16
《ボーナス》 風属性耐性(中) ×29
《ボーナス》 土属性耐性(中) ×42
(改めて……)
(ものすごい数だ……)
俺は洞窟内に山積みにした結晶を見つめて、思わず嘆息を漏らした。
「凄まじい数……だね」
隣にいたマトイもついそう声を漏らす。
「これ、かなり強くなるな……」
「……うん」
俺とマトイは顔を見合わせて、改めて自分たちが青蛇を討伐したことを噛み締めた。
「本当に俺たち、青蛇を倒したんだな」
「……うん」
「最初はハングリーウルフ一匹倒すのにも苦労していたのに……。マトイ、……俺嬉しい」
「……私も」
そう言うとマトイは座り込んでいる俺の足の間にとことことやってきて、そこに腰を降ろした。
「……マトイ? 」
と言うと、
「……一緒に鑑定しよ? 」
とマトイが俺を見上げた。
「う、うん……」
(半分抱きしめているような体勢だけど……)
(マトイは恥ずかしくないのかな……)
なんとなく自分だけが恥ずかしがっているような気がして、俺は密かに顔を赤らめていた。
(マトイの身体からも、喜びがひしひしと伝わってくる……)
(やばい……。嬉しすぎて、抱きしめそうになる……)
俺は必死に欲望を抑えながら、マトイと一緒に結晶の整理を続けた。
……
どうやら青蛇は「耐性」の結晶が多く出てくるらしく、それぞれの属性を強化する結晶がかなり出てきた。
(今後、属性の魔術を受けることも多いだろうから、属性耐性が出来るのはありがたい……)
あとは基礎ステータスアップ系が多いが、気になるのが「装備重量上昇アップ(小)」が大量に出てきたことだった。
(重量装備が出来るようになるのだろうけど……)
(なにか上手い使いみちがありそうな……)
それから、Aランクのものはすべて新しいスキルの獲得系の結晶だった。
《ボーナス》 “思考共有”獲得
《ボーナス》 侵入者スキル“侵入”獲得
《ボーナス》 “熱反応感知”獲得
《ボーナス》 裁縫士スキル“裁縫”獲得
《ボーナス》 プラント士スキル“プラント”獲得
(手に入ったスキルは思考共有、侵入、熱反応感知、裁縫、プラントか……)
(前回手に入れたものも含めると結構な数のスキルになってきたな……)
(この辺りは一度戻ってからひとつずつ検討しよう……)
(それと……、これもふたつ見つかったな……)
そこには《ボーナス》呪い耐性(中)の結晶が二つ並んでいた。
(これでマトイの呪いもまた少し緩和される……)
マトイも思うところがあるのか、呪い耐性(中)の結晶をなにも言わずに見つめていた。
……
洞窟内の青蛇をすべて駆除し終え、それらすべての青蛇も結晶化し終えたとき、俺とマトイは洞窟の奥であるものを見つけた。
「……なんだろう、あれ」
マトイが最奥の窪みを指差す。
「……赤ん坊……? 」
近づいて覗き込むと、そこには全身の皮膚が真っ青な赤ん坊が寝そべっていたのだ。
(しかも……)
(生まれたてみたいな赤ん坊だな……)
(見た目からして女の子っぽいが……)
(こんなダンジョンの奥になぜ赤ん坊が……?? )
「いったい……なんだこれ? 」
そう言ってマトイとふたりで顔を合わした。
現在のステータス
愛称:皮剥のピギー
種族:人間
同伴者:マトイ(忌み子)
所属ギルド:ハングリー・バグ
パーティー名:【子豚】
所持金:金貨42枚、銀貨46枚
所持品:クレイモア、ブロードソード、バタフライナイフ
ラージクラブ
爛れ馬の結晶×15 尻尾×15 胃袋×15 肝×15
不気味花の結晶、花びら×45 雄しべ×45 雌しべ×8
腐り木の結晶×15
青蛇の結晶×1255 肝×1255
所有スキル:修理士、ポーション生成、調合、魔術フレア
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